Microsoft Ignite 2021で発表されたAzure Stack HCIの最新情報まとめ
この記事の内容
- Azure Virtual Desktop(AVD)のホストプールがAzure Stack HCI上で動作するプレビューが発表されました
- Windows Server 2022 Azure EditionがAzure Stack HCIでも利用可能になります
- WindowsサーバーのゲストライセンスをAzureサブスクリプションの従量課金で支払えるようになります
- AzureポータルからAzure Stack HCI上の仮想マシンを直接管理できるプレビュー機能が登場しました
- Azure BackupとAzure Site RecoveryがAzure Stack HCIで正式サポートされました
Azure Virtual Desktop for HCI プレビュー
今回のIgniteで最も注目度の高い発表が、Azure Virtual Desktop(AVD)for HCIのプレビューです。
これまでAVDのホストプールはAzureパブリッククラウド上でのみ動作していましたが、今回のアップデートによりオンプレミスのAzure Stack HCI上でもホストプールを構築できるようになりました。Windows 10/11のマルチセッションVMは従来「Azureクラウド上でしか使えない」とされていましたが、Azure Stack HCI上でも動作するようになります。
なぜオンプレミスでAVDが必要なのか
「AVDはAzureクラウドで動かせばよいのでは」と思われる方もいるかもしれませんが、以下のようなユースケースでオンプレミスでのホストが有効です。
- レイテンシーを極限まで下げたいアプリケーション:レイテンシーセンシティブなアプリケーションや映像編集など、低遅延が必要なワークロード
- セキュリティ要件によりインターネット経由接続が許可されないシステム:オンプレミスの他システムとの連携が必要で、インターネット経由では接続できないケース
RDPショートパスによる低遅延接続
「クラウド経由で操作するなら遅くて使い物にならないのでは」という懸念に対しては、RDPショートパスという仕組みで解決しています。
初回認証などのコントロールプレーン通信はクラウド経由で行いますが、接続確立後はクライアントからセッションホスト(Azure Stack HCI上のVM)へ直接RDP接続するショートパスが有効になります。これにより、オフィス内のサーバーに直接RDP接続するのと同等の操作感を実現できます。
現在はプレビュー中で無料で試すことができます。料金体系は正式リリース時に発表される予定です。
Windows Server 2022 Azure Edition on Azure Stack HCI
次の大きな発表が、Windows Server 2022 Azure EditionのAzure Stack HCI対応です(Coming Soon)。
Azure Editionとは、Azureクラウド上でのみ使用できる特別なエディションで、以下のような独自機能を持っています。
- ホットパッチ:再起動なしにパッチを適用できる機能
このAzure Editionがクラウド上だけでなく、Azure Stack HCI上でも利用できるようになります。
Extended Security Updates(ESU)の無償提供
サポートが終了したOSに対して、Azureではパッチを無償で提供する**Extended Security Updates(ESU)**という仕組みがあります。
これまではAzure上のVMが対象でしたが、Azure Stack HCI上のVMにも同様の恩恵が受けられるようになります。現在はWindows Server 2008 R2が対象で、まもなくサポート終了を迎えるWindows Server 2012/2012 R2も対象となる予定です。
古いWindowsサーバーをAzure Stack HCIに移行しておくことで、引き続きパッチを受け取りながら対応策を検討する時間を確保できます。
Windowsサーバーライセンスのサブスクリプション課金
個人的に大きな変化だと感じるのが、WindowsサーバーゲストライセンスをAzureサブスクリプションで従量課金できるようになるという発表です(Coming Soon)。
従来のオンプレミスWindowsサーバーの場合、データセンターライセンスを一括購入し、その上で何台ゲストVMを作っても追加費用なしというモデルが一般的でした。
新しいモデルでは、Azure Stack HCIのホスト利用料金をAzure料金として支払い、その上で動作するWindowsサーバーのゲストライセンスについても、動かしている分だけ従量課金で支払えるようになります。
VMを頻繁に作成・削除するようなクラウドネイティブな使い方をしている組織では、コスト面で大きなメリットが生まれる可能性があります。詳細は翌月に発表される予定とのことです。
AzureポータルからのAzure Stack HCI VM管理(プレビュー)
Arc-Enabled VM Managementのプレビューとして、AzureポータルからAzure Stack HCI上の仮想マシンを直接管理できるようになります。
この機能により以下が実現します。
- AzureポータルのVMブレードと同じ操作でAzure Stack HCI上のVMを展開・管理
- ARMリソースとしてVMや関連リソース(イメージ、ディスク、ネットワーク等)を管理
- AzureのRBACによる細粒度の権限制御
- セルフサービスでのVM展開(エンドユーザーやエンジニアへの権限委譲)
権限管理の課題を解決
これまでHyper-VやAzure Stack HCIでは「エンドユーザーにVMを自由に作らせたい」というニーズに応えることが難しい状況でした。Hyper-VのホストにVM作成権限を与えると、ホスト全体に対する管理権限も付与されてしまうためです。
今回のAzure ARM統合により、インフラ基盤の管理とVM上物の管理を明確に分離できるようになります。エンドユーザーはAzureポータルから割り当てられたスコープ内のVMのみを操作でき、クラスターホスト自体には権限を持たない状態を実現できます。
これにより、Azure Stack HCIを活用したホスティングサービスの構築が現実的に検討できる段階になってきたと言えます。
Azure BackupとAzure Site Recoveryの正式サポート
Azure BackupとAzure Site RecoveryがAzure Stack HCIで正式にサポートされました。
これまでプレビューだったこれらの機能が本番環境で利用できるようになっています。
Azure Stack HCI バージョン21H2のリリース
Azure Stack HCIの最新バージョン21H2がGAとなりました。新規構築の際は21H2を使用してください。
既存バージョンを使用している場合は、新しいアップデートが提供されますので、21H2へのアップデートを推奨します。なお、アップデート適用中も上で動作しているVMはそのまま稼働し続けることができます。
まとめ
Microsoft Ignite 2021では、Azure Stack HCIに関して複数の重要な発表がありました。
最大のトピックはAVDのホストプール対応で、レイテンシーやセキュリティ要件からクラウド上に置けなかったワークロードに対しても、Azure Virtual Desktopの世界観を持ち込めるようになりました。RDPショートパスによって操作感も損なわれません。
また、AzureポータルからのVM管理機能により、Azureクラウドと一貫した管理体験がオンプレミスのAzure Stack HCIでも実現されつつあります。ARMネイティブなリソースとして管理できることで、AzureのRBACや各種自動化の仕組みをそのまま活用できます。
Windowsサーバーライセンスの従量課金化と合わせて、Azure Stack HCIはよりクラウドらしい運用・コスト管理ができる基盤へと着実に進化しています。