Microsoft(マイクロソフト)が自社検索エンジンBingの検索結果に、Google Chromeへの乗り換えを検討するユーザー向けに自社ブラウザEdgeを推奨する比較パネルを表示していることが、SNS上での投稿をきっかけに明らかになった。「Chrome」で検索すると表示されるこのパネルは、Rewards(リワード)・VPN内蔵・AIパーソナライゼーション・「Microsoft recommended」の4項目すべてでEdgeにチェックマークを、Chromeにはバツ印をつけている。しかし実際に中身を検証すると、いずれも説得力に乏しいことがわかった。
Bingに現れた「Edge推し」パネルの正体
X(旧Twitter)に投稿されたスクリーンショットは38万回以上表示され、返信の多くは否定的な反応で埋まった。「Edgeの存在意義はChromeをダウンロードするためだけ」という定番の皮肉に加え、「Microsoftが最近まともに出したものはVS Codeだけだ」という辛辣なコメントも見られた。実際にBingで「chrome」を検索すると同じパネルが表示され、下部の「Get started」ボタンを押しても空白ページに飛ぶだけという、お粗末な実装だった。さらに皮肉なことに、そのすぐ下にはFirefoxのダウンロードリンクがスポンサー枠として表示されており、Chrome検索の主役をEdgeとFirefoxが分け合う格好になっていた。
4つの「根拠」を検証する
- Rewardsは、もうEdge専用の特典ではない。 MicrosoftはBingへのサインインをGoogleアカウントやAppleアカウントでも可能にしたと明らかにしており、Microsoftアカウントなしでも参加できる。ChromeでBingを既定の検索エンジンに設定するだけで同じ特典を得られてしまう。5月には現金100万ドルとメルセデス・ベンツ3台を賞品に据えた総額200万ドル規模のスイープステークスまで実施した一方、実際に交換できるクーポンは品切れが常態化しているという。
- 「VPN内蔵」は、実はVPNと呼べる代物ではない。 Edge Secure Networkはあるプライバシー研究者によって「Cloudflareのインフラ上で動くHTTP CONNECTプロキシに過ぎず、Edge内の通信しかトンネリングしない」と指摘されている。OS全体の通信を保護したり接続先の国を選べたりする本来のVPNとは異なり、月5GBの上限があり、NetflixやHuluは対象外とされる。
- AIパーソナライゼーションの優位性も、以前ほど自明ではない。 サティア・ナデラCEOは2023年時点でMicrosoftのAI活用がGoogleを慌てさせたと語っていたが、その差は3年経った今ほど明確ではなくなっている。
- 「Microsoft recommended」は、そもそも比較項目として成立していない。 自社が自社製品を推奨するのは当然であり、これは中立的な判断基準ではなく単なる自己言及にすぎない。
実務への影響
日本の企業でもEdgeはWindows標準ブラウザとして、Intuneやグループポリシーで既定ブラウザに設定されているケースが多い。今回の一件は、そうした導入判断とは切り離して考える必要がある。IT管理者にとってEdgeを選ぶ本来の理由は、Entra ID条件付きアクセスとの連携、IEモード(レガシー社内システム対応)、Microsoft Defender SmartScreenとの統合といったエンタープライズ管理上の実利であり、Bingの検索結果に出てくるようなマーケティング施策とは無関係だ。むしろ今回のニュースは、エンドユーザーに「これはOSベンダーによる誘導であり、機能の優劣を保証するものではない」と説明する材料として使える。特に「無料VPN」を謳う機能を業務のセキュアアクセス用途と誤解しているユーザーがいれば、月5GBの上限や暗号化範囲の限定を正しく伝え、本来のリモートアクセス手段(条件付きアクセスやゼロトラストの枠組み)と混同させないことが重要だ。
筆者の見解
正直に言って、これはMicrosoftらしくないやり方だと思う。EdgeはChromiumベースになって以降、パフォーマンスやエンタープライズ管理機能では十分にChromeと勝負できるところまで来ている。それなのに、自社の検索エンジンの結果画面で歪んだ比較パネルを出してユーザーを誘導するようなやり方は、正面から機能や使い勝手で勝負する自信のなさの表れに見えてしまう。もったいない話だ。Windowsのセキュリティ強化やSmart App Controlのような堅実な改善は評価しているだけに、こうした小手先の訴求で信頼を削るのはやめてほしいというのが率直な感想だ。ユーザーは、禁止や誘導ではなく「公式に提供されたものが素直に一番便利だ」と感じられれば自然とそちらを選ぶ。今回のような無理押しは、その逆を行っている。Edgeには正面から勝負できる実力があるはずなので、次はそちらで語ってほしい。
出典: この記事は Microsoft has run out of reasons to push Edge over Chrome, so one of the four is just Microsoft recommended の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。