Microsoft が SharePoint Online(OneDrive for Business を含む)向けに、ファイル単位でコールドストレージへアーカイブできる新機能「Microsoft 365 Archive ファイルレベルアーカイブ」を2026年7月に一般提供(GA)開始する。2024年5月にリリースされたサイト単位アーカイブからの進化であり、アクティブなサイトを停止することなく、放置されたファイルだけをコスト効率の高いストレージへ移動できるようになる。
サイト単位から「ファイル単位」へ——何が変わるのか
Microsoft 365 Archive は2023年後半に登場し、2024年5月に GA となった SharePoint サイト全体のアーカイブ機能だ。サイトごとコールドストレージへ移すことでプライマリストレージを解放し、コストを削減する仕組みだった。しかし現場での運用では「サイト全体は使っているが、古いファイルだけ安くしたい」というニーズが強く、今回の機能強化はその声に直接応えるものとなる。
ファイルレベルアーカイブでは、ドキュメントライブラリ内の個別ファイル(またはアイテム)を選択的にコールドストレージへ移動できる。数年間アクセスされていない文書や、法務・コンプライアンス上の保持義務はあるが日常業務では使わないファイルが典型的な対象となる。
主要な仕様と維持される機能
注目すべき点は、アーカイブ後も以下の機能がそのまま維持されることだ:
- 検索性:アーカイブ済みファイルは Microsoft 365 の検索結果に引き続き表示される(2025年7月に追加されたエンドユーザー向け検索機能を含む)
- 秘密度ラベル:Microsoft Purview で設定した秘密度ラベルがアーカイブ後も有効に適用され続ける
- DLP ポリシー:データ損失防止ポリシーの対象として引き続き扱われる
- コンプライアンス保持:法令や社内ポリシーに基づく保持期間の管理が途切れない
つまり「コスト削減のためにアーカイブしたら、ガバナンスが抜け穴になった」という問題が起きない設計になっている。
開発タイムライン
| 時期 | マイルストーン |
|---|---|
| 2024年5月 | Microsoft 365 Archive(サイトレベル)GA |
| 2025年2月 | ファイルレベルアーカイブをロードマップに追加(ID: 477371) |
| 2025年3月 | 再アクティブ化費用を廃止(ただし再アーカイブには120日の制限) |
| 2025年7月 | エンドユーザー向けアーカイブ済みコンテンツ検索機能を追加 |
| 2026年4月 | パブリックプレビュー開始(Targeted Release) |
| 2026年7月 | 全テナント向け GA |
| 2026年後半 | 自動アーカイブポリシー(非アクティブ日数による自動移動)を計画 |
特筆すべきは2025年3月の「再アクティブ化費用の廃止」だ。当初は再アクティブ化に課金する設計だったが、顧客フィードバックを受けて撤廃した。現在は無料で再アクティブ化できるが、再アーカイブまでに120日の待機期間が設けられている。
2026年後半に予定される自動アーカイブポリシー
GA と同時に完結する話ではなく、2026年後半に「X 日間非アクティブのファイルを自動的にアーカイブする」ポリシー機能が追加予定だ。SharePoint Advanced Management アドオンで提供されているサイトレベルのライフサイクルポリシーと同様の仕組みがファイル単位にも展開される見込みで、管理者が大量のファイルを手動で選ぶ手間がなくなる。
実務への影響
SharePoint 管理者・情報システム部門にとって、今回の機能は大きく3つの文脈で使える。
1. ストレージコストの段階的最適化 サイトを止めずにコスト削減できるため、「大規模なサイト整理プロジェクト」を立ち上げなくても継続的なコスト管理が可能になる。特に数年単位で蓄積されたドキュメントライブラリを抱える組織で効果が大きい。
2. コンプライアンス管理の簡素化 法令上の保持義務がある文書を「保持しつつ、プライマリストレージからは外す」という運用が整合的に行えるようになる。従来は保持ポリシーとストレージコストのバランスをとるために、別途アーカイブシステムを用意するケースもあったが、Microsoft 365 の範囲内で完結できる。
3. 自動ポリシーによる運用自動化 2026年後半の自動アーカイブポリシーが実装されれば、管理者が個別にファイルを選ぶ作業なしに「N 日間アクセスなし → 自動コールドストレージ移行」のライフサイクルを構成できる。運用工数の削減につながる。
エンジニア・開発者の観点では、SharePoint REST API や Microsoft Graph API 経由でのアーカイブ操作が可能になるかどうかは現時点では詳細が公開されていないが、自動ポリシー機能の仕様と合わせて注視する必要がある。
筆者の見解
今回のファイルレベルアーカイブは、Microsoft 365 が「統合プラットフォーム」としての価値をどう磨くかという文脈で評価したい。
ストレージ、コンプライアンス、ガバナンスを一つの仕組みの中で整合させるのは、バラバラのツールを組み合わせると途端に難しくなる。秘密度ラベルや DLP が維持されたままコールドストレージへ移動できるという設計は、まさにこのプラットフォーム統合の強みが出ている。バラバラに使うと意味がないのが M365 の特性だが、こういう機能が揃ってくると、統合して運用する価値が現場レベルで可視化されてくる。
自動アーカイブポリシーの実装が2026年後半に予定されているのも重要だ。「仕組みを作れれば、あとは AI や自動化に任せる」という運用モデルを目指している組織にとって、人間が個別ファイルを選ぶ作業を省けるのは本質的なところだ。SharePoint Advanced Management との連携がどこまで深まるかが今後の注目点になる。
一方で気になるのは「再アーカイブまで120日」という制限だ。再アクティブ化費用の廃止は歓迎だが、120日のクーリングオフ期間は運用上のハードルになりうる。頻繁に参照が行き来するファイルには向かないという前提を、ポリシー設計時に明確に組み込んでおく必要があるだろう。コスト削減を急いで「とりあえずアーカイブ」すると、後で戻せない状況に陥るリスクがある。
7月の GA に向けて、パブリックプレビューに参加して実際の動作を確認しておくのが賢明だ。自動ポリシーの挙動と API の仕様が明らかになった段階で、本格的な導入設計に入れる。
出典: この記事は Microsoft 365 Archive: Upcoming File-Level Archiving Features の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。