Windows 11に標準搭載された新しい「メディアプレーヤー」アプリが、旧来の「Windows Media Player」と比べて約3.5倍のRAMを消費することが報告されている。さらに、現代のスマートフォンや動画配信でも主流のHEVC(H.265)コーデックがOS標準では非搭載であり、再生には別途有料の拡張機能購入が必要であることが改めて注目を集めている。

新旧プレーヤーのRAM消費量——何が変わったのか

Windows 11では、長年親しまれてきたWindows Media Player(WMP)の後継として、Fluent Designを採用したモダンな「メディアプレーヤー」アプリが標準搭載されている。ExtremeTechの検証によると、同じ動画ファイルを再生した際のRAM消費量が旧WMPの約3.5倍に達するという結果が出た。

モダンアプリとしての統合ライブラリ管理やUIの洗練は評価できるが、レガシーWMPが持っていたリソース効率という強みは失われている。特に低スペックのビジネス向けノートPCや、バッテリー駆動を重視する環境では、このオーバーヘッドが体感レベルで影響する可能性がある。

HEVCコーデックが「有料オプション」という現実

もう一つの問題が動画コーデックの扱いだ。Windows 11では、HEVC(H.265)コーデックはOSに含まれておらず、Microsoft Storeから「HEVC Video Extension」を約120円(0.99ドル)で別途購入する必要がある。

H.265はiPhoneやAndroid端末で撮影した4K動画、NetflixなどのHDRストリーミングコンテンツでも広く使われている、現代の「主流コーデック」だ。それが標準搭載でないという事実は、一般ユーザーには気づかれにくいが、実務では確実にトラブルの種になる。

一部のWindows 11デバイスでは「デバイス製造元からのHEVC Video Extensions」が無償プリインストールされるケースもあるが、提供はメーカー任せであり一貫性がない。

実務への影響——企業IT担当者が知っておくべき対処法

社内動画の再生環境を統一する

社内研修動画や会議録画をH.265形式で配布している組織では、受信側での再生可否が問題になりうる。Windows 11標準のメディアプレーヤーだけでは再生できない可能性があるため、以下の対策を検討したい。

  • VLCの全社展開: フリー・オープンソースで主要コーデックをほぼ網羅。コーデック課金とは無縁で、管理されたデバイスへのサイレントインストールも容易
  • IntuneによるHEVC Extensionの一括配布: Microsoft StoreアプリはMicrosoft Intune経由でポリシーベース配布が可能。HEVCコーデック問題をまとめて解決できる
  • 動画の配布形式をH.264に統一: 一時的な回避策として、配布動画をH.264(AVC)にエンコードして提供するのも現実的な選択肢

コーデック管理の不統一がサポート負荷につながる

VP9対応の「Web Media Extensions」やAV1対応拡張など、Windowsのコーデック周りは拡張機能が分散しており、管理が複雑になりやすい。ヘルプデスクが「動画が再生できない」という問い合わせを受けた際の診断フローを整備しておくことを推奨する。

筆者の見解

RAMが3.5倍になったという数値はインパクトがあるが、現代のPCが16GB以上のRAMを標準で積んでいる状況を考えると、絶対値として壊滅的というわけではないかもしれない。ただ、「モダン化=肥大化」という傾向は、特に法人端末のような長期利用・低スペック環境では無視できないシグナルだ。

より気になるのはHEVCの課金モデルのほうだ。H.265は2013年に標準化されて以来、すでに10年以上が経過した枯れた技術だ。スマートフォンで撮影した動画が、PCに標準搭載のプレーヤーでそのまま再生できないというのは、ユーザー体験として明らかに改善の余地がある。コーデックライセンス料の問題があることは理解できるが、その負担をエンドユーザーに120円という形で転嫁するのは、Microsoftが本来持っているプラットフォーム統合力を使えばもっとうまくやれるはずだという思いがある。

OEMのプリインストールに依存した現状の「一貫性のない無償提供」ではなく、より体系的なアプローチで解決してほしい。Windowsプラットフォームに長年関わってきた立場から、この点は正直に申し上げておきたい。


出典: この記事は Windows 11 New Media Player Uses 3.5x More RAM, Charges for Popular Video Codecs の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。