Ars TechnicaのJeremy Hsu記者が6月4日に報じたところによると、自律走行ロボタクシー大手のWaymoと、EVバッテリー再活用専業企業B2U Storage Solutionsが「戦略的供給契約」を締結した。走行を終えたWaymoロボタクシーの使用済みバッテリーを、カリフォルニア州・テキサス州の電力グリッド向け定置型蓄電設備として再活用するプロジェクトだ。EV時代の「バッテリーのライフサイクル全体最適化」という観点から、業界関係者の注目を集めている。
なぜこの取り組みが注目か
自動車用バッテリーは、EV本体の使用限界に達した後も相当量の蓄電能力を保持していることが多い。テレマティクス企業Geotabが2025年に公開した2万2,700台以上のEVを対象とした調査によれば、平均的なバッテリー容量の低下率は年間約2.3%にとどまり、8年後でも元の81%以上を維持するという。
Waymoのロボタクシーは一般消費者のEVよりはるかに多くの距離を日々走行するため、バッテリーの劣化ペースは速い。しかし裏を返せば、それだけ多くの「走り終えた」バッテリーが定期的に発生することになる。現在のWaymoフリートは約4,000台で、主力はJaguar I-Pace(90 kWhリチウムイオン電池)、加えて中国系自動車ブランドZeekr製「Ojai」ロボタクシー(93 kWh)が導入を開始している。
B2Uはこうした「まだ十分な容量を持つ」使用済みバッテリーを大規模定置型蓄電設備に転用する事業を展開してきた。蓄電設備は再生可能エネルギーの余剰電力を低需要時に蓄え、ピーク需要時に放出することで電力グリッドの安定化に貢献する。すでにカリフォルニア州ランカスターの「SEPV Sierra」では、32 MWhの蓄電設備と8MWの太陽光発電を組み合わせたプロジェクトが稼働中だ。
Ars Technicaの報道ポイント
Ars TechnicaのJeremy Hsu記者によるレポートでは、B2U CEOのFreeman Hall氏とWaymoのサステナビリティ担当責任者Adam Lenz氏へのインタビューが核心を成している。
注目点
- WaymoフリートはEVとしては異例の高走行量を誇り、使用済みバッテリーの安定的な供給源として期待できると、Hall氏はArs Technicaに述べている。将来的には「数百メガワット時規模の定置型蓄電」も視野に入るとのことだ
- Waymoは「プロアクティブなメンテナンス」の一環としてバッテリーの早期交換を実施しており、Lenz氏は「まだかなりの寿命が残っている段階で交換する。だからこそセカンドライフ用途に適している」と語った
- すでに「少量のバッテリー受け取り」が開始されているとされ、本格稼働に向けた準備段階にある
留意点
- Waymoは具体的な交換マイル数を公開しておらず、供給タイミングや量はWaymoの裁量に委ねられる構造のため、B2U側の調達予測可能性には不確実性が残る
- 本格的な供給規模感はまだ不明であり、契約は「合意の枠組み」段階と見るのが現実的だ
日本市場での注目点
この取り組みは現時点では米国(カリフォルニア州・テキサス州)での展開であり、日本市場への直接的な影響は短期的に限定的だ。ただし以下の点で示唆に富む。
EV二次利用市場の可能性:日本でも日産リーフの中古バッテリーを再活用した蓄電システムの実証実験は進んでいるが、タクシー・物流など高走行量の商用EVが本格普及すれば、同様のエコシステムが成立しうる。Waymo×B2Uはその先行事例として参照価値がある。
電力グリッド安定化との接続:再生可能エネルギー拡大に伴う出力制御問題は日本でも深刻化している。大容量の蓄電設備は系統安定化に直結しており、使用済みEVバッテリーを安価にリユースできる仕組みは、国内でも検討余地が十分にある。
ビジネスモデルとしての参照:B2Uは現時点で日本市場向けサービスを持たず、Waymo自体も日本では未展開だ。ただし「高走行量商用EV→定置型蓄電」という事業設計は、日本の自動車メーカーやモビリティ事業者が追うべきモデルの一つといえるだろう。
筆者の見解
EV普及論でしばしば見落とされがちな「バッテリーの出口戦略」に対し、WaymoとB2Uが具体的なビジネスの形を示した点は評価に値する。走行データの収集、自律走行サービスの運用、そして走行後のバッテリーの再活用まで——一本のバリューチェーンでサーキュラーな価値を創出する設計は、「部分最適を積み重ねず全体を設計する」という考え方の実践例だ。
日本の自動車メーカーやモビリティ事業者も、「走行後のバッテリー価値」をビジネスモデルに組み込むことを本格的に検討する段階に来ているのではないだろうか。電力グリッドとモビリティを横断するエコシステムをいち早く設計した事業者が、長期的な競争優位を握る構図が見えてくる。規模が整ってからでは遅い——そうした危機感を持って動いているWaymoの姿勢は、日本のプレイヤーにとっても他人事ではないはずだ。
出典: この記事は Used Waymo robotaxi batteries become backup storage for power grids の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。