【2024年9月版】Azure Stack HCI ネットワーク構成パターンを確認する【Part 2】
この記事の内容
- Azure Stack HCI のデプロイ手順はバージョン(22H2 / 23H2)によって大きく異なり、混在は禁物です
- デプロイ方法は Azure Portal と ARM テンプレートの2種類があります
- Azure Stack HCI ではストレージに Storage Spaces Direct(S2D)を採用しており、SAN スイッチが不要です
- ネットワークトポロジはノード数とストレージ用スイッチの有無によって複数のパターンがあります
- 4台以上のノードでクラスターを構成する場合、ネットワークスイッチなし構成はサポートされていません
バージョンに注意:22H2 と 23H2 は別物
Azure Stack HCI のドキュメントを参照する際、まず気をつけなければならないのがバージョンの違いです。Microsoft Learn の記事には古いバージョン(22H2 / 21H2)向けの手順が掲載されているものもあり、記事の冒頭に「この記事で説明するデプロイ手順は古いバージョンの Azure Stack HCI に適用されます」という警告が表示されることがあります。
最新バージョンである 23H2 では手順が全く異なります。また、バージョン 22H2 と 23H2 の手順を混在させることはサポートされていないため、必ず対象バージョンを確認してから作業を進めてください。
なお、かつては 22H2 から 23H2 へのアップグレードがサポートされていない時期が続いていましたが、現在はアップグレード手段が提供されています。日本語版ドキュメントの更新が英語版より遅れる場合があるため、最新情報を確認したい場合は英語版のドキュメントも参照することをおすすめします。URLの .jp を .us に変更することで英語版を確認できます。
デプロイ方法の選択
Azure Stack HCI 23H2 のデプロイには、次の2つの方法があります。
- Azure Portal からデプロイする:GUI で操作できるため、初めての方にはこちらが取り組みやすいです
- Azure Resource Manager テンプレートからデプロイする:自動化や繰り返しのデプロイに向いています
今回の記事では、Azure Portal を使ったデプロイ手順を前提に解説していきます。
デプロイの大まかな流れは以下のとおりです。
- 検証済みネットワークトポロジを選択する
- 要件・前提条件を確認する
- Active Directory を準備する
- ISO ファイルをダウンロードして OS をインストールする
- 必要に応じてプロキシを構成する(オプション)
- Azure 登録スクリプトをインストールする
- デプロイに必要なアクセス許可を割り当てる
- Azure Portal(または ARM テンプレート)からデプロイする
Storage Spaces Direct(S2D)とは
Azure Stack HCI がなぜ SAN スイッチを必要としないのかを理解するために、Storage Spaces Direct(S2D)について説明します。
従来のクラスター構成では、複数のサーバーが共通のストレージにアクセスするために SAN(Storage Area Network)スイッチを介した共有ストレージが使われていました。イメージとしては以下のようになります。
この構成では、どちらのサーバーからも共有ストレージ上の VHDX ファイルにアクセスできるため、VM のフェールオーバーが実現できます。しかし SAN スイッチは高価であり、構成も複雑になりがちです。
S2D はこの問題をソフトウェアで解決します。各サーバーが持つローカルディスクを束ねて、論理的に1つの巨大な共有ディスクとして扱えるようにする技術です。
これにより、SAN スイッチなしでクラスターを構成でき、VM のフェールオーバーも実現できます。Azure Stack HCI ではこの S2D をベースにストレージを構成しており、1台から最大16台のノードで1クラスターを構成できます。
ネットワークトポロジのパターン
Azure Stack HCI のネットワーク構成では、主に「ストレージ専用のネットワークを独立させるかどうか」が重要な選択ポイントになります。
パターン1:コンバージドネットワーク(ストレージスイッチなし・全混在)
クライアント通信とストレージ通信を同一のスイッチで行う構成です。
最もシンプルで安価に構成できますが、ストレージ通信と外部通信が混在するため、ネットワーク負荷が高くなりやすいです。
パターン2:ストレージ専用スイッチあり
外部通信用スイッチとは別に、ストレージ専用のスイッチを設ける構成です。
ストレージ通信と外部通信が完全に分離されるため、パフォーマンスと低遅延を確保しやすい構成です。ただし、スイッチが増える分コストや複雑さも増します。
パターン3:スイッチレス(クロスオーバー直結)
ストレージ専用スイッチの代わりに、サーバー同士を直接クロスケーブルで接続する構成です。
スイッチのコストを抑えつつ、ストレージ通信を外部通信から分離できます。単純なスイッチなし構成と比べてパフォーマンスの確保がしやすい点がメリットです。
サポートされているトポロジの組み合わせ
ノード数とデプロイ方法によってサポートされるトポロジが異なります。
| ノード数 | ストレージスイッチなし | ストレージスイッチあり |
|---|---|---|
| 1台 | Azure Portal 対応 | ARM テンプレートのみ |
| 2台 | 対応 | 対応 |
| 3台 | 対応 | 対応 |
| 4〜16台 | 非サポート | 対応 |
重要なポイント:4台以上のノードでクラスターを構成する場合、スイッチなし構成はサポートされていません。 4台以上の構成では必ずネットワークスイッチを用意してください。
また、23H2 では「ストレージ通信と外部通信を完全に混在させる構成」は推奨されておらず、Azure Portal や ARM テンプレートからその構成でのデプロイができなくなっています。
今回の検証環境について
今回の検証は単一ノード構成で進めていきます。仮想環境上での動作確認が目的のため、RDMA 対応 NIC の追加はオプションということもあり省略します。単一ノード構成ではノード間のストレージ通信が発生しないため、RDMA NIC を用意する必要はありません。
2台以上の構成でも NIC は後から追加して対応できるよう考慮しつつ、まずはシンプルな1台構成から始めていきます。
まとめ
今回は Azure Stack HCI 23H2 のデプロイを始めるにあたって確認すべきネットワーク構成パターンを解説しました。
- バージョンの違いに注意:22H2 と 23H2 では手順が全く異なり、手順の混在は禁止されています。日本語ドキュメントの更新が遅れることがあるため、英語版も確認しましょう
- S2D(Storage Spaces Direct):ローカルディスクをソフトウェアで束ねて共有ストレージとして扱う技術で、SAN スイッチが不要になります
- ネットワークトポロジの選択肢:コンバージドネットワーク、ストレージ専用スイッチあり、スイッチレス(クロス直結)の3パターンが主な選択肢です
- 4台以上ではスイッチが必須:スイッチなし構成がサポートされるのは3台までです
次回はデプロイの前提条件の確認に進んでいきます。