米Tom’s Guideは2026年7月8日、ChatGPT、Google Gemini、Anthropic Claude、Microsoft Copilot、Meta AI、Grokという主要AIチャットボット6サービスのプライバシー設定を横断比較した検証記事を公開した。執筆はAmanda Caswell氏。「入力した会話がAIモデルの学習にどう使われるか」「学習利用をやめる設定はどこにあり、どれだけ簡単に見つけられるか」を、実際に各サービスの設定画面を操作しながら確認している。

なぜこの比較が注目されるのか

多くの生成AIチャットボットは、既定で会話データをモデル改善(学習)に利用できる仕組みになっている。ただし「個人アカウントか法人アカウントか」「どのプライバシー設定を有効にしているか」によってルールは大きく異なり、業界共通の標準は存在しないというのが同記事の核心的な指摘だ。Googleが検索機能とAI学習の関係についてポリシーを更新したことをきっかけに、Caswell氏は主要6サービスの設定画面を一つずつ確認する検証に乗り出した。

海外レビューのポイント

Tom’s Guideの検証では、サービスごとにオプトアウトのしやすさに大きな差があることが明らかになった。

ChatGPT(OpenAI) は最も分かりやすいと評価されている。「設定>データコントロール」を開くと「すべてのユーザーのためにモデルを改善する」というスイッチが表示され、オフにすれば以降の会話はモデル学習に使われなくなるという。会話履歴にも学習にも一切使われない「一時チャット」機能も用意されており、設定変更にかかった時間は1分足らずだったとレビュアーは述べている。

Google Gemini は「Geminiアプリのアクティビティ」で保存・学習利用の可否を選べる点は透明性が高いと評価された一方、オフにすると会話履歴の保存やパーソナライズ機能まで失われるトレードオフがある点を指摘。さらにGoogleは、AI検索機能に伴うアップロードなど検索周りの一部データについても、アクティビティ設定を無効化しない限り学習に利用されうることを明らかにしているという。

Claude(Anthropic) は2025年8月、コンシューマー向けプラン(Free・Pro・Max)に学習利用のオプトイン制を導入した。「設定>プライバシー」内に「すべてのユーザーのためにClaudeを改善する」というトグルがあり、オフにすれば以降の会話はモデル改善に使われない。細かい注記も設けられており、内容を読み込む必要がある点もあわせて紹介されている。

Microsoft Copilot、Meta AI、Grokについても同様の観点で検証が行われており、記事全体としては「サービスによってデータの扱い方もオプトアウトの見つけやすさもばらばらで、業界横断の統一基準は存在しない」という結論が示されている。

日本市場での注目点

今回比較された6サービスはいずれも、日本からも同一のグローバル設定画面がそのまま提供されており、地域による機能差はほとんどない。個人利用であればChatGPT Plus、Gemini Advanced、Claude Proといった月額20ドル前後の有償プランを日本からも同条件で契約できるため、今回の検証結果はそのまま日本のユーザーにも当てはまると考えてよい。

注意したいのは法人・組織利用の場合だ。Microsoft 365 CopilotやChatGPT Team/Enterprise、Claude Team/Enterpriseといった法人向けプランは、多くの場合デフォルトで顧客データをモデル学習に利用しない契約になっている。日本企業が生成AI導入を検討する際は、個人向け無償プランの挙動だけを見るのではなく、実際に契約する法人プランのデータ取り扱いポリシーを別途確認する必要がある。個人情報保護法(APPI)の観点からも、社内でどのプラン・契約形態のAIチャットボットを使っているかを情報システム部門が把握しておくことが重要だ。

筆者の見解

今回の比較記事で興味深いのは、「学習利用のオプトアウトが分かりやすいかどうか」が、そのままサービスへの信頼感に直結して見えてしまう点だ。設定の見つけやすさと、実際のデータ保護の手厚さは必ずしもイコールではないが、ユーザーが安心して使える設定画面を用意すること自体が、サービス選びを左右する時代になってきている。

Microsoft Copilotについて言えば、法人向けのMicrosoft 365 Copilotはもともと顧客データを学習に使わない設計になっており、エンタープライズのデータガバナンスという観点では十分に胸を張れる立ち位置にあるはずだ。ただ、今回のように「個人アカウントの設定の分かりやすさ」を横並びで比較される記事に名前が挙がる以上、コンシューマー向けの設定画面についても、ChatGPTのように迷わず辿り着ける導線を用意する余地はまだありそうだ。せっかく法人向けでは筋の良い設計をしているのだから、個人向けの体験でもその安心感がそのまま伝わるようにしてほしいところだ。

日本のIT現場では、生成AIの利用が「禁止するか野放しにするか」の二択で語られがちだが、今回のような比較記事が示しているのは、公式に用意された分かりやすい設定をユーザー自身が確認し、選べる状態を作ることの大切さだ。禁止で縛るのではなく、安全に使える仕組みと分かりやすい導線を用意すること。それが結局、組織にとっても個人にとっても一番の近道になるはずだ。


出典: この記事は From hidden menus to frustrating trade-offs, our complete comparison of major AI chatbot privacy controls shows exactly how ChatGPT, Google Gemini, and others track your chats and what you can do to stop them の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。