Anthropicは、業務全般を自律的にこなすAIエージェント「Claude Cowork」を、これまでのデスクトップ専用からモバイルアプリとWebブラウザにも拡大した。ベータ版として提供が始まり、セッションやファイルはAnthropicアカウントに同期されるため、デバイスをまたいで作業を継続できる。同時に公開された利用データからは、Coworkを使う人の大半がプログラミング以外の業務でAIエージェントを活用している実態も明らかになった。

Claude Coworkとは何か

Claude Coworkは、コーディングに特化した「Claude Code」とは異なり、スプレッドシートの整理やレポート作成、資料の下書きといった一般的な業務を自律的にこなすことを目的としたAIエージェントだ。指示を受けたAIがバックグラウンドでタスクを実行し続け、人間は必要なタイミングで結果を確認するという設計になっている。

モバイル・Web対応とリモートセッションの仕組み

今回のアップデートの目玉は「リモートセッション」機能だ。これまでCoworkはデスクトップアプリでしか動かせなかったが、ベータ版としてWebブラウザとモバイルアプリからもアクセスできるようになった。ノートPCで開始したタスクをバックグラウンドで走らせたまま、外出先でスマートフォンから進捗を確認したり、アプリを閉じた後も処理が続行されたりする。提供はまずMaxプランから始まり、今後数週間でPro・Team・Enterpriseの各プランにも順次拡大される予定だ。

利用データが明かした「コーディングしない9割」

Anthropicは、2026年5月11日から31日にかけて集めた約120万件の匿名化Coworkセッション(60万以上の組織が対象)を分析した結果も公表した。内訳を見ると、スプレッドシートの突き合わせやオンボーディング資料の作成、散在する進捗情報のレポートへの集約といった「業務プロセスの遂行」が33.4%で最多。次いでドラフト作成・スライド作成・提案書・SNS投稿文などの「コンテンツ作成」が16.4%を占めた一方、ソフトウェア開発はわずか8.7%にとどまった。Anthropicはこれらを「仕事の周辺にある仕事」と表現している。

実務への影響

この結果は、AIエージェントの主戦場がすでにエンジニア組織を超えて営業・管理部門・バックオフィスにまで広がっていることを裏付けている。日本のIT部門にとっては、AIエージェント導入を「開発者向けツール」として狭く捉えていると、実際の需要を取りこぼす可能性がある。Team・Enterpriseプランには管理者向けのSSOやアクセス制御が用意されているため、モバイル同期を許可する前に、どの部門にどの範囲でデータアクセスを許すか、デバイス管理と合わせて設計しておく価値がある。

筆者の見解

今回の利用データは示唆に富む。自律的にタスクをこなすエージェント型AIが評価されるのは、開発者だけでなく、スプレッドシートや資料作成に追われる現場の人たちにこそ効くという証拠だからだ。「確認を求め続けるツール」ではなく「目的を伝えれば自分で進めてくれる仕組み」が支持される流れは、今後さらに強まるはずだ。日本の企業はまだこの変化を「エンジニアのための効率化」程度にしか捉えていないところが多く、もったいないと感じる。バックオフィス業務こそ、仕組み化してAIに任せられる領域が広い。まずは自分たちの「仕事の周辺の仕事」を棚卸しし、どこを自律型エージェントに任せられるか、小さく試してみることをお勧めしたい。


出典: この記事は Anthropic brings Claude Cowork to mobile and web as usage data shows most users aren’t coding の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。