Microsoftは、Windows 11に対して長年寄せられてきた「動作が重い」「広告が多い」という批判を公式に認め、実際の改善に着手していることを明らかにした。Windows部門でVP兼テクニカルスタッフを務めるScott Hanselman氏は、SNS上で「Windowsをもっと速くできないのか」という利用者からの問いに対し「Yep. On it.(そうだね、対応中だ)」と即答。Windows担当上級副社長のPavan Davuluri氏が主導する軽量化プロジェクトの成果は、すでに一部のPCへの配信という形で表れ始めている。
きっかけは「隠しトラッキングサービス」疑惑の火消し
発端は、X(旧Twitter)上で拡散した「MicrosoftがWindows 11にPCの動作を遅くする隠しトラッキングサービスをこっそり追加した」という投稿だった。Hanselman氏はこの誤解を解く過程で「速くする気はあるのか」と問われ、迂遠な言い訳をせずに「対応中」と即答した。Windows Latestが報じたこのやり取りは、経営幹部クラスの人物が公の場で改善の進行を裏付けた事例として注目を集めている。
背景には、今年3月にDavuluri氏が表明した大型アップデート方針がある。File Explorerの高速化、Copilot統合の縮小、メモリ使用量の削減を柱とするこの方針は、数年にわたる利用者の不満への回答だった。それから4か月、約束の一部はすでに実装済みで、Davuluri氏は8GB RAM搭載PC以上を対象にしたメモリ最適化を「今年最大の修正」と位置づける。
具体的に何が変わったか——4つの改善ポイント
今回明らかになった改善は、大きく4つに整理できる。
1つ目は「Low Latency Profile」と呼ばれるスケジューラーレベルのCPUブーストだ。6月に全PCへ展開されたこの機能は、スタートメニューや検索など主要なシェル操作を行った際に、CPU使用率を上げずに1〜3秒間だけ最大クロック周波数まで引き上げる仕組みで、特にローエンド・旧世代のハードウェアで体感差が大きい。導入当初は「アクセルを踏み込んでいるだけ」と批判する声もあったが、Hanselman氏は「macOSやLinuxも同様の手法を採用している」と反論しており、今回の一連の高速化施策の先触れだった。
2つ目はRAM使用量の最適化だ。メモリ消費の増大はMicrosoft自身が失敗と認めている課題で、2026年末までに8GB RAM以上のPCへの最適化を完了する方針を掲げている。この方針転換を裏付けるように、Microsoftは32GBのRAMを推奨するとしていた過去のドキュメントを削除した。
3つ目はUIフレームワークの刷新である。メモリ削減の多くは、Windows shellの一部をより軽量なネイティブUIフレームワーク「WinUI」に置き換える作業で実現しており、従来のWin32や、リソース消費の大きいWebView2ベースのコードを段階的に置き換えている。
4つ目は広告の削除で、検索(Search)、ウィジェット(Widgets)、フォトアプリ(Photos)が対象に含まれる。
Windows Latestは、これらの改善が加速した背景としてAppleの新型ノートPC「MacBook Neo」の存在を挙げている。競合ハードウェアの性能・軽快さが比較対象として意識されたことが、Microsoftを動かした要因の一つだという見立てだ。OSベンダーの意思決定が市場からの外圧によって動くという構図は、プラットフォームビジネスではめずらしくない。
実務への影響
日本の企業IT担当者にとって、この動きは2つの意味を持つ。
1つ目はPC調達・リプレース計画への影響だ。Windows 11の推奨メモリ要件をめぐっては32GB RAM搭載機への刷新を検討していた現場もあるはずだが、Microsoftが8GB RAM環境への最適化を明言し、該当ドキュメントまで削除したことで、既存の8GB〜16GBクラスのPCを延命しやすくなる可能性がある。ハードウェア更新のロードマップを見直す材料になるだろう。
2つ目はエンドユーザー体験の改善だ。Low Latency Profileのようなスケジューラーレベルの改善は、企業側で特別な設定変更をしなくても自動的に恩恵を受けられる。ヘルプデスクへの「PCが重い」という問い合わせが減る可能性があり、地味だが実務上のインパクトは小さくない。
一方で、今回の一連の対応は本来であればWindows 11の発売時点で備えているべきだった改善でもある。5年近くかけて重くなっていったOSを、外部からの指摘や競合の存在をきっかけに立て直している構図であり、評価すべき前進ではあるが、今後も継続的な検証が必要だ。IT管理者としては、Windows Insider ProgramのCanaryチャンネルやリリースノートを定点観測し、自社の展開スケジュールに反映させる運用が引き続き有効だろう。
出典: この記事は Microsoft admits Windows 11 needs to be faster and drop ads, and some fixes are already shipping の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。