プロジェクターで知られる中国メーカーXGIMIが、あえて「カメラを搭載しない」スマートグラス「MemoMind One」を投入した。Tom’s GuideのSanuj Bhatia氏が現地レビューを公開し、Meta(Ray-Ban)やRokidなど競合の多くがカメラ機能を強化する中、逆張りとも言える設計思想に注目が集まっている。

なぜこの製品が注目か

現在のAIスマートグラス市場は、写真・動画撮影用のカメラとAIアシスタントを組み合わせるのが定番構成になっている。その代表格であるMeta Ray-Banについて、Tom’s Guideは「MetaはRay-Banを24時間稼働のAI盗聴器のような方向へ進化させようとしている」と報じており、実際にMetaはプライバシーLEDへの細工を検知するとカメラを強制的に無効化する更新まで導入したという。

XGIMI MemoMind Oneはこの流れに真っ向から逆らい、カメラを完全に排除した。代わりに同社が培ってきたプロジェクター技術を応用し、視界の前方にモノクロ・グリーンの映像を重ねるヘッドアップディスプレイ(HUD)方式を採用。通知・天気・時刻などをコンパクトに数秒間だけ表示する仕組みで、表示時間はアプリから調整できる。投影方式のため正面から見ても周囲の人にはほとんど内容が見えず、角度によってわずかに緑色の光が漏れる程度にとどまる。

海外レビューのポイント

Tom’s GuideのSanuj Bhatia氏によるレビューでは、人気製品Even Realities G2との比較を軸に評価が展開されている。

  • 良い点: G2にはないスピーカーとマイクを内蔵し、音楽再生やビデオ通話、AIアシスタントとの音声対話が可能。操作はタッチパッドではなく右テンプル下の物理ボタンで完結し、G2のような専用スマートリングも不要。Bhatia氏は「他のスマートグラスほど間抜けに見えない」とデザイン面も評価している。
  • 気になる点: Bhatia氏は「紙の上では魅力的に聞こえるが」と前置きし、実機での装着感や見え方には留保をつけている。さらに月額20ドルの「Moments」機能では、AIが日常の音声環境を常時録音・文字起こしする仕様があり、カメラを排除した設計思想とは裏腹に「別角度からの監視」になっていると指摘している。

日本市場での注目点

XGIMIは「Horizon」シリーズなどのプロジェクターで日本でも一定の知名度があるが、MemoMind Oneの日本発売時期・価格は本稿執筆時点で未発表。競合のEven Realities G2やMeta Ray-Banはいずれも数百ドル台の価格帯で展開されており、MemoMind Oneも同水準になると見られる。

日本では会議室・工場・病院など「撮影禁止」エリアが多く、カメラ非搭載という制約はむしろビジネス利用における導入障壁を下げる材料になり得る。国内でスマートグラスの企業導入を検討する担当者にとっては、カメラ搭載モデルより先に候補に挙がる可能性がある製品と言えそうだ。

筆者の見解

今回のレビューを見て興味深いのは、XGIMIが「カメラを外す」という引き算の設計でプライバシー問題に正面から向き合った点だ。AIガジェットの価値は、いかに人間の負担や不安を減らせるかにある。四六時中カメラが回っている前提のガジェットは、便利さより先に「見られているかもしれない」という心理的コストをユーザーと周囲の人間の双方に強いてしまう。その意味でMemoMind Oneのアプローチは、奇をてらわず王道を行く判断として評価できる。

一方で、月額20ドルの「Moments」で結局は音声・環境データを常時記録する仕組みを別立てで用意している点は、もったいないと感じる。カメラを外した設計思想を貫くなら、記録機能も「必要な時にだけ安全に使える」形にするべきで、常時オプトインの録音サブスクは元の思想と噛み合っていない。日本のオフィスや工場でスマートグラス導入を検討するなら、カメラの有無だけでなく、こうした周辺機能がプライバシーポリシーとどう整合するかまで含めて評価する必要があるだろう。


出典: この記事は These camera-less smart glasses are a great anti-Meta alternative, but the AI still wants to record your life の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。