The Vergeのポッドキャストシリーズ「Version History」がシーズン4の第1話として、「ユニバーサルリモコン」をテーマにした特集エピソードを2026年6月14日に公開した。David Pierce、Nilay Patel、John Higginsの3名に加え、NestおよびMillの共同創業者であるMatt Rogersが参加し、かつてリモコン市場を席巻した「Harmony」の栄枯盛衰を語っている。

なぜHarmonyは注目されるのか

ユニバーサルリモコンのコンセプト自体は説明不要だ。テレビ、ブルーレイプレーヤー、サウンドバー、ゲーム機——それらすべてを一本で操作できる。これほど合理的な発想はない。しかしこのシンプルな夢がいかに実現困難か。数十年にわたって多くのメーカーが挑戦したなかで、Logitech Harmonyだけが「答えに最も近い製品」と広く認められながらも、最終的には市場から退場した。スマートホームが普及した今、あらためてこの問いを問い直す意義がある。

Version Historyが語るHarmonyの軌跡

Version Historyによると、Harmonyはもともと「Easy Zapper」という製品名でスタートした。その後Logitechに買収され、数年間にわたって機能拡張と製品ラインの拡大が続いた。Harmonyが一般消費者からプロのAVインストーラーまで幅広い支持を得た理由として、エピソードでは以下の点が挙げられている。

  • アクティビティベースの操作体系:「映画を見る」ボタン一つで、電源ON・入力切替・音量調整・照明制御まで一括実行
  • 赤外線+RF+IPの複合対応:赤外線が届かない機器も制御可能なHarmony Hubは、IoT普及前夜のスマートホームとして先進的だった
  • 膨大なデバイスデータベース:リリース時点で数十万件以上の機器コードを収録し、セットアップの手間を大幅に削減

しかしVersion Historyが紹介するLogitechのCEO発言によると、「ストリーミングがリモコンを時代遅れにしている」という認識は社内にもあった。スマートTV・Apple TV・Amazon Fire TVの台頭が状況を一変させ、各プラットフォームが独自UIとリモコンを持つようになったことで、ユニバーサルリモコンの介在余地は急速に縮小した。Logitechは2021年に古いHarmonyモデルのサポートを終了し、事実上製品ラインの終焉を迎えている。

ゲスト参加したMatt Rogersは、Nestの共同創業者としてスマートホーム産業の内側を知る人物。エピソードでは「なぜNestのような企業が成功し、Harmonyのような製品が苦戦したのか」という視点からの考察も交わされており、スマートホームの設計思想を語る上でも示唆に富む内容となっている。

日本市場での注目点

日本においては、国内メーカーのHDMI-CEC連動機能(パナソニック「VIERA Link」、ソニー「ブラビアリンク」等)がユニバーサルリモコンの代替として一定の役割を果たしてきた。同一メーカーのエコシステム内であれば比較的スムーズに連動するが、異なるブランドをまたいだ統合制御は依然として課題が残る。

現時点でHarmonyの後継として日本市場で入手可能な選択肢としては、SwitchBot Hub 2Broadlink RM4 Pro が挙げられる。いずれも赤外線リモコン信号を学習してスマートフォンから制御する仕組みで、Google HomeやAmazon Alexaとの連携にも対応している。ただしHarmonyほどの完成度のセットアップ体験を提供できているかは別問題であり、このカテゴリーの「決定版」は依然として不在と言えるだろう。

筆者の見解

Harmonyの歴史は、「統合プラットフォームの全体最適」がいかに難しいかを示す教科書的なケーススタディだ。技術的な解決策はあった——Harmonyはその証明だった——しかしエコシステムの覇権争いが、せっかくの統合体験を分断し続けた。

2022年以降、Matter規格の登場によってデバイス間の相互接続性は改善されつつある。しかし「コントロール体験の統合」はまた別の問題だ。Matterはデバイスが話せる共通言語を提供するが、その言語で何を語るか——アクティビティ制御のシナリオ設計——の決定版はまだ誰も出していない。音声アシスタントが部分的な役割を担っているが、視覚フィードバックのないインターフェースに馴染めないユーザーは多い。ボタンを押すという物理的な確実性は、いまだに本質的な価値を持っている。

Version Historyが問う「ユニバーサルリモコンはまだ必要か」という問いへの答えは、技術的な課題ではなく体験設計の課題として、次の製品を生み出すチームに委ねられている。この夢が「古い話」になる日は、もう少し先かもしれない。

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出典: この記事は The impossible dream of the universal remote の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。