2026年7月1日、MicrosoftはMicrosoft 365をはじめとする複数のライセンスについて月額料金を一斉に引き上げる。Office 365 E3が$23→$26(約13%増)、Entra P1が最大16%増など、大規模テナントほど年間コストへの影響が無視できない規模に達する。事前に自テナントの影響額を把握するには、PowerShellによる試算が有効だ。
値上げは「M365だけ」ではない
今回の価格改定で特に見落とされがちなのが、Microsoft 365以外のライセンスにも値上げが及んでいる点だ。
| ライセンス | 旧価格 | 新価格 | 値上げ幅 |
|---|---|---|---|
| Office 365 E3 | $23.00 | $26.00 | +13% |
| Microsoft 365 E5 without Teams | $48.45 | $51.45 | +6% |
| Office 365 E5 without Teams | $29.45 | $32.45 | +10% |
| Microsoft 365 Business Standard | $12.50 | $14.00 | +12% |
| EMS E3 | — | — | +13% |
| EMS E5 | — | — | +10% |
| Entra P1 | — | — | +16% |
| Entra P2 | — | — | +11% |
※上記は米国価格。実際の請求額は国・地域の税制や個別の割引契約によって異なる。
条件付きアクセスポリシーなどゼロトラスト施策に不可欠なEntra P1が最大16%の値上げというのは、セキュリティ投資を進めている企業にとって見過ごせない数字だ。セキュリティ強化のコストが上がるからといって導入を後回しにする選択は、リスクの観点からは本末転倒になりかねない。
PowerShellで影響額を試算する
Microsoft Graph PowerShell SDKを使えば、自テナントの契約状況を取得して値上げ影響額を算出できる。必要な権限は User.Read.All と LicenseAssignment.Read.All の2つだ。
① SKUごとの値上げ情報を配列として定義する
[PSCustomObject]@{ SkuId = “cbdc14ab-d96c-4c30-b9f4-6ada7cdc1d46” Name = “Microsoft 365 Business Standard” IncreasePercent = 12 OldPrice = ‘12.50’ NewPrice = ‘14’ }
② Get-MgSubscribedSku でテナントの契約SKUを取得し、値上げ対象と突き合わせる
$TenantSkus = Get-MgSubscribedSku -All | Select-Object SkuId, SkuPartNumber, @{Name=“ConsumedUnits”; Expression={$.ConsumedUnits}}, @{Name=“EnabledUnits”; Expression={$.PrepaidUnits.Enabled}}
$IncreasedLicenses = ForEach ($Sku in $TenantSkus) { $Match = $Microsoft365PriceIncreases | Where-Object { $_.SkuId -eq $Sku.SkuId } If ($Match) { [PSCustomObject]@{ Name = $Match.Name ConsumedUnits = $Sku.ConsumedUnits OldPrice = $Match.OldPrice NewPrice = $Match.NewPrice IncreasePercent = $Match.IncreasePercent } } }
このスクリプトを実行すると、テナントで使用中のSKUのうち値上げ対象となるものだけが抽出される。あとは ConsumedUnits × (NewPrice - OldPrice) × 12 で年間追加コストをざっくり試算できる。
さらに Get-MgUser と組み合わせれば、長期間サインインのない休眠アカウントに割り当てられたライセンスも洗い出せる。値上げ前のライセンス棚卸しと組み合わせることで、効果は倍増する。
実務への影響——今すぐやるべきこと
値上げまでの残り期間でやっておきたいアクションは3つだ。
- 休眠アカウントのライセンス回収: 長期間サインインのないユーザーに割り当てたライセンスは即回収。値上げ後に気づいても損失は戻らない
- Entraライセンスの棚卸し: 条件付きアクセスを使わないユーザーへのEntra P1付与を見直す。今回最も値上げ率が高いため費用対効果が大きい
- EMSバンドルの見直し: EMS E3/E5の中身を分解して、必要な機能だけを個別SKUで揃え直した方が安くなるケースがある
筆者の見解
ライセンス料の値上げ自体は企業として当然の判断だと思う。Microsoft 365が統合プラットフォームとして提供する価値——Teams、Exchange、SharePoint、Entraが一体で動くあの体験——は、バラバラのツールを組み合わせるより依然として合理的だ。
ただ、今回の改定で特に気になるのがEntra P1の16%という数字だ。条件付きアクセスはゼロトラスト移行において最初の一歩であり、「コストが上がるから後回し」という選択を現場にさせてしまうのは、セキュリティの観点から見てもったいない。値上げを機に「うちはゼロトラストにどこまで投資するか」を改めて議論するきっかけにしてほしい。
PowerShellで棚卸しを定期自動化する仕組みを作っておけば、次の値上げ発表があっても慌てずに済む。払うべきものだけ払う体制を整えること——それ自体が今回の値上げが与えてくれた一番の宿題かもしれない。
出典: この記事は How Much Will the July 2026 License Increases Cost Your Tenant? の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。