Microsoft、4月15日からWord/Excel/PowerPointの無料Copilot Chatを廃止——企業IT担当者が今すぐ確認すべきこと
Microsoftが2026年4月15日より、Word・Excel・PowerPoint・OneNote内に組み込まれていた無料のCopilot Chat機能を、一定規模以上の組織に対して利用不可とする。わずか6ヶ月前にリリースされた機能を、数週間という短い告知期間で撤回するという今回の決定は、多くの企業のIT担当者に混乱をもたらしている。 何が変わるのか Microsoftは今回の変更にあわせ、Copilot関連のブランド名も整理する。 Copilot Chat(無料版) → 「Copilot Chat (Basic)」に改称 Microsoft 365 Copilot(有料版) → 「M365 Copilot (Premium)」に改称 名称の整理自体はわかりやすくなるという面もあるが、実態は機能制限の強化だ。 組織規模によって異なる影響 従業員300名超の大規模組織(エンタープライズ) 4月15日以降、Microsoft 365 Copilotライセンスを持たないユーザーは、Word・Excel・PowerPoint・OneNote内のCopilot Chatが完全に利用不可になる。ただしOutlookのCopilot Chatは引き続き無料で使用できる。 従業員300名未満の中小規模組織(SMB) アクセスが完全に遮断されるわけではないが、ピーク時間帯には「スタンダードアクセス」、すなわち品質・パフォーマンスが低下した状態での提供となる。加えて、有料ライセンスへの誘導プロンプトが頻繁に表示されるようになる。 有料ライセンスのコスト感 組織規模 月額コスト(1ユーザーあたり) 300名超(エンタープライズ) $30 300名以下(SMB) $21 いずれも既存のMicrosoft 365サブスクリプション料金に追加で課金される。たとえば50名規模の会社では月額$1,050(約15万円以上)の追加コストが発生する計算だ。 なぜMicrosoftはこの決定をしたのか Copilot AIの基盤維持コストが高騰しているにもかかわらず、有料ライセンスへの移行率が期待を下回っていることが背景にある。加えて、Copilotがほかの生成AIサービスと比較して「最良の選択肢ではない」という市場の印象が広がりつつあるという事情も重なっている。株主からの短期的な収益改善圧力も無視できない要因だろう。 実務への影響——日本のIT担当者が今すぐやること 1. 自社の組織規模と契約状況の確認 300名の境界線がどちらに引かれるかで対応方針が変わる。Microsoft 365管理センターでライセンス割り当て状況を今すぐ確認しておこう。 2. 4月15日をカレンダーに入れてユーザーへの事前周知 「突然Copilotが使えなくなった」という問い合わせが殺到する前に、影響を受けるユーザーへ告知を。特にWord・Excelをヘビーに使っている部門は要注意だ。 3. コスト試算と経営層への説明 Copilot Premiumライセンスを全社展開するか、対象ユーザーを絞るか、あるいは代替手段を検討するか——判断を求められる場面が近い。1ユーザーあたりの月額と人数を掛け合わせた試算を早めに準備しておきたい。 4. Outlookのみ継続提供される点を活用 議事録の要約や定型メール作成など、Outlookで完結するユースケースはCopilot Chat (Basic)のまま継続利用できる。ワークフロー設計を見直すと無駄な追加コストを抑えられる可能性がある。 5. Microsoft 365 Copilot以外のAIアシスタントとの併用を検討 MicrosoftがAzure AI Foundryを通じて外部モデルへのアクセスを広げていることを活用し、高度な分析・文書生成タスクには別のAIを並べて使う「複線構成」も現実的な選択肢として視野に入れておくべきだ。 筆者の見解 今回の変更で最も気になるのは、機能そのものの廃止よりも「たった6ヶ月で方針転換した」という事実だ。 Copilot Chatをワークフローに組み込み始めていた組織にとって、数週間の告知期間での撤回は現場に混乱を招く。MicrosoftはCopilotを「Microsoft 365の核心機能」として位置づけてきたはずだ。その看板機能の提供ルールがこれほど短期間で変わることは、信頼の基盤を揺るがしかねない。 もちろん、AI基盤コストの高さとビジネスの持続性を両立させることは容易ではない。無料で広くばらまき、価値を感じてもらってから有料転換を狙うフリーミアムモデル自体は理にかなっている。だが、そのサイクルを半年で完結させようとするのは、ユーザー側の受容速度を無視した急ぎすぎだと感じる。 Microsoftには、企業向けサービスとして積み上げてきた信頼資産がある。その強みを活かせる立ち位置にいるのだから、短期的な収益圧力に引っ張られた機能の付け替えではなく、ユーザーが「これだけの価値があるなら払う」と納得できる体験の設計で勝負してほしい。 ...