Microsoft は2026年6月、Microsoft 365 Copilot Chat に実用性の高い2つの改善を展開した。会話スレッドの自動保存と、メモリ管理UIの改善が主な変更内容で、日常的にCopilot Chatを利用しているユーザーの操作体験が向上する。

会話スレッドの自動保存(MC1174856)

これまでCopilot Chatでは、会話スレッドの保存タイミングが一貫しないケースがあった。今回の変更(ロードマップID: 500638)により、ユーザーが最初のプロンプトを送信した直後に即座に会話スレッドが生成されるようになった。

ナビゲーションペインに会話エントリが作成され、その後のやり取りがTeamsのチャットスレッドと同様に積み重なっていく。一度作業を中断して後から同じコンテキストで会話を再開できるようになるため、「考えを整理してから続きを聞く」というワークスタイルに対応しやすくなる。

当初の展開予定から大幅に遅延していたが、2026年6月末時点で商用・政府向けテナント全体への展開が完了する見込みだ。

メモリ管理UIの改善(MC1158329)

Copilot メモリは、ユーザーが「Copilotに常に覚えておいてほしいこと」を登録しておく機能だ。約1年前に導入されたが、設定UIが分かりにくく見落とされがちだった。今回の改善(2026年6月8日更新)では、メモリ設定の発見性と管理しやすさが向上している。

メモリの登録方法はチャット入力から「〇〇を覚えておいて」と話しかける形が基本。設定の確認・管理は画面右上のメニュー → 「Chat Settings」→「Personalization」→「Shared memories」から行える。

設定できるメモリの例を挙げると:

  • 「回答は簡潔にまとめてほしい」
  • 「PowerShellの例はMicrosoft Graph PowerShell SDKで書いてほしい」
  • 「Microsoft技術を調べるときは必ず公式ドキュメントの引用元を示してほしい」

こうした指示をメモリとして登録しておくと、Copilotの応答が個人の業務スタイルに合った形になる。毎回同じ前置きをプロンプトに書く手間が省けるのは、実務上の明確なメリットだ。

実務への影響

メモリ設定は「育てる投資」と考える

メモリ機能は登録した瞬間から劇的に変わるものではなく、自分の業務パターンを少しずつ蓄積することで精度が上がっていく。

エンジニアであれば「コードはPythonで、型ヒントを必ず付けてほしい」「エラーの説明は原因→対処の順で書いてほしい」といった指示が有効だ。IT管理者であれば「M365のテナント設定に関する質問では、PowerShell Graphコマンドも必ず示してほしい」「英語ドキュメントを参照したときは日本語で要約してほしい」といった指示が実用的だ。

最初から完璧なメモリセットを作ろうとせず、使いながら「あ、毎回これを書いてるな」と気づいた時点でメモリに登録していく運用が現実的だろう。

会話の「コンテキスト継続」を使い倒す

会話スレッドの自動保存により、Copilotとのやり取りを後から参照・再開できる。複数日にまたがるプロジェクト検討や、同一テーマで繰り返し深掘りするシナリオで特に有効だ。「先週Copilotと話したあの議論の続きから始めたい」という使い方がより自然にできるようになる。

IT管理者の視点では、これらの変更は管理コンソールからの設定変更を必要としない。エンドユーザー側の体験改善として自動的に展開されるため、組織として特別な対応は不要だ。ただし展開状況が気になる場合はメッセージセンター(MC1174856・MC1158329)を確認しておくとよい。

筆者の見解

Copilot のメモリ機能は、登場した1年前から「ポテンシャルはある、ただ使いこなすまでの障壁が高い」という印象を持っていた。今回のUI改善と会話スレッドの自動保存は、その障壁を地道に下げようとする着実な改善だ。

こうした「基本操作の磨き込み」は地味に見えるが、競合するAIチャットサービスとの差を縮める上で重要な積み重ねだと思う。「会話が消えた」「設定が探せない」といった基本的なUXの問題は、それだけで離反を招きうる。その穴を塞ぐ今回の対応の方向性は正しい。

一方で、Copilotの本来の強みはM365エコシステムとの統合にある。Teamsの会議録、Outlookのメール処理、SharePointドキュメントの横断検索——M365内の業務文脈を丸ごと扱える点は、単独のAIチャットサービスが真似できない固有の領域だ。メモリ機能の充実とあわせて、この統合の強みをユーザーが実感できる体験にもっと磨きをかけてほしい。

Copilotが本来持っている力を、ユーザーが日常の業務の中で素直に実感できる体験に変えていく——そこが最大のチャンスだと感じている。


出典: この記事は Two Microsoft 365 Copilot Changes That Just Make Sense の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。