Microsoft MVP 朱さんインタビュー——Dynamics 365 Business Centralへの情熱と多言語発信の原動力

この記事の内容

  • Microsoft MVP(Dynamics 365 Business Central専門)の朱さんの生い立ちと来日までの経歴を紹介します
  • ゲームや日本のコンテンツへの興味から日本語を独学でN1取得した経緯をお伝えします
  • Business Centralをはじめとする製品の概要と、日本市場での現状に触れます
  • 英語・日本語・中国語の3言語による情報発信を毎日継続できる理由に迫ります
  • コミュニティ活動や困っている人を助けたいという行動の原動力について紹介します

朱さんのプロフィールと来日の経緯

朱さんは中国・蘇州の揚州出身で、小学校6年生まで揚州に住み、中学から大学まで上海で過ごしました。1987年生まれで、2017年10月に来日し、インタビュー収録時点でちょうど日本在住5年目を迎えたところです。

幼少期は中国の一人っ子政策のもと、兄弟なしで育ちました。中学・高校時代は部活動がなく(部活は中国の大学からあるとのことです)、朝8時から夕方6時まで勉強する毎日でした。地方によっては朝6時から夜22時まで授業があるケースもあると教えてくれました。上海は全国的に見れば「まだ楽な方」だそうです。

趣味はゲームで、ファミリーコンピュータ・スーパーファミコン・PlayStation・PlayStation 2と日本のハードを遊び続けてきました。特にドラゴンクエストよりファイナルファンタジー派だと言います。当時は日本語がわからないままゲームを楽しんでいたそうですが、「カタカナが少し読めた」「漢字から意味を推測した」「中国語の攻略本を見ながらプレイした」と当時を振り返ります。それが後に日本語を勉強するきっかけの一つになりました。

パソコンを触り始めたのは大学入学後(2006年)から。大学の専攻はソフトウェアエンジニアリングで、ご両親が「これからはIT系が伸びる」と考えて選んでくれた分野だそうです。大学ではバスケットボールに打ち込み、4年間チームで続けていました。ポジションはシューティングガードです。


キャリアの歩み——中国からERPの世界へ

新卒から7年間は中国本土の会社で働きました。最初の1年強は上海GMのパートナー企業(民間企業)に在籍し、全国のディーラー(中国では「4S店」と呼ばれます)を回って販売・サービスシステムの構築とトレーニングを担当しました。毎週異なる人と出会い、同じ内容を繰り返しトレーニングしたことで、コミュニケーション能力が大きく向上したと言います。この時期は開発よりもシステム運用・管理・トレーニングがメインでした。

その後、大学時代から独学で勉強していた日本語でJLPT N1を取得し、日系企業へ転職します。そこで初めて大型ERPシステムに触れました。会計・連結決算・システム導入といった幅広い業務を担当し、IT全般(インフラ以外)を管理する立場になりました。

日本への転職は知人からの声がけがきっかけでした。「日本に興味はありますか?」と聞かれ、もともと憧れていたこともあり決断します。来日前にも観光で何度か訪れており、富士山登山や鹿児島の桜島、高松など各地を奥様と旅してきたそうです。現在は来日以降に就職した2社目に在籍しています。


Dynamics 365 Business Centralとは

朱さんが専門とするDynamics 365 Business Central(BC)は、主に中堅・中小企業向けのERP製品です。

BCの前身はNavision(ナビジョン)というデンマーク企業が開発した製品で、Microsoftが買収後に「NAV(Navision → NAV → 旧NAB)」として発展させ、2018年に現在の「Business Central」という名称に変わりました。もともとは大企業向けのDynamics 365 Finance & Operations(旧AX)と比べて価格が低く、操作しやすい製品として位置づけられています。

現在のDynamics 365は大きく3つの領域に分かれています:

  • CE(Customer Engagement)系:Sales、Marketing、Customer Serviceなど(旧CRM)
  • FO(Finance & Operations)系:旧AX、大規模企業向けERP
  • BC系:旧NAV、中堅中小企業向けERP

BCはヨーロッパやアメリカでの認知度・利用率が特に高く、グローバルランキングでは3〜4位に入ることもある製品です。一方、日本市場ではまだ普及途上であることも率直に語ってくれました。


毎日のブログ発信と多言語対応

朱さんのブログは毎日投稿を継続しています。英語・日本語・中国語の3言語で記事を書いており、現在は英語をメインに発信しています。

当初は中国語と日本語で書いていましたが、閲覧数がなかなか伸びなかったため、英語に切り替えたところ大きく変わりました。英語が母国語でないにもかかわらず英語を選んだ理由はシンプルで、「英語話者の母数が段違いに多いから」です。

英語での発信にあたっては、テキストだけでは伝わりにくいことも多いため、画像やビデオを使った視覚的な説明に力を入れています。英語は得意ではないと謙遜しますが、「わかりやすく伝えること」を最優先にした結果、継続できているとのことです。

また、Microsoft技術(特にERP分野)では英語・会計・ITの3つが重要なスキルとされており、英語は避けて通れない要素だと話します。


コミュニティ活動とMicrosoft MVP

朱さんはMicrosoftのフォーラム(Microsoft Learn / Q&Aコミュニティ)で毎日積極的に回答しており、毎月コミュニティスターに選ばれ、基本的にトップ3に入り続けています。フォーラムで見かけた質問・問題をブログ記事にして詳しく解説するというスタイルも定着しています。

LinkedInやSNS経由で個人宛に届く質問にも可能な限り回答しており、場合によっては検証した上で返信することもあるそうです。質問者の中にはインド・ドイツ・USなど世界各地からの問い合わせも多く、BCを使っている国際的なユーザーとのやり取りが日常になっています。

「困っている人を助けたい」という気持ちが活動の根本的な原動力であり、感謝の言葉をもらえることが大きな喜びになっていると語ります。


Power PlatformやM365との連携強化

最近の動向として、Business CentralとPower Platformとの連携が強化されていることにも触れてくれました。

以前はレポート開発にレポートビルダーを使う必要があり、開発言語や記法の違いから苦労することが多かったそうですが、Power BIの登場によって印刷系以外のレポートがほぼPower BIで対応できるようになりました。また、Power Automateを使えばコーディングなしで承認フローなどを簡単に構築できます。

さらに、M365/Teamsとの連携についても言及がありました。近々リリース予定の機能として、BCのライセンスがなくてもTeamsユーザーとしてシステムデータを参照できる機能が来月からリリース予定であるとのことです。これはビジネスへの広がりという観点で大きなポイントになりそうです。


まとめ

朱さんは中国での学業・職歴を経て来日し、Dynamics 365 Business Centralの専門家としてMicrosoft MVPを受賞しています。英語・日本語・中国語の3言語で毎日情報発信を続け、グローバルなコミュニティでも高い存在感を持っています。

日本ではまだ普及途上のBCですが、ヨーロッパ・アメリカでの利用率は高く、Power PlatformやM365との連携強化によってさらなる広がりが期待されます。「困っている人を助けたい」という一貫した姿勢と、楽しみながら学び続けるスタンスが、継続的な発信と活動を支える原動力になっています。

Dynamics 365 Business Centralに興味がある方は、ぜひ朱さんのブログやコミュニティ活動もチェックしてみてください。