Hachette Book Group、Cengage Learning、Elsevierの出版大手3社と作家スコット・トゥロー氏が、Google社の生成AI「Gemini」の学習データ利用を巡り、集団訴訟の提起を目指していると米Engadget(記者Anna Washenko氏、2026年7月14日付)が報じた。著作権で保護された作品を許可なく学習に使用したとして、Googleに対する損害賠償を求める内容だ。
訴状が指摘する2つの争点
訴状は、Googleが著作権法違反であると認識しながら数百万点の著作物を無断で複製し、著者や出版社への補償を一切行わなかったと主張している。さらに「Googleは学習元を隠すため、著作物からCMI(著作権管理情報)を意図的に剥ぎ取った」とも訴えている。
もう一つの争点は、Geminiの出力そのものだ。訴状は「適切なガードレールがなければ、Geminiは学習元の著作物の代替品となり得る出力を生み続ける」とし、Googleがそうした模倣的な出力を防ぐ有効な仕組みを実装してこなかったと批判している。
広がるAI業界への著作権訴訟の波
同様の原告グループは、すでにMeta社に対しても集団訴訟を起こしている。著作権侵害を理由にした訴訟がAI企業側の敗北に直結した例はまだ少なく、Meta関連の著者側の訴えは昨年不発に終わった。一方Anthropic社は2025年、Claudeの学習データを巡る訴訟で15億ドルの初期和解に達したが、担当判事が「完成にはほど遠い」として和解案を却下している。Apple社に対しても、別の作家2名が無断学習を理由に提訴するなど、出版・著作業界からの追及は業界全体に広がりつつある。
日本市場での注目点
米国では著作権侵害の立証や損害額の算定を巡って訴訟が長期化しやすく、今回のGoogle提訴も決着までには時間がかかると見られる。日本には「非享受目的」のAI学習を原則適法とする著作権法30条の4があり、米国とは法制度の前提が異なる。ただし、生成AIが学習元コンテンツの代替品になり得るという論点自体は日本の出版・コンテンツ業界にも共通する懸念であり、海外の判例や和解動向は今後の国内議論の参考材料になる。
筆者の見解
AI企業と著作権者の攻防は、今回に限らず今後も続くだろう。ただ、訴訟による決着だけを待つのは双方にとって得策ではないはずだ。禁止や差し止めで学習データの利用を止めても、AI企業はどこかから同じデータを調達し続けるだけで、根本的な解決にはならない。むしろ必要なのは、著作権者が安心してコンテンツを提供でき、AI企業も正規のルートでデータを調達できる「安全に使える仕組み」——ライセンス市場や補償の枠組みを業界標準として整備することだ。音楽業界が違法配信との戦いの末に定額配信という仕組みにたどり着いたように、AI学習データも同じ道を歩む可能性は十分にある。日本の企業がAI活用を本格化させる上でも、学習データの出所や権利処理が明確な製品を選ぶという視点は、今後ますます重要になっていくだろう。
出典: この記事は Three publishers challenge Google over AI copyright infringement の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。