メール乗っ取り?自分自身からメールが?単純な詐欺メールに騙されないように!
この記事の内容
- 「自分自身から届いたように見える」怪しいメールの正体を解説します
- SMTP プロトコルの仕組みを使えば、差出人アドレスは簡単に偽装できることを示します
- telnet を使った実演で、メールアドレス偽装の手口を具体的に確認します
- メールヘッダーの確認方法と、本物かどうかを見分けるポイントを紹介します
- 脅し文句が書かれていても払う必要がない理由を説明します
はじめに
「自分自身からメールが届いたんだけど……」という相談を複数の方からいただきました。内容は「個人情報が漏れていますよ」「あなたの画面もすべて見えています」といった脅し文句に続き、615ドル相当のビットコインを要求するものです。
自分のアドレスからメールが来ているように見えると、「もしかして乗っ取られた?」と焦ってしまいがちです。しかし実際には、これはよくある詐欺メールのひとつです。この記事では、どうやってこういうメールが送られているのかを実演を交えて解説します。
SMTP プロトコルの仕組みと差出人偽装
メールの送受信には SMTP(Simple Mail Transfer Protocol) というプロトコルが使われています。この SMTP は、もともと差出人の認証機能を持っていません。つまり、差出人のメールアドレスは「ただ書くだけ」で自由に設定できてしまいます。
後から SPF・DKIM・DMARC といった認証の仕組みが標準化されましたが、古い SMTP プロトコルそのものはまだ広く使われており、認証なしにメールを送信できるサーバーも存在します。
実演:telnet で差出人を偽装してメールを送る
実際に偽装メールを送る手順を確認してみましょう。
① 対象ドメインの MX レコードを調べる
まずメールを届けるサーバー(メールサーバー)のアドレスを DNS の MX レコードで確認します。
nslookup -type=MX example.com
② telnet で SMTP サーバーに接続する
MX レコードで取得したホストに対し、SMTP の標準ポート 25 番で接続します。
telnet mail.example.com 25
③ SMTP コマンドで差出人・受信者を設定してメールを送信する
ポイントは MAIL FROM: に書くアドレスも From: ヘッダーに書くアドレスも、認証なしで任意の値を設定できることです。パスワードも不要で、ただ書けばそのまま通ってしまいます。
この方法で実際に送信したところ、受信側のメールクライアントには差出人が自分自身であるかのように表示されました。
Microsoft 365 の既定設定での動作
この検証環境(Microsoft 365)では、偽装メールは迷惑メールフォルダに自動振り分けされました。Microsoft 365 の既定の設定であれば、こうした偽装メールをある程度自動で判定してくれます。
ただし、環境によっては受信トレイに届いてしまうケースもあるようです。
メールヘッダーで本物かどうか確認する方法
実際にメールが届いた際、本当に怪しいかどうかを確認するにはメールのヘッダー情報を確認します。
Outlook での確認手順(例)
- 該当メールを開く
- メールの詳細オプションからヘッダー情報を表示する
ヘッダーの中に Received: という項目が複数並んでいます。これはメールがサーバーを経由するたびに追記されるログです。
一番下の Received: が、そのメールが最初に送信されたサーバーの情報です。ここに記録されている IP アドレスやホスト名を確認することで、本当にどこから送信されたメールなのかを特定できます。
上記の例では 192.0.2.45 という IP アドレスから送信されていることがわかります。この IP アドレスを調べると、送信元の素性(どのプロバイダのサーバーか、など)が確認できます。
まとめ
- 「自分自身から届いたように見えるメール」は、SMTP プロトコルの仕様を悪用した単純な差出人偽装です
- アカウントが乗っ取られたわけではありません。メールアドレスさえ知っていれば誰でも偽装できます
- こうした脅し文句のメールでお金を要求してくる場合、100% 詐欺です。絶対に支払わないようにしましょう
- 本物かどうか確認したい場合は、メールヘッダーの一番下にある
Received:の IP アドレスを確認することで送信元を特定できます - Microsoft 365 の既定設定ではある程度自動で迷惑メール判定されますが、環境によっては受信トレイに届く場合もあるため注意が必要です
メールの差出人情報は簡単に偽装できるということを知っておくだけで、こうした詐欺メールに惑わされることはなくなります。怪しいメールが届いても冷静に対処しましょう。