マイクロソフトは2026年6月、InfoComm 2026にあわせてMicrosoft Teamsの通話機能をアップデートし、部署やチーム宛の着信にAIが自動応答する「Teams Phone Agent」を発表した。あわせて、コールキューでの通話を自動録音・文字起こしし、SharePointに保存する機能が7月中旬から順次利用可能になるほか、会議中に発言者の映像を優先表示する新しいレイアウトも追加される。

Teams Phone Agentは何を自動化するのか

Teams Phoneにはこれまでも、着信を担当者や部署へ振り分ける「自動応答(Auto Attendant)」や「コールキュー」といった機能があった。ただしその実体は番号選択が中心のIVR(音声応答システム)で、利用者が番号を押したり定型的な発話をしたりして初めて処理が進む仕組みだった。

今回のTeams Phone Agentは、この一次対応の窓口そのものにAIエージェントを立たせる発想に近い。着信内容を理解したうえで簡単な質問に答えたり、適切な担当者へつないだりする役割をAIが担う。ヘルプデスクや代表電話、店舗・拠点の問い合わせ窓口のように、定型的なやり取りが多いが人手を割きたい業務との相性がよい。

コールキューの録音・文字起こしがSharePoint保存に対応

もう一つの目玉が、コールキューでの通話を自動的に録音・文字起こしし、SharePointに保存する機能だ。7月中旬から段階的に提供される。これまで通話記録の保存・検索は個別設定や外部ツールに頼る場面も多かったが、Teams標準機能として文字起こしまで一貫して行われることで、応対品質のレビューやトラブル発生時の経緯確認がしやすくなる。

発表者映像を優先する新レイアウト

会議中のレイアウトにも変更が入り、発言中の参加者の映像を大きく優先表示するモードが追加された。画面共有中心の会議でも「誰が話しているか」が視覚的にわかりやすくなる。

実務への影響

日本企業の情シスやコンタクトセンター運用担当にとって、この発表は「Teams PhoneをPBX代替として本格運用する」判断材料が一つ増えたことを意味する。代表電話やコールセンターの一次対応をAIに任せられるなら、Teams Phone Systemの導入・拡張を検討する動機になるはずだ。

一方で注意したいのは、通話録音がSharePointに保存されるという点だ。個人情報や商談内容を含む録音がドキュメントライブラリに蓄積されることになるため、保持ラベル(保持ポリシー)、アクセス権限、外部共有設定を事前に設計しておく必要がある。「録音機能が使えるようになった」ことと「安全に運用できる状態にある」ことは別問題であり、導入前にコンプライアンス部門と権限設計を詰めておきたい。

筆者の見解

電話応答という反復性の高い定型業務にAIを充てるという方向性は、素直に正しい打ち手だと思う。人間が対応すべきは例外処理や高度な相談であり、一次対応をAIに任せて人手を空けるという設計思想は、これまでもMicrosoft 365全体で語られてきた「定型業務はAI、判断業務は人間」という流れに沿っている。

ただし、Copilotを含むMicrosoft製AI機能全般については、ここ数年、期待したほどの体験に届かない場面が少なくなかったのも正直なところだ。そこはもったいないと感じている。だからこそ、Teams Phone Agentのような「業務プロセスに埋め込まれた定型AI」は、Microsoftが本来強みを発揮できるはずの領域だと思っている。統合プラットフォームとしての厚みと企業導入実績があるMicrosoftには、正面から勝負できる力があるのだから、応答品質やエスカレーション設計を丁寧に磨き込み、コールセンター品質のAI対応として恥じない水準まで仕上げてほしい。

もう一点付け加えるなら、こうした音声AIエージェントは「Copilotだけに閉じない」設計を意識すべきだと考えている。定型応対はTeams Phone Agentに任せつつ、より複雑な問い合わせ分析やナレッジ整備には外部の生成AIを組み合わせる併用構成も選択肢に入れておくと、将来の要件変化にも柔軟に対応できるはずだ。


出典: この記事は What’s New in Microsoft Teams | June 2026 – InfoComm Edition の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。