GoogleとMicrosoftが、それぞれのブラウザ「Google Chrome」「Microsoft Edge」に組み込んだオンデバイスAI機能について、Windows 11環境でのダウンロード条件として最大20GBの空き容量を要求する仕様変更をヘルプドキュメントに追記していたことが、Neowinの報道で明らかになった。大々的な発表ではなく、サポートページの記述変更という形での告知だった。

何が変わったのか——ヘルプ文書に追記された「20GB」

GoogleはGoogle Helpのドキュメントを更新し、Chromeに搭載されたオンデバイスAI機能「Optimization Guide On Device Model」(Gemini Nanoベース)のダウンロード前提条件として、約20GBの空き容量が必要だと明記した。Microsoftも同様に、Edgeのドキュメントで20GB以上の空き容量に加えて、5.5GB以上のVRAM(ビデオメモリ)が必要と説明している。いずれも「なぜ20GBなのか」という理由までは明示していない。

なぜ20GBも必要なのか——実際のモデルは4GB前後

手がかりになるのが、今年5月に話題になった一件だ。Chromeが条件を満たすPCに対し、約4GBのGemini Nanoモデル(weights.binというファイル)をユーザーの明示的な同意なく自動ダウンロードしていたことが判明し、批判が集まった。この経緯を踏まえると、今回追記された「20GB」はモデル本体のサイズではなく、ダウンロード・展開・一時ファイルの保存までを含めた作業領域として求められる「事前チェックの閾値」だと考えられる。実際にディスクに恒久的に残るのは数GB程度で、20GBはあくまでダウンロードを開始してよいかどうかの判定ラインという位置づけだ。

Edge側の詳細——Canary/Dev限定、VRAM要件、自動削除の仕組み

Edgeの20GB要件は、実験段階にある「Prompt API」に紐づく機能で、対象はEdge CanaryおよびDevチャネルに限られる。Webサイトや拡張機能がローカルAI推論を呼び出すAPIを利用したタイミングで、Phi-4-mini系のオンデバイスモデルがバックグラウンドでダウンロードされる仕組みで、Stable版の全ユーザーに一律展開されているわけではない。また、空き容量が10GBを下回ると、他のブラウザ機能に支障が出ないようモデルを自動的に削除する仕組みも用意されている。

無効化・制御の方法

Chromeでは chrome://flags から「optimization-guide-on-device-model」と「prompt-api-for-gemini-nano」を無効にすることでダウンロードを止められる。組織管理下のPCであれば、Chrome Enterpriseポリシーとして HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Policies\Google\ChromeGenAILocalFoundationalModelSettings を作成し、値を1(Disallowed)に設定すれば一括で抑止できる。Edgeにも同名のポリシーが用意されており、グループポリシーやレジストリ、Intuneの管理用テンプレート経由で設定可能だ。無効化すると、既にダウンロード済みのモデルも削除される。5月の騒動を受けて、Microsoftはこの自動ダウンロードをブロックするレジストリ修正をWindows 11向けに公式提供した経緯もある。

実務への影響

日本企業の法人PCはSSD256GB構成が主流で、OSや業務アプリ、ブラウザキャッシュだけでも空き容量が逼迫しがちな環境は少なくない。20GBという数字が実際のダウンロードには直結しないとしても、ユーザーが気づかないうちにストレージ使用量の監視対象が一つ増えることには変わりない。

IT管理者は、Chrome EnterpriseポリシーとEdgeのグループポリシー(Intune配下であれば管理用テンプレートまたはデバイス構成プロファイル)の両方で GenAILocalFoundationalModelSettings を統一的に設定し、意図しないAIモデルのダウンロードを組織全体でコントロールしておくのが無難だ。ストレージに余裕のない端末を使う個人ユーザーも、chrome://flagsedge://flags から機能を無効化しておくか、定期的にディスク使用量を確認する習慣を持っておきたい。

オンデバイスAI自体は、クラウドに頼らずローカルで推論できる利点があり、方向性としては理解できる。ただし、ストレージへの影響を利用者が把握しないまま自動的に有効化される設計は、今後も同種の「静かな仕様変更」を生みやすい。設定ドリフトの監視や資産管理の仕組みに、ブラウザのAI機能関連ポリシーもあらかじめ組み込んでおくと、次に同じような変更が来たときに慌てずに済む。


出典: この記事は Google Chrome, Microsoft Edge could quietly download up to 20GB AI models on Windows 11 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。