SA特典でAzure Stack HCIを追加コストなしで選択可能に!価格体系の大きな変化を解説

この記事の内容

  • Azure Stack HCIは仮想基盤に特化したOSであり、Windows Serverよりも仮想基盤向けの機能が充実しています
  • これまでAzure Stack HCIの採用が進まなかった背景には、Windows Serverと比較したときのコスト面の課題がありました
  • Azureハイブリッド特典の拡張により、Software Assurance(SA)付きでWindows Serverを購入済みの組織は、追加コストなしでAzure Stack HCIを選択できるようになりました
  • この変更により、「コスト最優先」の組織に対してもAzure Stack HCIを提案しやすくなりました
  • Windows Server 2012のEOS対応を検討している組織にとって、特に有効な選択肢となります

Azure Stack HCIとは何か

Azure Stack HCIは、仮想基盤に特化したOSです。Microsoftは製品ラインナップを明確に分離しており、Windows Serverは最高のゲストOSAzure Stack HCIは最高の仮想基盤OSとして位置づけています。

Azure Stack HCIにはデスクトップエクスペリエンス(GUIのデスクトップ環境)がなく、初期設定としてIPアドレス・ホスト名・ドメイン参加といった最小限の構成のみをローカルで行います。その後の管理はWindows Admin CenterやリモートのPowerShellなど、リモート管理ツールを使って行います。

この構成により、以下のメリットがあります。

  • 余分なサーバー機能が含まれないため、セキュリティリスクが低い
  • ディスクの使用容量が小さい
  • 仮想基盤向けの機能がWindows Serverよりも充実している

つまり、オンプレミスの仮想基盤を新たに構築・更新する際の第一選択肢として、Azure Stack HCIを検討するのが自然な流れになってきています。


これまでの課題:なぜAzure Stack HCIが選ばれにくかったのか

Azure Stack HCIの機能的な優位性は明確である一方で、コスト面での課題がありました。

Windows Serverのゲストライセンス体系

仮想基盤上でWindows Server VMを多数稼働させる場合、これまでのライセンスパターンは主に以下のとおりでした。

パターン概要
Linuxのみを稼働させる場合ゲストOSのWindowsライセンスは不要
Windows Server VMを決まった台数稼働させる場合必要台数分のStandard EditionとCALを購入
Windows Server VMを無制限に稼働させる場合(ライセンス買い切り)Datacenter Editionを購入(ゲスト無制限)
Windows Server VMを無制限に稼働させる場合(サブスクリプション)Azure Stack HCI料金+ゲストサブスクリプション料金を月額で支払い

なぜ「追加コスト」に見えてしまうのか

多くの組織では、Windows Server VMを多数稼働させるためにすでにWindows Server Datacenter Editionを購入しています。Datacenter EditionにはHyper-Vも含まれるため、ゲストを動かすことだけを考えると「仮想基盤機能がすでについている」状態になります。

この状況でAzure Stack HCIを導入しようとすると、Azure Stack HCIのライセンス費用が追加コストとして見えてしまいます。結果として、「今まで通りWindows Server + Hyper-Vで動かせばいい」という判断になりやすい構造でした。

また、Microsoftのライセンス体系自体が非常に複雑であり、正しく理解して最適な構成を選択するには専門知識が必要という点も、Azure Stack HCIの採用を妨げる一因となっていました。


大きな変化:SAハイブリッド特典の拡張

ここからが今回の本題です。Microsoft Igniteにて、Azureハイブリッド特典(Azure Hybrid Benefit) が拡張され、Azure Stack HCIへの適用が可能になりました。

Software Assurance(SA)とは

Software Assurance(SA)とは、Microsoftの製品を購入する際に付加できる保証・特典パッケージです。SAを付けると購入価格は上がりますが、アップデートの受け取りやさまざまな追加特典を得られます。

その特典の1つがAzureハイブリッド特典です。たとえば、オンプレミスのライセンスが余っている状況でAzure上のVMを作成する際に、Azureハイブリッド特典を適用するとVMの料金が大幅に安くなる機能がよく知られています(VM作成時のチェックボックスがこれに該当します)。

新たに追加された特典:Exchange for Azure Stack HCI Core

今回の拡張で追加されたのが「Exchange for Azure Stack HCI Core」です。

これは、SA付きのWindows Serverライセンスを保有している場合、そのライセンスをAzure Stack HCI向けに振り替えて利用できるというものです。

つまり、以下のことが可能になりました。

SA付きでWindows Serverを購入済みであれば、追加コストなしでAzure Stack HCIを稼働させることができる

さらに、SA特典を利用したAzure Stack HCI環境では、CAL(クライアントアクセスライセンス)も不要になるとされています。


この変化が意味すること

コスト最優先のお客様にも提案できるようになった

これまでは「コストを最優先にしたい」「今まで通りで構わない」という組織に対して、Azure Stack HCIを提案しても「追加コストがかかる」という壁がありました。

今後は、SA付きWindows Serverを保有している組織に対して、次のように提案できます。

「Windows ServerでもAzure Stack HCIでも、ライセンスコストは変わりません。同じ料金なら、仮想基盤として優れたAzure Stack HCIを選びましょう。」

「一番安い選択肢が、一番優れた選択肢」という形での提案が可能になりました。

Windows Server 2012 EOSへの対応との組み合わせ

Azure(Azure Stack HCIを含む)上で稼働するOSは、EOSを迎えたWindows Server(2008、2012など)に対して最大3年間、無償でパッチを受け取れるという特典があります。

EOSのパッチを継続して受け取るための費用(Extended Security Update)は高額になることが多く、2012環境をそのまま抱えている組織にとって大きな負担です。Azure Stack HCIへの移行と組み合わせることで、次のシナリオが現実的な提案になります。

  1. 既存のWindows Server 2012環境をAzure Stack HCIへ移行する
  2. 移行後もゲストOSとして2012を動かし続けながら、3年間無償でセキュリティパッチを受け取る
  3. その期間中にAzureとのハイブリッド連携や、ゲストOSのアップグレードを計画・実施する

この構成であれば、追加ライセンス費用なしで安全な移行期間を確保できます。

Microsoftが公開しているドキュメント

Microsoftの公式ドキュメントには、以下のような記述があります。

「オンプレミスライセンスの価値を最大化し、既存のインフラストラクチャを追加コストなしでAzureに最新化できます。」

この内容はAzure Stack HCIのAzureハイブリッド特典のページで確認できます。


どんな組織が対象になるか

今回の特典を活用できるのは、SA付きでWindows Serverを購入済みの組織です。

Microsoftの製品を多数利用している大規模な組織ほど、SA付きのまとめ買いをしているケースが多く、その場合はすでにSAを保有している可能性があります。まずは現在の契約状況を確認することが出発点になります。

  • SA(Software Assurance)を持っているか確認する
  • 持っている場合、Azureハイブリッド特典の適用条件を確認する
  • Windows Server 2012などEOS対応が必要な環境があるか確認する

SAを持っていない場合は、従来通りWindows Server Datacenter EditionとCALを組み合わせた構成が引き続き検討対象になります。


まとめ

今回の変更をまとめると、以下のとおりです。

  • Azure Stack HCIは仮想基盤として優れたOSだが、これまではコスト面で選ばれにくかった
  • Azureハイブリッド特典の拡張(Exchange for Azure Stack HCI Core)により、SA付きWindows Server保有者はAzure Stack HCIを追加コストなしで利用できるようになった
  • 「コスト最優先」の組織にもAzure Stack HCIを正面から提案できるようになった
  • Windows Server 2012のEOS対応と組み合わせることで、より説得力のある移行提案が可能になる

ライセンスの体系は複雑ですが、この変更は非常に大きな意味を持ちます。SA付きWindows Serverを保有している組織の仮想基盤更改やEOS対応の検討時には、ぜひAzure Stack HCIを選択肢に加えてみてください。詳細はMicrosoftのAzure Stack HCIのAzureハイブリッド特典に関する公式ドキュメントを参照してください。