OpenAIは7月9日、新モデル群「GPT-5.6」と新エージェント機能「ChatGPT Work」を発表し、これまで単独のデスクトップアプリだった「Codex」を新しいChatGPTクライアントに統合した。同じ日、MicrosoftもWord・Excel・PowerPoint・Copilot Chat・CoworkなどMicrosoft 365 Copilot全体の既定モデルとしてGPT-5.6を採用すると発表しており、OpenAIは一日でChatGPT本体とMicrosoft 365という二つの主戦場に同時に手を打った形だ。
GPT-5.6は「Sol・Terra・Luna」の3階層
新モデル群は用途別に3段階に分かれる。最上位の「Sol」はフラッグシップモデル、「Terra」は日常業務向けに性能とコストのバランスを取ったモデル、「Luna」は速度とコストを優先した軽量モデルだ。1つのモデルをすべての用途に使うのではなく、タスクの重さに応じてモデルを使い分ける設計はAzure OpenAI Serviceのモデル選択とも通じる考え方で、日本企業にも馴染みやすい。
ChatGPTが「Chat・Work・Codex」の3入口に再編
今回の目玉は、2月にリリースされたCodexデスクトップアプリが新しいChatGPTデスクトップクライアントに統合され、「Chat」「Work」「Codex」という3つの並列入口になったことだ。既存のChatGPTデスクトップアプリは「ChatGPT Classic」に改称された。役割分担は明確で、Chatは質問・検索・雑談などの短い対話、Codexはコード記述・デバッグ・テスト実行・変更レビュー・リポジトリ管理、そして新設のWorkはアプリやファイルを横断的に呼び出しながら数時間単位で作業を継続し、目標をドキュメント・スプレッドシート・プレゼン資料・Webサイトに落とし込むエージェントとなる。Codexで実証してきた「タスクを理解し、ツールを呼び、結果を確認し、成果物を届ける」という一連のループを、コード以外の一般業務にまで広げた格好だ。中国でもTencent・Alibaba・ByteDanceが同様の設計で自社のオフィス向けAIエージェント製品を相次いで刷新しており、プログラミング支援エージェントが自律的な業務エージェントへと拡張していく流れは世界的な潮流になりつつある。
同じ日にMicrosoft 365 CopilotもGPT-5.6採用
Microsoft Copilot and Agents Core担当のNitin Agrawal氏とOpenAI API Products担当のNikunj Handa氏が連名で発表した通り、GPT-5.6はOpenAI API経由でMicrosoft 365 Copilotに組み込まれる。ChatGPT側の再編と同じ日に発表されたのは偶然ではなく、OpenAIがコンシューマー向けとエンタープライズ向けの両輪でモデルの存在感を広げようとしていることの表れだろう。
実務への影響
Microsoft 365 Copilotを使う日本の現場にとっては、特別な作業をしなくてもWord・Excel・PowerPointの裏側のモデルがGPT-5.6に切り替わる点がまず重要だ。一方でChatGPTを直接使う開発者やIT管理者は、「資料を作って」「調査してまとめて」といった依頼をWork入口に任せることで、これまでChatとCodexの間で手作業だった橋渡しを減らせる可能性がある。特にIT部門がドキュメント整備や定型レポート作成にAIエージェントを組み込む際は、目的を渡せば数時間単位で成果物まで仕上げる「自律型」の設計思想を前提に業務フローを見直す価値がある。
筆者の見解
Microsoft 365 CopilotがGPT-5.6をいち早く既定モデルに採用した機動力は、MVPとして応援する立場から素直に評価したい。モデルの差し替えだけでここまで速く動けるのは、OpenAIとの連携体制がそれなりに機能している証拠だ。ただし本質的な勝負どころはモデルの入れ替えではなく、Copilotという体験そのものにある。ChatGPT Workが示したのは「目的を渡せば数時間仕事をやりきる」自律型エージェントの方向性であり、確認と承認を人間に求め続ける副操縦士型の体験のままでは、いくらモデルを最新化しても真価を発揮しきれない。Copilotが正面から勝負できる実力を持っているのは間違いないのだから、モデル刷新をきっかけに体験設計そのものも自律型へ踏み込んでほしい。
出典: この記事は OpenAI Unveils New Professional Application Scenarios for Codex: Exploring Innovative Value Beyond Code Generation の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。