米国の半導体メモリメーカーMicron Technologyが、AI向けメモリ需要の急拡大を背景に株価が1ヶ月で236%超の急騰を記録し、ウォール街から「次のNvidia」と呼ばれ始めている。

AIが火をつけたメモリ争奪戦「RAMageddon」

Micronはアイダホ州ボイシに本社を置く、DRAM・NAND型フラッシュメモリの大手メーカーだ。かつては「PCやスマートフォンのメモリカードを作る会社」として一般消費者に認識されていたが、今や状況は様変わりしている。

AIデータセンターの急拡大が、メモリ半導体の需給を根本から変えてしまった。1台のAIサーバーが消費するメモリは、一般的なノートPCの数十倍から数百倍にのぼる。特に注目されているのがHBM(High-Bandwidth Memory)——GPUと積層実装して超高速なデータ転送を実現するメモリで、NvidiaのAI向けGPUに不可欠な部品だ。

Nvidiaをはじめ、Microsoft、Amazon AWS、Google、Meta、Oracleといったハイパースケーラーが大量のメモリを買い漁り、DellやHP等のPC/デバイスメーカーまでが在庫を囲い込んでいる。この連鎖的な需要増は「RAMageddon」とも呼ばれ、2027年まで続くとの予測もある。AppleのスマートフォンやXbox本体の価格上昇にも既に影響が出ている。

業績は文字通り「桁違い」

Micronが先週発表した2026年度第3四半期決算は圧倒的な内容だった。

指標前年同期今四半期
売上高約10兆円相当約6兆円→41.45億ドル(4倍)
純利益18.8億ドル28.2億ドル(約15倍)
第4四半期見通し49〜51億ドル

株価は今月だけで236%超上昇し、1株1,132ドルで週を終えた(つい1年半前まで100ドル以下で推移していた)。時価総額は一時MetaとTeslaを上回る1.27兆ドルに達し、一瞬だがシリコンバレーの巨人たちを追い抜いた。

「次のNvidia」と呼ばれる理由——長期契約戦略

ウォール街がMicronを特別視するのは、業績の良さだけではない。同社はメモリ業界を長年苦しめてきた「需要落ち込み→在庫過剰→価格崩壊」というサイクルへの対策を打ち出した。

MicronはNvidiaやAIラボのAnthropicを含む複数の主要顧客と長期供給契約(SCA: Strategic Customer Agreement)を締結しており、データセンター・コンシューマー・自動車の各セグメントで合計16件の戦略的顧客契約を結んでいると発表した。「これにより自社のビジネスモデルを根本的に変革できる」と経営陣は強調する。

ウィリアム・ブレアのアナリスト、セバスチャン・ナジ氏は「需要の伸びが新たなクリーンルーム設備の稼働速度を上回っており、長期契約の拡大が収益の視界を改善している」として強気評価(Outperform)を維持している。

実務への影響——日本のエンジニア・IT管理者が知っておくべきこと

1. AIインフラのコスト構造が変わっている メモリ価格の高騰はクラウドサービスの原価に直接影響する。AzureやAWSのAI系サービスの利用コストが今後も上昇する可能性があり、コスト計画には余裕を持たせておきたい。

2. AI開発環境のメモリ要件を見直す ローカルLLMの運用や大規模モデルのファインチューニングを検討している場合、必要なメモリ量と調達コストの試算を改めて行う価値がある。「RAMageddon」の影響でサーバー用メモリの価格が上昇しており、購入タイミングの検討が必要だ。

3. サプライチェーンリスクの認識 Micronは米国企業だが、製造拠点は日本(広島・東京)も含む。半導体の地政学リスクは日本企業にとっても他人事ではなく、調達多様化の観点から供給状況を継続的にウォッチしておきたい。

4. HBMの動向はNvidiaの次世代GPU性能に直結 HBMの供給量がNvidiaのGPU出荷量を左右する。AI向けGPUの調達見通しを立てる際は、Micronの生産動向も視野に入れておくと見通しが立てやすい。

筆者の見解

Micronの快進撃は、AIブームが「GPUだけの話」ではないことを改めて証明している。推論・学習を問わず、大量のメモリなしにAIは動かない。Nvidiaに注目が集まる一方で、その「土台」を支えるメモリ産業が今、同等かそれ以上のバリューを生み出しつつある。

気になるのは、メモリ産業が持つ歴史的な「繰り返しの罠」だ。過去にも需要増→設備投資→供給過剰→価格崩壊というサイクルが何度も繰り返されてきた。Micronが今回打ち出した長期供給契約戦略がこのサイクルを断ち切れるかどうかが、「次のNvidia」になれるかどうかの分岐点になる。

AIの学習・推論コストは現在もなお高い。RAMageddonが続く限り、その高コスト構造は変わらない。日本のIT現場でAIを活用する立場からすると、インフラコストの見通しが立てにくい状況が続くことを念頭に置いた上で、限られた予算の中で最大の成果を引き出す設計が問われる時代に入っていると感じる。

「次のNvidiaか否か」という問いに答えを出すのは早計だが、少なくともMicronがAI時代の重要プレイヤーとしてステージを上げたことは間違いない。


出典: この記事は Why Wall Street thinks US memory maker Micron is the next Nvidia の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。