Ars TechnicaのAndrew Cunningham記者が2026年6月9日にカリフォルニア州クパチーノから報じたところによると、AppleはWWDC 2026において「Siri AI」がGoogleのGemini言語モデルをベースに動作することを正式発表した。さらに処理の一部がGoogleサーバー上のNvidiaハードウェアで実行されることも明らかになった。それでもAppleは従来と変わらぬプライバシー保護を約束しており、その技術的な根拠をCraig Federighi氏がプレス向けに詳細説明した。

なぜこの発表が注目されるのか

Appleはこれまで「プライバシーはApple製品の根幹」として競合との差別化を図ってきた。機密データはデバイス上で処理し、クラウド処理はAppleが管理するサーバーに限定する「Private Cloud Compute」アーキテクチャがその柱だった。

しかしArs Technicaが指摘するように、iPhoneやMac上でローカル実行できる言語モデルにはどうしても能力の上限がある。大規模な推論やエージェント処理をこなすには外部クラウドのリソースが不可欠であり、大規模データセンター投資を避けてきたAppleにとって、Googleとの提携は現実的な解だった。

Ars Technicaが報じたアーキテクチャの詳細

Federighi氏はWWDCのプレス向けセッションで「我々が使っているGoogle Assistantの量はゼロだ」と述べ、Googleのサービスを利用しているわけではなく、あくまでGoogleのインフラ上でApple独自のモデルを実行していると説明した。

モデル構成

オンデバイスモデル

  • AFM 3 Core:Apple/Google共同開発のGeminiベース新モデル。Apple Intelligence対応デバイスに搭載され、簡単なクエリを処理
  • AFM 3 Core Advanced:RAM 12GB以上かつM3以降のMac・M4以降のiPad・A19 Pro搭載iPhone(iPhone 16 Pro系)限定。ディクテーション精度の向上とSiriの表現豊かな音声に活用

クラウドモデル(Googleサーバー上で動作)

  • AFM 3 Cloud:汎用クラウドモデル
  • ADM 3 Cloud:画像生成モデル
  • AFM 3 Cloud Pro:エージェント的ツール使用・複雑な推論向け高性能モデル

Ars Technicaの報道によると、AFM 3 CloudとADM 3 Cloudの2つはGoogleのサーバー上でもAppleシリコンで動作するとされており、Private Cloud Computeの暗号化・隔離アーキテクチャをGoogleのデータセンターに「持ち出す」形を取っているという。

日本市場での注目点

対応デバイスの条件が明確化

Siri AIの高度な機能(AFM 3 Core Advanced)が利用できるデバイスは以下に限定される:

  • Mac:M3チップ以降(MacBook Pro M3、Mac mini M4など)
  • iPad:M4チップ以降(iPad Pro M4、iPad Air M3は対象外の可能性)
  • iPhone:A19 Pro搭載モデル(iPhone 16 Pro / iPhone 16 Pro Max)

日本で購入できる現行モデルの多くが対象に入るが、iPhone 16の無印・Plusモデルは高度機能の対象外となる点は注意が必要だ。

OS更新(iOS 19・macOS 26)で順次提供予定

これらの機能は今秋のOSアップデートを通じて展開される。Apple Intelligenceの日本語対応は2025年から進んでいるが、Siri AIの日本語品質については実際の提供開始後に確認する必要がある。

筆者の見解

AppleがGoogleとのインフラ共有を実現しながら「プライバシーは守る」と主張する構造は、技術的に興味深い試みだ。Private Cloud Computeの設計哲学—クラウド処理であっても暗号化・隔離によってオペレーターのアクセスを排除するという思想—を自社インフラの外に拡張しようという発想は、クラウドセキュリティの観点から業界全体に示唆を与える可能性がある。

ただし「Googleにはアクセスを与えない」という主張の検証可能性が今後の焦点になるだろう。Private Cloud Computeは発表当初からセキュリティ研究者向けにコードの一部を公開してきた実績がある。同様のアプローチがGoogleインフラ版にも適用されるかどうかが、信頼性の鍵を握る。

より広い視点で見ると、AIの処理をクラウドに依存せざるを得ない状況はAppleに限った話ではない。企業がエンドユーザーのデータを扱うAIサービスを設計する際、「どこで処理するか」ではなく「誰がアクセスできるか」を技術的に担保する設計が問われる時代になっている。今回のAppleのアーキテクチャは、その解のひとつとして注目に値する。

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出典: この記事は Apple says its AI is still private, even when it’s running on Google’s servers の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。