Anthropicは7月13日(現地時間)、対話型AI「Claude」が会話の中で示す価値観がモデルや言語によってどのように変化するかを定量化した調査結果を発表した。PC Watchの竹元かつみ氏がこの内容を報じている。約30万9815件の実際のClaude.ai会話を分析した本調査は、「同じ相談でも使う言語によってAIの応答姿勢が変わる」という、生成AIを日常的に使うユーザーの体感を裏付けるものとして注目を集めている。

339種類の価値観を4つの軸に圧縮

調査のベースになったのは、Anthropicが過去に実施した先行研究「Values in the Wild」で特定した3307種類の価値観だ。今回はこれを339種類に整理し、プライバシー保護分析ツール「Clio」を用いて、3モデル×主要20言語の組み合わせごとに約5000件、合計30万9815件の会話を分析。価値観の現れ方を次の4軸に圧縮して定量化した。

  • 従順さ 対 慎重さ
  • 温かさ 対 厳密さ
  • 深さ 対 簡潔さ
  • 率直さ 対 遂行

モデルごとの"キャラクター"が数値で裏付けられた

結果はユーザーの体感とよく一致していた。「Claude Sonnet 4.6」は温かさとユーザーへの従順さに傾く一方、「Claude Opus 4.7」は慎重さと深さに最も強く傾き、誤った前提への反論やリスク指摘をいとわない。「Claude Opus 4.6」は要点に直行する簡潔さが際立つという。これまで主観的に語られてきたモデルごとの"性格"の違いが、軸上の位置として数値で示された形だ。

言語間の差はモデル間より大きい

さらに注目すべきは、モデル間の差よりも言語間の差の方が大きかった点だ。温かさに最も傾くのはヒンディー語とアラビア語で、丁寧な言葉遣いやユーモア、アイデアへの肯定的な反応が目立つという。逆に英語とロシア語では、前提を疑い根拠を求める厳密さが強まる傾向が見られた。同じ事業計画への意見を求めても、尋ねる言語によって受け取る印象が変わりうるということだ。

なお、この差が学習データの偏りに由来するのか、言語ごとの会話規範に沿った"望ましい"変化なのかは、現時点では明らかになっていない。Anthropicは、ここでいう「価値観」はあくまで応答に表れた規範的傾向であり、Claudeが内面的に価値観を持つことを意味するものではないと注記している。今後はこの測定手法をモデルの出荷前評価や運用後の継続監視に組み込む方針だという。

日本市場での注目点

今回のデータで名指しされているのは英語・ロシア語・ヒンディー語・アラビア語で、日本語がどの位置にあるかは明らかにされていない。だが国内でもClaude.aiやClaude Code、Claude API連携の業務アシスタントを日本語で使う機会は急速に増えている。Anthropicはこのところ企業向け展開も加速させており、業務利用の現場では「同じ指示でも言語によって応答の慎重さや踏み込み方が変わりうる」という前提を持っておくことが重要になるだろう。

英語圏のレビューや評価記事を読んで「Claudeはこういう性格だ」と理解しても、実際に日本語で使ったときの挙動は異なる可能性がある。プロンプトの検証やガードレール設計を行う際は、英語での評価結果をそのまま流用せず、日本語での実地確認を挟むのが安全だ。

筆者の見解

生成AIの「性格」を数値化するというアプローチ自体が、地に足のついた良い取り組みだと感じる。従来「優しい」「慎重」といった評価はユーザーの主観的な印象論に留まりがちだったが、これを4軸のスコアとして継続的に測定し、出荷前評価や運用監視に組み込む方針は、AIベンダーとしての説明責任を果たす姿勢として素直に評価したい。

一方で実務目線では、この結果を鵜呑みにせず「日本語では実際どうなのか」を自分の手で確かめる方が早い。海外の英語記事やベンチマークをいくら読み込んでも、日本語プロンプトでの挙動は結局試してみないとわからない。情報を追いかけることに時間を使うより、実際に日本語で問いかけて挙動を確認し、業務フローに組み込んで成果を出す方が今は正しい行動だと考えている。特に企業でAIエージェントを設計する際は、確認・承認を都度求める設計に頼るのではなく、言語ごとの応答傾向を踏まえた上で自律的にタスクを遂行できる設計を目指すべきだろう。


出典: この記事は Claudeの“性格”は言語で変わる。英語は厳しくアラビア語は温かい の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。