Microsoft MVPダブル受賞!TAICHIさんに聞く、ヘビメタからMicrosoft 365の道
この記事の内容
- ヘビーメタルギタリストからMicrosoft MVP受賞者へ至る異色のキャリアパス
- SharePoint Server 2007から始まったMicrosoft技術との出会いと深化
- 「シンプルイズベスト」を貫くSharePoint/Microsoft 365活用哲学
- Power Platformコミュニティでの斜め上な活動(楽器アプリで演奏会!)
- コミュニティ参加を楽しく続けるためのマインドセット
音楽からITへ——異色のキャリアの始まり
TAICHIさんは1976年(昭和51年)生まれ。幼い頃から音楽が好きで、大学時代はバンド活動に打ち込みました。ジャンルはヘビーメタル。「稼げないのはわかっていた」と語りつつも、音楽への情熱はその後も長く続きます。
大学卒業後は就職氷河期の中、居酒屋の親会社に就職。しかし1日最低15時間労働・休日もほぼなしという劣悪な環境に1年で見切りをつけます。その後は音楽仲間との縁でデジタルミュージック系のギタリスト・作曲家として細々と活動。アニメのキャラクターソング(某人気テニスアニメなど)にも携わりました。
音楽だけでは安定した収入が得られないため、大学時代から趣味でやっていたWebサイト制作を活かして派遣社員としてWeb系の仕事に就きます。当時はまだ「企業に1サイトもない」時代。Webデザイナーとしての活動がIT業界への本格的な足がかりとなりました。
SharePoint Server 2007との運命的な出会い
Web系の派遣を続ける中で、社内イントラサイトの更新業務を経験します。そこからSharePointの世界へ踏み込むきっかけが訪れました。
ある派遣先の面接で「SharePoint、知ってる?」と聞かれ、まったく知らないにもかかわらず「中古車でもいいから釣ってきて入って」とその場で採用されたそうです。こうしてSharePoint Server 2007がTAICHIさんのMicrosoft技術の起点となりました。
SharePoint導入当初は、コードが苦手なTAICHIさんにとって決して簡単ではありませんでした。「足を踏み入れたら沼がすごくて」と振り返ります。しかし標準機能でもポチポチ操作でそれなりに使えるという特性が、プログラミングが苦手な自分にも「いけそうだ」と感じさせてくれたといいます。
「シンプルイズベスト」——10年以上貫いてきた哲学
TAICHIさんがSharePoint・Microsoft 365に関わる中で一貫して持ち続けているポリシーが、**「シンプルイズベスト」**です。
- カスタマイズすれば様々なことができるのはわかっている
- しかし管理面・メンテナンス性を考えると、標準機能で事足りるならそれで十分
- ユーザー部門の要件をすべて実装しようとするとコストが膨大になる
- デザイン・UX・アクセシビリティの観点から説得力のある言葉で「標準機能に寄せる」交渉をすることが腕の見せ所
「技術を駆使するより、標準機能でいかに目的を達成するか。手段が目的にならないようにすること」——これはSharePointを知っている方なら深くうなずける考え方ではないでしょうか。バージョンアップのたびに苦労する独自カスタマイズの山を見てきたからこそ生まれた哲学です。
アウトプット解禁——ブログ開始とユーザー目線の情報発信
7万人規模の企業のIT部門に属し、社内SharePointの運用を担っていた時期、TAICHIさんは外部へのアウトプットを切望していました。先人たちのブログに助けられた経験から、「自分もお世話返しがしたい」「後続の人たちが困らないように」という思いがあったからです。
しかし当時の上司から「ダメ」と言われ続け、7年間にわたって社内ブログのみでTipsを記録し続けました。そのメモは最終的に600件を超えるほどになったそうです。
転機となったのは転職です。新しい会社では「アウトプットしていいですか」と確認したところ「全然OK」と回答をもらい、ようやく外部ブログをスタートさせることができました。
TAICHIさんのブログ・情報発信の特徴はユーザー目線です。
- IT部門のエンジニア向けの難しい技術情報ではなく、一般ユーザー向け
- SharePointやMicrosoft 365を使うのはコードを書けない普通のユーザーが大半
- そういった方々が困っていることを解決したいという一貫した姿勢
これが結果的に幅広いアクセスを生み、継続的な情報発信につながっています。
現在の主軸:SharePoint × Microsoft Teams
Microsoft 365の幅広いサービスのうち、TAICHIさんが特に注力しているのはSharePointとMicrosoft Teamsの2つです。
- Teamsはコラボレーションのハブとして多様なサービスと連携できる
- そこにSharePointや各種Microsoft 365サービス、Power Platformが組み合わさる
- メール系(Exchange/Outlook)はあまりカバーせず、チャットツールへの移行を支持する立場
YouTubeチャンネル「ホーム365」では、Microsoft TeamsのTipsや「知らないと危ない仕様」などを発信。また**Power Appsで楽器アプリを作って演奏会を開く「パワーアップスオーケストラ」**という斜め上な活動も行っており、楽しみながら技術普及を図っています。
Power Platformと市民開発者の時代
Power Platformについて、TAICHIさんは興味深い視点を提示しています。
「ローコード・ノーコードといっても、コネクターを作るなど難しい部分はエンジニアが担う。市民開発者がそれをポチポチ使うことで共存できる。ローコードであっても、プログラマー的な設計思想や勘所は大事」
特に強調しているのが、ノーコードで作れるからといって設計思想が不要なわけではないという点です。「アプリケーションを作る・システムを作るときの考え方」はローコードであっても必要であり、それが欠けると運用・メンテナンスで行き詰まることになります。
一方で、Power Platformが「市民開発者」という新しいプレーヤーを生み出し、以前はアウトプットが少なかったエンドユーザーや情報システム部門の方々が積極的に登壇・発信するようになってきた点も歓迎しています。
ただし、「うちの上司が理解してくれない」「うちの会社のITリテラシーが低い」という愚痴的な発信については苦言も呈しています。「それよりも、こうやって課題を克服できましたという建設的な話につなげてほしい」というのがTAICHIさんのスタンスです。
YouTube活動:IT系と音楽系、2つのチャンネル
TAICHIさんはYouTubeチャンネルを2つ運営しています。
IT系:ホーム365チャンネル
- Microsoft TeamsのTipsや仕様解説
- Power Appsで作った楽器アプリの演奏動画
- みんなでPower Appsオーケストラを演奏している動画
非IT系:Early Art Break チャンネル
- ギター演奏動画(もともとの音楽活動)
- 息子とのゲーム実況(マインクラフトなど)
- 愛車レビュー(買い替えをきっかけに視聴数が急増)
「楽しいからやっている。楽しくなくなったらすぐやめる」というスタンスで、モチベーションに正直に活動を続けているそうです。
夢:Microsoft Global SummitでPower Appsオーケストラ演奏
TAICHIさんが描く夢のひとつは、Microsoft MVP Global Summitでパワーアップスオーケストラとして演奏することです。
コロナ禍でオンライン開催が続き一時は頓挫しましたが、ハイブリッド開催が再開される未来に向けて、アメリカのMicrosoftキャンパスでPower Appsの楽器アプリを演奏するという計画をガチめに温めています。
コミュニティへの思い
TAICHIさんはMicrosoftコミュニティへの参加を強く勧めています。
- Microsoft 365関連:Japan Office 365ユーザーグループ(Connpassで検索)
- Power Platform関連:Power Apps、Power Automate、Power BIそれぞれに大きなコミュニティがあり、Connpassで検索可能
「入ってみると楽しいですよ。ダメ元で1回参加してみると良い」——知らない方はまずコミュニティの名前でConnpassを検索してみてください。
まとめ
TAICHIさんのキャリアは、ヘビーメタルギタリストから居酒屋、フリーランス音楽家、Webデザイナー、そしてSharePoint/Microsoft 365のMVP受賞者へという、非常にユニークな道のりでした。
一貫しているのは「楽しむこと」と「シンプルイズベスト」の哲学です。難しいカスタマイズや技術をひけらかすよりも、ユーザーが本当に困っていることを標準機能で解決する。そのための説得力と交渉力を磨く。この姿勢がブログのアクセス増加にもコミュニティでの活躍にもつながっています。
Power Platformで楽器アプリを作って演奏会を開くというユニークな活動も、「技術を楽しむ」精神の体現です。Microsoft 365に関わるすべての方——エンジニアも市民開発者も管理者も——が共存しながら楽しめるエコシステムを作ることが、TAICHIさんの変わらぬ目標です。