Microsoft 365が2026年6月に大規模アップデートを実施した。Microsoft TeamsはAIが録音や文字起こしを保存せず会議要約を生成できるプライバシー重視の新機能を追加し、同時にWordやExcelなどOfficeアプリのCopilot機能は有償ライセンス必須へと移行した。
TeamsのAI議事録が「録音なし」で動くようになった
これまでTeamsのAI議事録(Intelligent Recap)は、録音または文字起こしを保存した会議にしか機能しなかった。6月からはその制約が緩和され、録音・文字起こしのデータをクラウドに残さなくても、AIがリアルタイムで会議の要点・決定事項・アクションアイテムを生成できるオプションが提供される。
これはM365 Copilotの有償ユーザー向けに展開される機能で、会議内容の保持を最小化しながら議事録だけを残したいというニーズに応えるものだ。医療・法律・金融といったコンプライアンス要件が厳しい業種や、個人情報や機密情報が飛び交う会議での活用が期待される。
日本においても、録音データの保存に対して心理的・法的なハードルを感じる組織は少なくない。この機能により「議事録は欲しいが録音は残したくない」というジレンマが解消される可能性がある。
Word・Excel の Copilot が有償ライセンス必須に
2026年4月15日付けで、Word・Excel・PowerPoint・OneNoteに組み込まれていたCopilot機能は、M365 Copilot(有償ライセンス)を保有していないユーザー向けには無効化された。6月は多くの組織でライセンス更新が集中する時期であり、この変更の影響を受けるユーザーが一気に顕在化している。
無償で引き続き使える機能は「Copilot Chat(Basic)」のみで、M365 Copilot アプリやWebブラウザからのチャット機能はライセンスなしでも利用できる。OutlookのCopilot機能も当面は広く提供が継続される。
テナントの規模によって扱いが異なる点も注意が必要だ。
- 大規模テナント(約2,000ユーザー超): 有償ライセンスなしではOfficeアプリ内のCopilotが完全に無効
- 中小テナント: ChatのみのStandardアクセスが残る場合があるが、Word・ExcelのAI機能は同様に有償ライセンスが必要
2026年6月30日が期限:Copilotプロモ価格が終了
M365 Copilotの定価は1ユーザー月額約30ドル(税別)だが、Microsoft は「Copilot Business」として1ユーザー月額約18ドルのプロモーション価格を提供してきた。このプロモーションが6月30日をもって終了する。
日本法人での導入を検討しているIT部門は、7月以降は通常価格での見積もりが必要になる。試験導入の稟議を通したばかりの組織は予算の見直しが急務だ。
SharePoint スタンドアロンプランが販売終了
旧来から提供されていたSharePointのスタンドアロンプランは2026年5月31日に新規販売を停止、完全廃止は2029年12月の予定だ。SharePoint単体プランで契約していた組織は、M365スイートへの移行計画を立てる必要がある。
実務への影響
IT管理者が今すぐすべきこと:
- ライセンス棚卸し: 誰がOfficeアプリ内Copilotを日常的に使っているかを確認する。全員に一律付与はコスト過剰、必要な人に付与しないと生産性損失——最悪のパターンを避けるためにも使用状況の確認が先決
- 6月30日前の意思決定: Copilotプロモ価格の終了前にライセンス数を確定させるか、7月以降の正規価格で予算を組み直すかの判断が必要
- Teams議事録ポリシーの見直し: 録音なしのAI要約が利用できるようになることで、会議ポリシーを更新できる。特にコンプライアンス部門との連携が効果的
- SharePoint移行計画: スタンドアロンプランを利用中の組織は廃止スケジュールに合わせた移行ロードマップを今から準備する
筆者の見解
今回の一連の変更の中で、最も評価できるのはTeamsのAI議事録機能の「録音なし」オプションだ。会議コンテンツのプライバシー管理という、長年現場から声が上がっていた課題に対する実質的な答えが出た形で、方向性は正しい。
一方で、Copilot機能の有償化と価格体系の複雑化については、正直に言えば「もったいない」と感じる。Microsoftが持つOffice統合という他社には真似できない強みを活かせるプラットフォームがM365であるだけに、ライセンス管理の煩雑さが現場のCopilot活用の足かせになっているとすれば、本来の実力を発揮できていないことになる。
Copilotの機能そのものの進化は続いている。TeamsやOutlookとの深い統合は、スタンドアロンのAIツールでは実現しにくい体験だ。日本のIT部門には、「禁止か全員導入か」の二択ではなく、業務ロール別に最適なライセンス構成を設計するアプローチをお勧めしたい。使う人に適切に届けることで、初めてM365 Copilotの投資対効果が見えてくる。
6月は変化の多い月だった。7月以降の価格体系が固まった今こそ、M365ライセンス全体を整理する好機でもある。
出典: この記事は Microsoft Teams to offer AI-powered meeting recap without saving recording or transcript の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。