【後編】Azure Migrateで仮想マシンを移行する方法 / Azure Stack HCI 22H2と23H2の違い

この記事の内容

  • Azure Migrateを使ったHyper-V環境からAzure VMへの移行手順を解説します
  • 検出・評価・移行の3フェーズに分けてステップバイステップで説明します
  • アプライアンスを使ったサーバー検出方法とプロジェクトキーの設定手順を紹介します
  • テスト移行を活用して本番移行前に動作確認する方法を解説します
  • Azure Stack HCI 22H2と23H2の違いと、現時点(2024年8月)でのAzure Migrate対応状況の注意点をまとめます

Azure Migrateとは

Azure Migrateは、オンプレミスやデータセンターにあるサーバー・データベース・Webアプリなどをクラウドへ移行するための統合ツールです。移行対象(サーバー単体・データベースのみ・Webアプリなど)を選択し、ウィザード形式で進めていくことができます。

本記事では、Hyper-Vで動作している仮想マシンをAzure VMへ移行するシナリオを取り上げます。


フェーズ1:プロジェクトの作成

Azure Migrateを開始するにはまずプロジェクトを作成します。

  1. Azureポータルで「Azure Migrate」を検索し、「サーバー、データベース、Webアプリ」を選択します
  2. Azureのリソースグループを作成し、その中にAzure Migrateプロジェクトを作成します
  3. 接続方式(パブリックエンドポイント/ExpressRoute・VPN経由のプライベートエンドポイント)を選択します

フェーズ2:検出(Discovery)

プロジェクト作成後、移行元の環境にどのようなサーバーが存在するかを把握するための検出を行います。

検出の方式

検出には大きく2つの方法があります。

  • アプライアンスを使った自動検出:ネットワークをスキャンしてサーバーを自動的に発見します
  • CSVインポート:既存のインベントリ管理表(Excelなど)をCSV形式でインポートします

アプライアンスの種類

アプライアンスを使用する場合、以下の3パターンから選択します。

環境アプライアンスの種類
VMware(vSphere)環境VMware用アプライアンス
Hyper-V環境Hyper-V用アプライアンス(VHDをダウンロード)
物理サーバー・その他ソフトウェアをインストールして使用

Hyper-V用アプライアンスのセットアップ手順

今回はHyper-V用アプライアンスを使用した手順を説明します。

  1. Azure Migrate上でプロジェクトキーを生成し、アプライアンス名を設定します
  2. VHDファイル(約12GB)をダウンロードします
  3. Hyper-Vマネージャーで「仮想マシンのインポート」を実行し、ダウンロードしたVHDをインポートします
  4. インポート時のネットワーク設定は、インターネットに出られる仮想スイッチを選択します
  5. 仮想マシンを起動すると、自動的にブラウザが立ち上がり設定画面が表示されます

アプライアンスの初期設定

ブラウザ上での設定作業は以下の順序で進みます。

  1. Azureへの接続確認(プロキシが必要な場合は設定します)
  2. 時刻同期の確認
  3. 最新アップデートの適用
  4. Azure Migrateのプロジェクトキーを入力してAzureと紐付けます
  5. デバイスコードを使ってAzureにログインします

Hyper-Vホストの登録

接続後、移行元のHyper-Vホストの認証情報を登録します。

  • Hyper-Vホストのクレデンシャル:IPアドレスとホスト名を複数登録可能です
  • Active Directoryドメインクレデンシャル:ドメイン環境であればドメイン管理者アカウントを登録します
  • Linuxサーバーのクレデンシャル:Linuxが混在する場合は別途登録します

登録後、アプライアンスがサーバーを探索します。例えば9台のサーバーを検出し、うち1台がSQLサーバー、7台がWindowsサーバー、といった形でインベントリが作成されます。


フェーズ3:依存関係の分析(Dependency Analysis)

検出が完了したら、サーバー間の通信依存関係を可視化します。

分析を有効化すると、以下の情報が確認できます。

  • どのクライアントからどのサーバーへ通信しているか
  • どのプロセスが通信しているか
  • 使用しているポート番号

この依存関係マップをもとに、移行グループ(一緒に移行すべきサーバーセット)を計画することができます。


フェーズ4:評価(Assessment)

移行先のAzureでどのような構成・コストになるかを評価します。

評価設定のカスタマイズ

評価の設定では以下の項目を調整できます。

設定項目説明
ターゲットリージョン移行先リージョン(例:東日本、西日本)
サイジング基準パフォーマンスベース or 現在のスペックベース
パフォーマンス履歴の期間何日間のデータをもとにサイジングするか
予約インスタンス1年・3年の予約で割引を適用するか
Azure Hybrid BenefitオンプレのWindowsライセンスをAzureに持ち込む(最大49%割引)

注意:Azure Hybrid BenefitをONにするかOFFにするかで月額コストが大きく変わります。ライセンスの持ち込みが可能な場合は必ず有効化してください。

評価結果の確認

評価が完了すると、以下の情報が確認できます。

  • Azureに移行可能かどうか(互換性チェック)
  • 推奨VMサイズとディスク種別
  • 月額概算コスト(例:SharePoint構成の2台で約2万8千円/月)
  • OSのサポート状況

ストレージについては、現在の読み書き負荷(IOPS/BPS)をもとに適切なディスク種別(Standard HDD / Standard SSD / Premium SSD)が自動的に提案されます。


フェーズ5:移行(Migration)

評価に問題がなければ、実際の移行フェーズに進みます。

移行の準備:HyperV Replication Providerのインストール

移行にはAzure Site Recoveryのレプリケーション技術を利用します。Hyper-VホストにAzure Site Recovery Providerをインストールすることで、稼働中のVMのデータをAzureへ継続的にレプリケーションできるようになります。

  1. Azure MigrateからProviderをダウンロードします
  2. Hyper-Vホスト上でインストールを実行します
  3. インストール後、Azure Migrateのプロジェクトキーファイルを指定して登録します

レプリケーション設定

Providerの登録が完了したら、レプリケーションを開始します。

設定項目:

  • 移行元:Hyper-Vを選択
  • 移行グループ:事前に作成したグループ(例:SharePointグループ)を選択
  • 移行先:サブスクリプション、リソースグループ、仮想ネットワーク、サブネットを選択
  • キャッシュストレージアカウント:レプリケーション用に自動作成または既存のものを指定
  • Azure Hybrid Benefit:Windowsライセンス持ち込みの場合は有効化
  • VMサイズ・ディスク種別:評価結果に基づいて自動設定(手動変更も可)

レプリケーションが開始すると進捗がパーセントで表示され、「Protected」状態になれば差分レプリケーションが継続して行われている状態です。

テスト移行

本番移行の前に、必ずテスト移行を実施することを推奨します。

  1. テスト移行用の隔離された仮想ネットワークを選択します
  2. テストフェールオーバーを開始します(オンプレのVMは稼働したままです)
  3. Azureにテスト用VMが作成されたら、接続して動作確認を行います
  4. 確認完了後、「テスト移行のクリーンアップ」でテスト用VMを削除します

Windowsドメイン参加サーバーのテスト移行時の注意点:テスト移行は本番環境と同じネットワークで行うと、同名のホストが2台存在することになり問題が発生します。必ず隔離されたネットワークで行ってください。テスト環境でのドメインコントローラーの用意など、AD環境の考慮が必要です。

本番移行

テスト移行がOKであれば、本番移行を実行します。

  • シャットダウンして移行:データの整合性を最大限確保しますが、ダウンタイムが発生します
  • シャットダウンせず移行:ダウンタイムを最小化できますが、わずかなデータ損失が発生する可能性があります

移行後はDNSの変更など、ネットワーク設定の切り替えも忘れずに行ってください。特にActive Directory環境では、ドメインコントローラーの参照先変更など考慮すべき点が多くあります。


Azure Stack HCI 22H2と23H2の違いと移行ツールの対応状況

本動画の撮影時点(2024年8月)において、Azure MigrateによるAzure Stack HCIへの移行には以下の制限があります。最新の対応状況を必ず公式ドキュメントで確認してください。

現時点の対応状況まとめ

移行シナリオ対応状況(2024年8月時点)
Hyper-V → Azure VM✅ 一般提供(GA)
Hyper-V → Azure Stack HCI 23H2(Azure Migrate)⚠️ プレビュー
VMware → Azure Stack HCI 23H2(Azure Migrate)❌ プライベートプレビュー(一般公開前)
Hyper-V/VMware → Azure Stack HCI 22H2(SCVMM)✅ 利用可能
手動移行(VHDコピー)⚠️ 22H2のみ推奨

22H2と23H2の大きな違い

Azure Stack HCI 23H2から、Azure Arcを通じたAzureポータルからの管理が推奨の手法になりました。

これが移行ツールの対応状況に大きく影響しています。23H2では、移行して作成したVMがAzure Arc上のリソースと紐付く必要があるため、従来のVHDファイルをコピーして仮想マシンを作成するだけの手法は推奨されていません。各移行ツールがこの仕組みに対応するための実装が完了するまで待つ必要があります。

現実的な選択肢

  • Azure Stack HCI 22H2環境への移行:SCVMMや手動移行が利用可能です
  • Azure Stack HCI 23H2環境への移行(VMwareから):Veeam Backup & Replicationなどのサードパーティ製ツールが現実的な選択肢です
  • Azure Stack HCI 23H2への移行(Hyper-Vから):Azure Migrateのプレビュー機能を確認しつつ、対応完了を待つか、サードパーティを利用します

まとめ

Azure Migrateを使ったHyper-VからAzure VMへの移行は、検出→依存関係分析→評価→移行という明確なフェーズに分かれており、ウィザードに従って進めれば比較的スムーズに実行できます。

特に以下のポイントに注意してください。

  • 評価フェーズのカスタマイズが重要:リザーブドインスタンスやAzure Hybrid Benefitの設定によって月額コストが大きく変わります
  • テスト移行は必ず実施する:本番環境への影響を最小化するためにも、テスト移行でシステムの動作を確認してから本番移行に臨んでください
  • Active Directory環境は事前計画が必須:ドメインコントローラーの配置や参照先変更など、AD周りの移行計画を十分に立ててから実施してください
  • Azure Stack HCIへの移行はバージョンを確認:22H2と23H2では利用できる移行ツールが大きく異なります。この動画の撮影後に状況が変わっている可能性もありますので、必ず最新の公式ドキュメントを参照してください

Azure Migrateの全体像を把握した上で、自組織の環境に合った移行手段を選択することが重要です。