米シリコンバレーで2026年8月4日から6日にかけて、次世代メモリとストレージの動向を占う国際イベント「フューチャー(オブ)メモリアンドストレージ(FMS: the Future of Memory and Storage)」が開催される。PC Watchの連載「福田昭のセミコン業界最前線」が伝えたところによると、キオクシア、Samsung Electronics、SK hynix、Micron Technology、Sandiskという半導体メモリの大手5社がそろって基調講演に登壇する、業界屈指の規模のイベントになる見通しだ。

なぜFMS 2026が注目か

FMSはもともと2006年に「フラッシュメモリサミット(Flash Memory Summit)」として始まり、NANDフラッシュメモリやSSD、USBメモリなどフラッシュストレージ関連技術を扱う専門イベントだった。2024年にカバー範囲をDRAMやHBM(High Bandwidth Memory)、CXL(Compute Express Link)、コンピューティングインメモリ、演算機能内蔵ストレージへと拡大し、現在の名称に改称。半導体メモリ全般を扱い、「AI時代の近未来」を占う場へと性格を変えてきた。

今年はさらに運営主体の交代という節目を迎える。2026年3月、育ての親であるConference Conceptsから、英国のイベント運営会社Terrapinnへと権利が譲渡された。ウェブサイトやアプリの刷新など利便性向上が進む一方、過去の講演スライドPDFアーカイブへのアクセスができなくなるなど、移行に伴う混乱も見られるという。

基調講演に見る業界の勢力図

基調講演にはDRAM大手3社とNANDフラッシュ大手5社(うち3社はDRAM勢と重複)が顔をそろえる。登壇順はキオクシア(および米国法人KIOXIA America)、Samsung Electronics、SK hynix、Micron Technology、Sandiskで、SSDコントローラ大手やストレージ向けソフトウェア企業、3次元メモリ開発企業も講演を行う。

初日(8月4日)の一般講演セッションは「AI & ML Applications」「Computational Storage」「CXL」「Flash Technology」など9本が同時並行で進行し、夕方にはDRAM技術の最新動向や、量子計算・AI推論向け次世代メモリをテーマにしたワークショップが控える。会期を通じて、AIインフラを支えるメモリ階層――DRAM・HBM・CXL・演算機能内蔵ストレージ――が主役に躍り出ていることがうかがえる構成だ。

日本市場での注目点

基調講演のトップバッターを務めるのが日本のキオクシア(旧東芝メモリ)であることは、日本の半導体産業にとって見逃せないポイントだ。Samsung、SK hynix、Micron、Sandiskという世界的な競合と同じ舞台で、技術の方向性を示すことになる。

FMSで扱われるHBMやCXL、演算機能内蔵ストレージの動向は、AIサーバー向けメモリの価格や供給に直結し、いずれ国内のAI PCやデータセンター投資のコスト構造にも波及する。NANDフラッシュの技術ロードマップはSSDの価格動向にも関わるため、エンジニアだけでなく一般消費者にとっても、今回の基調講演で示される各社の方針は中長期的に無関係ではない。

筆者の見解

今回のFMS 2026が象徴しているのは、AIの主戦場がモデルやアプリケーション層だけでなく、それを下支えするメモリとストレージのインフラ層にも確実に広がっているという事実だ。AIエージェントが人間の逐一の確認を待たずに自律的にタスクをこなし続ける――いわゆるハーネスループ的な使われ方――が今後当たり前になっていくとすれば、その裏側では大量の推論処理を24時間支え続けるHBMやCXL、演算機能内蔵ストレージのような基盤技術が不可欠になる。

華やかなAIエージェントの話題に比べると地味に映るかもしれないが、キオクシアのような日本企業がこの領域で世界の大手と同じ土俵に立ち続けていること自体、日本のIT産業にとって数少ない明るい材料だ。派手なアプリケーション競争だけでなく、こうしたインフラ側の動向にも目を配っておくことが、AI時代を正しく理解するうえで欠かせないと感じる。


出典: この記事は 【福田昭のセミコン業界最前線】キオクシアらがAI時代のメモリとストレージを展望。次世代メモリの祭典「FMS 2026」 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。