Microsoft 365 Copilotの公式コミュニティブログで、Copilot Studioで構築したAIエージェントをMicrosoft Teams上に公開し、社内のユーザーと共有するための手順を解説する記事が取り上げられた。エージェントを作るところまでは多くの解説があるが、今回は実際に現場の従業員が使える状態にするまでの「公開」フェーズに焦点を当てている。

Copilot Studioエージェントを「作る」から「使わせる」へ

Copilot Studioで作成したエージェントは、作っただけでは開発者本人の環境でしか動かない。Teamsチャネルとして有効化し、組織のTeams環境に配布して初めて、現場の従業員が実際にチャットから呼び出せるようになる。この配布プロセスにはいくつかの段階がある。

まずテストキャンバスでエージェントの応答が意図通りかを検証する。次に「チャネル」設定でMicrosoft Teamsを有効化し、エージェントをTeamsアプリとしてパッケージ化する。ここまでは基本的に開発者個人の作業だ。

その先の組織展開が今回の記事の本題になる。パッケージ化したエージェントは、個別ユーザーへの直接共有、特定チームへの限定公開、組織のアプリカタログへの登録という段階を踏んで配布できる。特にアプリカタログへの登録を選ぶ場合は、Teams管理センターでのテナント管理者による承認が必須になる。誰でも自由に全社公開できるわけではなく、管理者の統制を経由する設計になっている点が実務上のポイントだ。

実務への影響

日本企業のIT管理者にとって重要なのは、「管理者承認を経由した公開」という仕組みそのものだ。Copilot Studioのようなローコードツールは現場主導でエージェントがどんどん作られていく一方、野良エージェントが無秩序に全社展開されると、情報漏洩や誤動作のリスクが一気に高まる。Teams管理センターのカスタムアプリポリシーを使えば、公開範囲を「特定チームのみ」「承認制」などに制御でき、禁止一辺倒ではなく安全に使わせる仕組みとして機能する。

エージェント自体も一種の非人間アイデンティティ(NHI)であり、誰が・どの権限で・どこまで自動実行してよいかを最初から設計しておく必要がある。IT管理者は、まずTeams管理センターの「アプリの管理」でカスタムアプリの提出ポリシーと承認フローが有効になっているかを点検し、全社公開の前に特定チームでの限定公開期間を設ける段階的な運用を検討するとよい。

筆者の見解

CopilotやCopilot Studioは、この数年でMicrosoftが最も力を入れてきた領域であり、率直に言えばこれまでの体験には物足りなさを感じることも多かった。ただ、今回のように「エージェントの作成と公開を分離し、管理者の統制を挟む」という設計思想自体は正しい方向だと思う。

Teamsは既に多くの日本企業で日常業務のハブになっている。そこにエージェントを安全に流通させる仕組みが整うなら、Copilotひとつに閉じず、Teams上で複数のAIエージェントを併用していく未来にもつながっていく。ガバナンスの土台はできつつあるので、あとはエージェントそのものの実力をどこまで引き上げられるかが問われる。正面から勝負できる力があるはずのプラットフォームだからこそ、この仕組みを活かしきれる中身を伴わせてほしい。


出典: この記事は Publishing and Sharing Your Agent Across Microsoft Teams: A Complete Step-by-Step Guide の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。