スウェーデン発のvibe(バイブ)コーディングスタートアップLovableが、Menlo Venturesを主要投資家として3億ドル(約450億円)の新規調達交渉に入っていると、欧州メディアのSiftedが報じた。実現すれば評価額は2025年12月時点の66億ドルから倍増し、132億ドル(約2兆円)に達する見通しだ。

創業3年未満でARR500億円規模に急成長

Lovableは自然言語で「作りたいもの」を説明するだけでWebサイトやECサイトを生成できるvibeコーディングツールを提供する。創業からまだ3年に満たないが、2026年6月時点の年間経常収益(ARR)はすでに5億ドル(約750億円)に達したという。個人の起業家・デザイナー・営業担当者向けの手軽なサイト構築ツールとしてだけでなく、Workday、Asana、NVIDIAといった大企業への導入も進んでおり、コンシューマー向けとエンタープライズ向けの両輪で収益を伸ばしている点が特徴だ。

過熱するvibeコーディング市場

資金が集まっているのはLovableだけではない。Replitは2026年3月に90億ドルの評価額をつけ、AIエージェント開発を支援するFactoryも4月に15億ドルの評価額で1.5億ドルを調達した。極めつけは、開発者向けvibeコーディングツールを手がけるCursorが先月SpaceXに600億ドルで買収された一件だ。「説明するだけでコードが書ける」という生成AIの体験は、もはや実験段階のニッチな機能ではなく、数十億〜数百億ドル規模の資金が集中する主戦場になっている。

実務への影響

日本のIT現場にとっても他人事ではない。vibeコーディングはプロトタイピングやMVP開発のスピードを劇的に引き上げる一方、生成されたコードの保守性やセキュリティレビュー体制をどう整えるかが実務上の課題になる。WorkdayやAsanaのような大企業がすでにLovableを業務に組み込んでいる事実は、こうしたツールが「お試し」の段階を超えてエンタープライズの実運用フェーズに入りつつあることを示している。IT管理者は、私的なツール利用を禁止する方向で対処しようとしても長続きしない。公式に安全な形で使える標準ワークフローとレビュー体制を早めに用意しておく方が、結局は現場にとっても管理側にとっても近道になる。エンジニア個人としても、実際に触れて生成コードの品質や限界を体感しておくことが、今後の技術選定や社内提案の説得力につながるはずだ。

筆者の見解

評価額の数字だけを追うと「バブルではないか」という声が出るのも無理はないが、筆者はこの資金の流れそのものより、その根底にある変化の方が重要だと見ている。「目的を説明すればコードやアプリが形になる」という体験は、AIエージェントが人間による逐一の確認・承認を肩代わりし、認知負荷を下げる方向に技術が進んでいることの表れだ。Lovable、Replit、買収されたCursorに共通するのは、ユーザーが細かく指示を出し続けなくても、目的さえ伝えれば自律的に形にしていくという設計思想だろう。この「自律型エージェント」への流れは今後さらに強まっていくはずで、日本の開発現場でも「指示を出して待つ」から「目的を渡して任せる」への発想転換が求められる局面が近づいている。個々のツールの優劣を追いかけて情報収集に時間を使うより、まずは実際に業務で触ってどこまで任せられるかを体感しておくことが、今この瞬間にできる一番の投資だと筆者は考えている。


出典: この記事は Lovable reportedly in talks to double its valuation to $13.2B の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。