2026年5月、ドイツの老舗音響ブランド・ゼンハイザーが、フラッグシップワイヤレスヘッドホン「MOMENTUM 5 Wireless」を正式発表した。米テクノロジーメディアのTechaerisがその詳細を報じている。前モデル「MOMENTUM 4 Wireless」の発売から約4年——バッテリーライフと豊かなサウンドで業界の「金字塔」と高評価を受けた傑作の後継機だけに、業界の注目度は高い。
スペックと主な進化点
サウンドエンジン:Hi-Res Audio認証+aptX Lossless対応
音の核心部分となる42mmダイナミックドライバーは前モデルを踏襲しつつ、デジタル処理基盤を大幅に強化。ドライバーはアイルランド・タラモア工場で製造されており、同社スタジオ用ヘッドホン「HD 600シリーズ」のチューニング哲学を参考にした、芯のある低音と滑らかな音場が特徴とされる。
Techaerisの報告によると、新たにQualcomm Snapdragon Soundへの対応とHi-Res Audio認証を取得し、aptX Losslessまでの高音質コーデックをフルサポート。Bluetoothはバージョン5.4を採用する。さらに発売初日のファームウェアアップデート(Smart Control Plusアプリ経由)でDolby Atmosの空間オーディオとダイナミックヘッドトラッキングに対応予定。映画や空間音楽コンテンツで立体的なリスニング体験が得られる設計だ。
ノイズキャンセリング:8マイクアレイで会話音を3倍抑制
ANCの強化も大きな見どころだ。各イヤーカップに4基ずつ、計8基のマイクを搭載。Techaerisの解説によると、オフィスやカフェなど混雑した環境での「人の声(中域帯域)」の抑制が従来比3倍向上。低域の機械音や飛行機エンジン音の抑制も改善されており、外音取り込みモード(Natural Transparency)の自然さも向上したという。
バッテリー:57時間+ユーザー自身で交換できる画期的設計
バッテリー性能はANC使用時で57時間連続再生を実現。5分の急速充電で約3時間の使用が可能だ。
そして今モデル最大のトピックが、ユーザー自身が交換できる700mAhバッテリーの採用だ。Techaerisの報告によると、一般的なプラスドライバーを使って数分でバッテリー交換できる設計になっている。リチウムイオンバッテリーは経年劣化が避けられず、従来のプレミアムワイヤレスヘッドホンは数年で事実上の「高価なゴミ」になることも多かった。この修理可能な設計は、製品の長期使用を真剣に考えた結果といえる。
日本市場での注目点
本記事執筆時点(2026年6月)では日本での正式な発売日・価格は未公表だが、MOMENTUM 4 Wireless(日本での実勢価格は約4〜5万円台)の後継機として同価格帯での展開が見込まれる。競合はソニー WH-1000XM5やBose QuietComfort Ultraといった定番勢だ。
aptX Losslessは対応するAndroid端末が必要なため、iPhoneメインユーザーには恩恵が限定的になる点に注意が必要だ。一方、Dolby Atmos対応は多くのAndroid・iOS端末で利用できるため、空間オーディオへの入口として魅力的な選択肢となる。
交換バッテリーが国内でどのように調達・サポートされるか——純正パーツの入手性や価格——も、長期使用を見越した購入判断の重要なポイントになりそうだ。
筆者の見解
MOMENTUM 5 Wirelessで最も評価したいのは、ユーザー交換可能なバッテリー設計だ。プレミアムヘッドホンは数万円の投資だが、バッテリー劣化による早期廃棄の問題は長年業界全体の課題だった。欧州のEcodesign規制の流れとも合致するこの設計思想が他社にも波及すれば、業界全体の製品寿命底上げにつながる。ゼンハイザーの判断は正しい。
性能面では、8マイクによるANCの進化と57時間というバッテリーの数字は素直に優れた仕様だ。ただしaptX Lossless対応の真価を引き出せるかどうかは端末側の対応状況に依存する。日本市場でiPhoneユーザーが多い実態を踏まえると、「コーデック全開で使い倒せる」ユーザーはまだ限られる。
デザインを大きく変えず、音の核心を刷新しながら「長く使える製品」を真剣に設計したゼンハイザーの姿勢は、ガジェットの使い捨て文化への逆張りとして好ましい。国内発売の詳細が明らかになった際には、改めて注目したい製品だ。
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出典: この記事は Sennheiser Momentum 5 Wireless debut with user-replaceable battery の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。
