Engadgetは6月11日(米国時間)、YouTubeがモバイルアプリ向けのダイレクトメッセージ(DM)機能を米国ユーザー(18歳以上)にも解放したと報じた。欧州での試験運用から約半年を経た展開拡大で、2019年に廃止されたDM機能が事実上の復活を果たした形だ。

約6年ぶりの復活——廃止の経緯と再挑戦の背景

YouTubeのDM機能には複雑な歴史がある。もともと2017年に導入されたが、「コメント欄でのパブリックな会話を促進する」という方針のもと2019年に廃止。その後、約5年のブランクを経て2025年後半にアイルランドとポーランドでの試験運用として再登場した。

Engadgetの記者Mariella Moon氏の報道によると、2026年3月にはより多くのヨーロッパ諸国へ拡大し、今回ついに米国が実験対象に加わった。YouTubeはこの再導入について「ユーザーから最も要望の多かった機能のひとつ」と説明しており、欧州での数ヶ月にわたる試験運用で得たポジティブなフィードバックが今回の米国展開を後押ししたとしている。

機能の使い方と設計思想

使い方はシンプルだ。YouTubeアプリ右上の「Messages」ボタンをタップし、「Invite to chat」を選択することでチャットへの招待を送れる。相手側にはAccept(承認)またはDecline(拒否)を選ぶ権限が与えられており、プライバシーへの配慮がなされている。

YouTubeが強調しているのは「動画やReelsを友人と共有しやすくする」という目的だ。LINEやSlack、WhatsAppなど既存のメッセージングアプリを介した動画リンク共有を、より自然にプラットフォーム内で完結させることを目指している。ただし、他のアプリ経由での共有も引き続き利用可能であり、既存の習慣を強制的に変えるものではないとYouTubeは明言している。

海外レビューのポイント

EngadgetのMoon氏のレポートでは、この機能の意義について「すでに多くのメッセージングアプリを使っているユーザーにとって、さらにアプリ内にチャット機能が増えることの価値はどこにあるか」という率直な視点から考察している。Moon氏自身も「私自身すでにたくさんのメッセージングアプリを使っている」と語っており、純粋な利便性向上よりも「エコシステムの統合」という観点でこの機能の意味を捉えている点が興味深い。

現時点では本格的な第三者レビューは出ていないが、欧州での試験運用のフィードバックがYouTubeを米国展開の決断に向かわせたことを考えると、ユーザー受容度は一定程度確認できていると推測される。

日本市場での注目点

現時点では日本でのDM機能提供は発表されていない。YouTubeの展開パターンを見ると、欧州(2025年後半)→ 欧州拡大(2026年3月)→ 米国(2026年6月)という流れであり、日本を含むアジア太平洋圏への展開は次のフェーズ以降になると見られる。

日本市場ではLINEが動画共有を含むコミュニケーションプラットフォームとして既に深く普及している。YouTubeとLINEを行き来せず、アプリ内で動画を共有しながら会話が完結するシナリオは、特にYouTubeをコンテンツの中心に置くユーザー層にとって利便性が高い。競合・共存の行方は注目に値する。

筆者の見解

YouTubeのDM機能復活は、プラットフォームの「垂直統合」という戦略的文脈で読み解くのが筋だろう。GoogleはYouTube・Gmail・Google Mapsなどを個別サービスとして運営してきたが、横断的に統合されたコミュニケーション体験の構築には長年苦戦してきた。Google+の失敗はその典型例だ。

今回のDM機能は、その反省を踏まえた「動画を接着剤とするコミュニケーション」の試みと読める。無理にSNSを作ろうとするのではなく、YouTube本来の強みである動画視聴体験を起点に自然発生するコミュニケーションを補完する設計は、方向性として筋がいい。2019年に一度失敗しながらも、ユーザーの根強い要望に応えて再挑戦している点も評価できる。

日本のユーザーとしては、日本向け展開のタイミングをウォッチしつつ、「既存のメッセージングアプリとどう使い分けるか」という視点を持って待つのが現実的だ。プラットフォームの乱立に疲れているユーザーにとって、視聴と共有が一画面で完結する体験の価値は決して小さくない。


出典: この記事は YouTube expands direct messaging to the US の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。