Google Chromeの次期メジャーアップデート(バージョン150または151)で、MV2(Manifest V2)形式の拡張機能サポートが完全廃止される見通しであることが明らかになった。Tom’s GuideのJeff Parsons編集長が6月16日に報じたもので、Cybernewsのレポートと、ChromeエンジニアによるChromiumの公式コミットを根拠としている。uBlock Originをはじめとする人気の広告ブロッカーが、このアップデートを境に動作しなくなる可能性が高い。
なぜ今、広告ブロッカーが危機に瀕しているのか
Googleは昨年からMV3(Manifest V3)への移行を進めてきたが、いよいよMV2の完全廃止が現実のものになる。Chromeエンジニアの Devlin Cronin 氏はChromiumのコミットで「MV2拡張機能はChromeのどのバージョンでも許可されなくなる。複雑さと技術的負債、そしてセキュリティリスクを理由に、関連機能のサポートを終了する」と明言した。
MV3への移行そのものが問題なわけではない。真の論点は、MV3が課すフィルタリングルール数の上限にある。広告配信技術は日々進化しており、それに追随するためには膨大なルールセットが必要だ。MV3の制約が、最新の広告手法への対応を困難にする恐れがある。
海外レビューのポイント
Tom’s GuideのParsons編集長の報道では、以下が整理されている。
影響を受ける環境:
- Google Chrome(直接・即時影響)
- Opera、Microsoft Edge、Samsung Browserなど Chromiumベースのブラウザ(しばらく後に波及)
影響を受けない環境:
- Mozilla Firefox: MV2廃止の計画なし。uBlock Originも引き続き動作
- Brave: プライバシー重視設計の代替ブラウザとして有力
MV3対応済みの広告ブロッカー: AdGuard、AdBlock、GhosteryはすでにMV3対応を済ませているが、ルール数制約の影響は完全には回避できないとされている。
Parsons氏は「広告のない環境を維持したいなら、ブラウザを乗り換えるのが最もシンプルな解決策」と指摘。また、ブラウザ拡張機能ではなくデスクトップアプリとして動作する広告ブロッカーへの移行も選択肢として挙げており、コスト面での負担はあるものの検出精度は高い可能性があるとしている。
日本市場での注目点
日本のChrome利用者も無関係ではない。以下の選択肢を早めに把握しておきたい。
- Firefox移行 — 最も即効性が高い。日本語対応も完全で、uBlock Originを継続利用可能
- Brave導入 — ブラウザ本体に広告ブロック機能を内蔵。拡張機能に依存しない設計
- AdGuardなどMV3対応拡張機能への切り替え — Chromeを使い続けるなら現実的な対応策
- デスクトップ型広告ブロッカーの検討 — AdGuard for Windowsなどの有料アプリはOS全体の通信をフィルタリングできる
なお、MV2廃止にはセキュリティ上の意義もある。悪意あるコードを仕込んだMV2拡張機能が多数流通しており、MV3の厳格な仕組みによってその抑制が期待できる。「広告ブロックができなくなる」の一面だけでなく、拡張機能エコシステム全体の安全性向上という文脈でも捉えたい。
筆者の見解
Googleが「技術的負債とセキュリティリスク」を理由にMV2を廃止する判断は、技術的には筋が通っている。拡張機能エコシステムの安全性を高めるという方向性自体は正しく、長期的には利用者保護につながる面もある。
ただし、ユーザー体験の観点では大きな岐路だ。ChromeとuBlock Originの組み合わせは長年にわたって「標準的で再現性のある構成」として機能してきた。それが成立しなくなる影響は小さくない。
Firefoxへの移行は技術的には容易でも、主要ブラウザと同じ感覚で使いたい一般ユーザーには心理的ハードルがある。企業環境でChromeを標準ブラウザとして展開している組織は、ポリシー変更を含めた対応が必要になる場面も出てくるだろう。
現時点での筆者の推奨は、今のうちからFirefoxかBraveを副ブラウザとして慣らしておくことだ。移行を焦る必要はないが、MV2廃止のタイムラインが近づいた時にスムーズに動けるよう、準備だけは済ませておく価値がある。
出典: この記事は Google Chrome’s next update could kill ad blockers for good — here’s how の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。