Microsoftは2026年7月1日から、法人・政府機関向けMicrosoft 365ライセンスの価格を世界的に引き上げる。対象は法人向け9SKUのうち7つで、値上げ幅はプランによって5%から33%に達する。Microsoft 365・Copilot担当CVPのニコール・ハースコウィッツ氏は、この1年間で1,100を超える新機能を追加したことを値上げの理由として説明している。

値上げの中身:プランによって幅は5%〜33%

USD建てでは、法人向け9SKUのうち7つが値上げ対象となる。日本企業がよく契約する主要プランで見ると、Business Basicが約17%、E3が8.3%、E5が5.3%の値上げとなる見込みだ。一方でBusiness PremiumとOffice 365 E1の価格は据え置かれる。

政府機関向けプランも同様に値上げされる。M365 E3/G3系は8%、E5/G5系は5%の値上げとなり、O365 E3/G3系は13%の値上げ(2026年7月に10%、2027年にさらに3%)が予定されている。なお個人向け(コンシューマー)プランの価格は今回は据え置きで、値上げはすでに1月に実施済みだ。

何と引き換えの値上げか:セキュリティとCopilotの強化

Microsoftが挙げる値上げの根拠は、この1年で追加された機能群だ。目立つのは次の2点である。

  • Microsoft Defender for Office Plan 1がM365/O365 E3に標準搭載:メールやTeams・SharePointなど協業アプリに対するフィッシング・マルウェア対策が強化される
  • Microsoft Security CopilotがM365 E5に追加:エージェント型のセキュリティ運用ツール群で、今後数か月かけて順次展開される

このほか、メールストレージの50GB増量、Outlook・OfficeアプリでのURLチェック機能、Intuneの機能強化なども対象プランごとにMicrosoftのブログで公開されている。

実務への影響

日本企業にとってもまず影響するのは、契約更新タイミングでの予算だ。円建て契約でも同水準の値上げが適用される見込みのため、E3・E5を多数契約している企業ほどインパクトは大きい。

情シス担当がやるべきことは値上げ幅の確認だけではない。「上位プランに自動的に付与される機能」を棚卸しし、実際に自社で使う機能かどうかを精査することだ。特にDefender for Office Plan 1が標準搭載されることで、これまで個別に契約していた同等のメールセキュリティ製品と機能が重複する可能性がある。ライセンス監査のタイミングでの解約・統合によって、値上げ分を相殺できるケースもあるはずだ。

Security Copilotの追加は、SOC(セキュリティ運用センター)業務のエージェント化が今後さらに進むことを示している。E5契約企業は、導入前に自社のセキュリティ運用のどの部分をエージェントに任せられるかを検討しておく価値がある。

筆者の見解

今回の値上げ自体は驚くようなものではない。Microsoftはこの数年、Copilotを中心に矢継ぎ早に機能を投入してきており、そのコストを利用料に転嫁するのは自然な流れだ。ただしIT管理者として見るべきは「1,100以上の新機能」という数字そのものではなく、自社が実際に使う機能がどれだけ含まれているかだろう。

Microsoft 365は本来、統合して使うことで価値が最大化されるプラットフォームだ。Defender for Office Plan 1の標準搭載や50GBのストレージ増量は、既に近い機能を個別契約している企業にとっては実質的な統合メリットになりうる。一方でSecurity CopilotのようなE5限定の高度な機能を使いこなせない組織にとっては、値上げ分がそのまま「使わない機能への課金」になってしまう。部分最適の寄せ集めではなく全体最適の設計として使い切れるかどうかが、この値上げを納得して受け入れられるかどうかの分かれ目になる。

Security Copilotについて言えば、エージェント型のセキュリティ運用という方向性そのものは正しい。ただしCopilotブランドの機能は、これまで期待値と実際の完成度にギャップがある場面を筆者は何度も見てきた。セキュリティ領域への展開は、これまで以上に実運用での効果検証が問われる分野だ。せっかく対応範囲を広げているのだから、現場での評価が追いつかないのはもったいない。正面から実力で評価される機能に育て上げてほしいと、応援する立場から思う。

Copilot全般についても、Teamsの議事録作成やOutlookの定型業務の効率化には十分実用的だ。ただし高度な分析や創造的なタスクまですべてCopilotに閉じるのではなく、Copilotの隣にAzure AI Foundry経由の他モデルという選択肢を併用できる体制を整えておくことが、値上げされたライセンスを最大限に活かす現実的な構えだと筆者は考える。


出典: この記事は Microsoft 365 is hiking prices for businesses – here’s how much it will cost you の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。