米連邦通信委員会(FCC)は現地時間7月20日、DJIの技術を米国の外国製ドローン規制の網の外へ持ち出そうとしているとみられる「フロント企業」に対し、既存製品の輸入・流通・販売そのものを遡及的に禁止する手続きに着手したと発表した。The VergeのSean Hollister記者が報じた。対象はドローンブランド「Skyrover」やカメラブランド「Xtra」など計9社で、いずれもDJI製品と酷似した製品を米国市場に投入してきた企業だ。

なぜこの規制強化が注目か

FCCは昨年10月、一度承認した機器の認可を後から取り消せる「遡及的禁止」の権限を自らに与えていた。今回はその権限を初めて実際に行使しようとする試金石にあたる。2週間前にはSkyroverとXtraの背後にいる8社に対し2万5000ドルの罰金を提案したばかりだったが、今回はそれを大きく上回り、対象企業がドローンやカメラを輸入・流通・マーケティング・販売する行為そのものを禁じる内容に踏み込んだ。Xtra版のDJI Osmo Pocket 3にあたる「Xtra Muse」は、Amazonで翌日配送も可能な現行製品であり、禁止が発効すればこうした主要ECサイトや自社サイトから姿を消し、企業側は倉庫在庫の償却を迫られる可能性がある。

海外メディアの報道ポイント

The Vergeによると、対象となるのはCogito Tech、Fixaxo Technology、Lyno Dynamics、Skyhigh Tech、Spatial Hover、SZ Knowact、WaveGo Tech(後者2社はSkyroverの運営元)、Xtra Technology、そして農業用ドローンブランドのXAGの9社。XAG以外はFCCからの情報提供要請に一切応じておらず、対象企業の大半は研究者Konrad Iturbe氏が独自に「FCCフロント企業」を追跡した調査によって特定されたという。FCCは同日、これらの製品の認証を後押ししていた中国の試験機関SGS-CSTC深センとの関係も打ち切ると発表している。

一方でHollister記者は、FCCの姿勢に留保も示している。FCCは今回「国家安全保障上の懸念」があると“暫定的に結論づけた”としつつ、30日間のパブリックコメントを募集し「具体的な証拠」があれば見直すとするが、同記者は過去にFCCがネット中立性を巡るパブリックコメントを事実上無視したり、サイバー攻撃を巡って虚偽の説明をしたりした前例があると指摘する。外国製ドローンが安全保障上の脅威だとする具体的な公開証拠は、米政府からこれまで一度も示されていない点も強調されている。また「認可コード(グランティーコード)を一時的に留保した」という表現についても、元FCC職員が「聞いたことがない言い回し」と証言しており、実際の意味は明確にされていない。

日本市場での注目点

SkyroverやXtraは米国市場向けにDJI製品の外観・仕様を模した廉価ブランドとして展開されており、日本国内で正規に流通しているわけではない。したがって今回の規制が日本の消費者に直接影響することはないが、示唆は小さくない。日本ではDJIの正規品(Mini 4 ProやOsmo Pocket 3など)が家電量販店やAmazon.co.jpで通常どおり購入でき、米国のような安全保障目的の禁輸措置は取られていない。米中対立を背景にした規制が「本家DJI製品」だけでなく「そっくり製品を売る第三者ブランド」まで対象を広げている点は、輸入ドローンや監視カメラを巡る規制論が日本で持ち上がった際の先行事例として参考になるはずだ。価格面では、DJI Osmo Pocket 3は国内でも6万円台から購入可能で、今回の一件は正規ルートで購入することの価格・供給両面での優位性を改めて浮き彫りにした。

筆者の見解

今回のFCCの動きを見て感じるのは、「禁止すれば解決する」という発想の危うさだ。SkyroverやXtraのような迂回ブランドが生まれたこと自体、外国製ドローンを一律禁止する規制が安全保障上の懸念を根本から解消せず、単に供給ルートを複雑化させただけだったことの証左と言える。禁止アプローチは往々にして抜け道を生み、かえって実態把握を難しくする。本当に必要なのは、ユーザーが公式で透明性のあるルートを選ぶことが一番合理的だと感じられる仕組みづくりのはずだ。

日本のエンジニアや消費者にとっての教訓もシンプルだ。奇をてらった迂回ブランドや出所不明の類似品に手を出すより、サポートや部品供給が安定している正規ルートを選ぶという「道のド真ん中を歩く」判断が、結局は一番安全で再現性が高い。今回のニュースは、規制動向そのものを追いかけることよりも、購入前に流通経路と正規性をきちんと確認する習慣の大切さを改めて示してくれた。

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出典: この記事は The FCC is planning to retroactively ban disguised DJI gadgets の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。