米テックメディアTom’s Guideのジェイソン・イングランド氏が、中国・蘇州の製造工場を直接訪問し、Lexarの新型マイクロSSD「Play X」の製造プロセスと性能を詳報した。まだ市販前の製品だが、ノートPCストレージの設計思想そのものを覆す可能性を秘めている。

なぜこの製品が注目か

現行のノートPCにおけるストレージの選択肢は、大きく2つに分かれる。基板直付けのNANDチップ(拡張不可)か、M.2スロット経由のSSD(拡張可能)かだ。後者は交換・増設できる反面、スロットのぶん筐体スペースを食う——バッテリーが小さくなる、薄型化が困難になるといったトレードオフを強いられてきた。

Lexar Play Xはこのジレンマを正面突破しようとしている。NANDチップ・コントローラ・電源管理IC(PMIC)を1つのモジュールに統合し、従来のM.2 SSDと比較して半分以下の物理サイズを実現。M.2 2230スロットにそのまま刺さるほか、2280変換アダプタも付属する。

Tom’s Guideレビューのポイント

良い点

Tom’s GuideのJason England氏によると、Play XはPCIe Gen 4.0フル対応で、読み取り最大7,400MB/s・書き込み最大6,500MB/sを謳う。これは通常サイズのハイエンドSSDと同等の数値だ。イングランド氏は「従来の小型SSDはDRAMキャッシュを省略するのが一般的で、速度や発熱で妥協を強いられていた。Play Xは新製法でそこを克服している」と評価する。

容量は最大2TB(理論上4TBまで対応可能な設計という)。製造工程では、5百万ドル超の精密機器でシリコンウェハを髪の毛より薄く削り、レーザー刻印→チップカット→自動ボンディングという工程を経る。イングランド氏は「シリコン製ミシン」とも形容する自動ワイヤボンダーの映像も紹介している。

気になる点

イングランド氏自身も認めているとおり、実機での速度検証はまだ行われていない。「実際に手に入れたときが本当の評価」とのことで、現時点では公称値の段階だ。発売時期も「2026年秋〜2027年初頭にノートPCメーカーがサンプリング中」という段階であり、単体での一般販売スケジュールも確定情報は出ていない。

日本市場での注目点

現状、Play Xは単体販売の正式発表がなく、日本での価格・発売日は未定だ。ただし、Lexarは日本市場に製品を展開しているブランドであり、グローバル展開の際は国内流通も期待できる。

より現実的な恩恵は搭載ノートPC経由だろう。LexarはすでにノートPCメーカー各社にサンプル提供中とのことで、2026年秋モデル〜2027年初頭の薄型・軽量機にこの技術が採用される可能性がある。特に、バッテリー容量の確保とストレージ拡張性を両立したいモバイルノートで差別化ポイントになりそうだ。

競合の観点では、現行の小型SSDとしてWD SN740(M.2 2230)などが存在するが、性能面での優位性が実機で証明されれば、次世代薄型ノートの標準構成に食い込む余地は十分ある。

筆者の見解

ストレージの「小型化と高速化の両立」は長年のジレンマだった。Play Xが公称値どおりのパフォーマンスを発揮するなら、その技術的意義は小さくない。ただ、現時点では「中国工場見学レポート+メーカー発表値」の段階であり、独立した実機ベンチマークを待ってから評価を固めるのが筋だ。

個人的に注目しているのは、ノートPC設計への波及効果だ。M.2スロットのサイズ制約が緩和されれば、バッテリーセルの配置自由度が上がる。結果として「薄くて軽くてバッテリーが長持ちする」モバイルノートの実現が一歩近づく——これはビジネスユーザーにとって地味だが確実にうれしい変化だ。

とはいえ、「搭載ノートを買う」が現実的な入手経路になりそうなので、単体購入を急ぐ必要はない。2027年の新モデルを選ぶ際の比較軸として頭に入れておく程度で、今は動向を静観するのが正解だろう。


出典: この記事は I just held the future of laptop storage and it’s a game changer — I traveled to China to see how it’s made の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。