Engadgetおよび『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』の報道によると、AppleのCEOであるティム・クック氏が、同社製品の値上げが「避けられない」状況にあると事実上認めた。WWDC 2026が終了し、iPhone 18ラインナップの発表が数か月後に迫るなか、消費者にとって無視できないニュースが飛び込んできた。
AI需要が引き起こした「RAMaggedon」
クック氏がWSJの取材に対して語った内容の核心はシンプルだ。「消費者がデバイスを求めているにもかかわらず供給が不足しており、メモリメーカーから莫大な価格引き上げが転嫁されている」というものだ。
その背景にあるのは、生成AI・大規模言語モデルの爆発的な需要拡大だ。データセンター向けのHBM(高帯域幅メモリ)やDDR5の需要がサーバー用途で急増したことで、コンシューマー向けのNAND型フラッシュメモリやDRAMにも供給の締め付けが波及している。この現象を業界では「RAMaggedon(ラマゲドン)」と呼び始めている。
クック氏はこう述べた。「40年以上のキャリアで、これほどの事態はどの分野でも見たことがない」——この一言が、事態の深刻さを端的に示している。
影響を受ける製品範囲と他社の動向
Engadgetの報道によれば、クック氏は具体的な値上げ幅や時期には言及しなかったものの、価格上昇の対象は現行ラインナップを含む広範な製品に及ぶ可能性を示唆した。WWDC直後のタイミングで発言したことから、今秋発売予定のiPhone 18シリーズ、および年内に発表されるMacやiPadも対象になると見られている。
Appleだけではない。Samsung、HP、Microsoft、Nintendo、Valveも、ここ数か月で同様のコスト圧力について言及している。メモリ価格高騰はプラットフォームや製品カテゴリーを超えた業界全体の問題となっている。
日本市場での注目点
日本市場でも影響は避けられない見通しだ。円安が依然として続いているなか、ドル建てで価格が上がれば円換算での上昇幅はさらに大きくなる可能性がある。
現時点では具体的な日本向け価格は未発表だが、過去のApple製品の値上げ事例(iPhone 14以降の円建て価格引き上げ)を踏まえると、iPhone 18シリーズは上位モデルで20万円超えが現実的なシナリオとして浮上してくる。
競合としては、同じコスト圧力にさらされながらも価格を抑えるサムスンのGalaxy Sシリーズや、Qualcommチップ搭載のAndroidフラッグシップが選択肢になるが、それらも同様の値上げ圧力を受けていることは念頭に置いておく必要がある。
筆者の見解
今回のクック氏の発言で最も注目すべきは、「メモリ価格の問題」が一時的な需給の歪みではなく、AI開発という構造的な力によって引き起こされているという点だ。
データセンターがメモリを大量に吸い上げ、コンシューマー向け製品の製造コストが上がる——この構図は、AIの恩恵を受けている人々と、スマートフォン・PCの値上がりという形でコストを負担する人々が異なるという非対称性を生む。技術の進歩が消費者の手の届かないところにコスト転嫁していく皮肉な構造だ。
Appleはこの問題を「コントロールできない外部要因」として提示しているが、実際のところ、同社自身もApple Intelligence(生成AI機能)へのメモリ要件を年々引き上げてきた当事者でもある。値上げを余儀なくされる理由の一端は、AI機能を強化するために自ら作り出した需要にある、という見方も成り立つ。
いずれにせよ、iPhone 18の発表は消費者にとって価格の分岐点になる可能性が高い。秋の発表を冷静に見極めながら、「今の世代で十分か」を改めて問い直す時期に来ているかもしれない。
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出典: この記事は Tim Cook says Apple price increases are ‘unavoidable’ due to memory crunch の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。