AI画像・動画生成ツールで知られるMidjourneyが、人気占星術アプリ「Co-Star」の買収を発表した。米Engadgetが2026年7月24日(現地時間)に報じたところによると、Co-StarのCEOであるBanu Guler氏はMidjourneyの新設ポストであるChief Design Officer(最高デザイン責任者)に就任する。アプリの運営はGuler氏の「完全なコントロール下」に置かれるとしており、Midjourneyのリソースを背景にサービスを継続していく方針だ。

なぜこの買収が注目か

Midjourneyはこれまで、テキストから画像・動画を生成するAIツールのメーカーとして知られてきた企業だ。占星術アプリという、一見畑違いの領域への進出は単発の思いつきではなく、同社が「画像生成ツールの開発・ライセンス提供」という枠を超えて事業を広げようとする一連の動きの一つと見るべきだろう。実際、Midjourneyは2026年6月にも「Midjourney Health」という新部門を立ち上げ、全身用の超音波スキャナーの開発に着手したことを明らかにしている。画像生成AIで得た成功を土台に、ヘルスケアや占星術といった「人間の内面や身体を読み解く」領域へ資源を投じる姿勢が鮮明になってきた。

Guler氏はX(旧Twitter)への投稿で、今回の買収をMidjourney創業者David Holz氏との個人的な友情の延長と説明し、「コンピュータは、自分が何を意味し、何を感じ、何を想像しているかを、言葉にする前に映し出してくれる道具になり得る」という共通の信念があったと述べている。

海外メディアの報道ポイント

Engadgetは今回の買収を報じた記事の見出しに、「Co-Starのユーザーが手放しで歓迎するとは限らない」というニュアンスを込めている点が興味深い。Co-Starは米国の若年層の35%、ダウンロード数にして数千万件規模に達しているとGuler氏自身が明かしており、決して小さなサービスではない。一方で占星術アプリは個人の内面や心理状態と密接に結びつくサービスであり、その運営元がAI企業に変わることへの心理的な抵抗感は無視できない、という論調がにじむ。

さらにEngadgetは、2026年4月に発表されたGallup社の調査結果も合わせて紹介している。1997年〜2012年生まれ(14〜29歳)のいわゆるZ世代では、生成AIに対して「興奮している」と答えた割合が14ポイント減の22%、「期待している」が9ポイント減の18%に落ち込む一方、「怒りを感じる」は9ポイント増の31%に上昇したという。Co-Starの主要ユーザー層とAIへの不信感が強まっている世代が重なる点が、今回の買収の受け止められ方を複雑にしている。

日本市場での注目点

Co-Starは米国の西洋占星術文化を前提に設計されたアプリであり、日本向けのローカライズや正式なサービス展開は現時点で発表されていない。日本の占いアプリ市場は「LINE占い」や各種タロット・血液型占いアプリなど独自の生態系がすでに確立しており、Co-Starがそのまま参入しても文化的な変換コストは小さくないだろう。

むしろ日本のエンジニア・ビジネスパーソンにとって注目すべきは、「画像生成AI企業」であるMidjourneyが、コア事業と直接関係のない個人データ(誕生日・出生時刻・出生地といった占星術に必須の情報)を扱う事業に踏み込んだという構図そのものだ。日本でも生成AI各社がヘルスケアやライフログ領域へ広がる動きは今後増えると見られ、個人の機微情報をAI企業がどう扱うかは、本国でのサービス展開を待たずに日本のユーザーにも影響し得るテーマとして注視する価値がある。

筆者の見解

AI企業が自社の得意領域から離れて多角化するケースは、今後も増えていくはずだ。判断基準として重要なのは「技術的にできるか」ではなく、「ユーザーの信頼を損なわずに全体最適な体験を提供できるか」だと考えている。今回のケースでは、占星術という個人の内面に踏み込むサービスを、画像生成AIで培った技術基盤の上に乗せようとしているが、Gallup調査が示す通りZ世代のAIへの不信感はむしろ強まっている。多角化そのものを否定する必要はないが、「禁止」ではなく「安心して使える設計」を先に固めてから展開する順序が欠かせない。ユーザーが公式に提供された仕組みを一番便利で安全だと感じられる状態を作れなければ、多角化は逆にブランドへの信頼を目減りさせるリスクを抱える。

日本のエンジニアにとっても、生成AIの話題をただ追いかけるだけでなく、「AI企業の事業拡張がどこまで個人データに踏み込むか」を実務の視点で見極める習慣が、今後さらに重要になっていくだろう。


出典: この記事は Midjourney is buying horoscope app Co-Star, which users will surely be thrilled about の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。