Microsoft が2026年6月4日にリリースした Microsoft Edge 149 において、長年提供してきた2つの主要機能「Collections(コレクション)」と「Sidebar(サイドバー)」が正式に廃止された。Copilot への機能集約を推進する Microsoft AI チームの方針によるもので、移行前にデータのバックアップを取っていなかったユーザーはコレクションのデータに一切アクセスできなくなっている。
Collectionsとは何だったのか
Collections は、Microsoft Edge がChromiumベースに移行した初期から提供されていた、Web ブラウジング中に見つけた情報を整理・比較するためのワークスペース機能だ。
Microsoft は当初、ブックマーク(お気に入り)の代替として Collections を強力に推していた。単なる URL の保存にとどまらず、以下のような特徴があった:
- 視覚的な比較: 商品購入時に複数の候補を並べて比較
- リッチコンテンツの保存: テキストだけでなく画像や価格情報なども保持
- OneNote / Outlook へのエクスポート: 調査結果をそのまま Office アプリに持ち出せる
- メモ機能: 収集した項目に自分のコメントを追加
旅行計画やリサーチ業務での利用を想定していたこの機能は、Edge の「ただの Chromium クローンではない」という差別化の象徴でもあった。Microsoft 自身が「ブックマークフォルダは古いやり方。Collections が正しい情報整理だ」と強調して普及させてきた経緯がある。
Sidebar も同時に廃止
Collections と同様に、Sidebar(サイドバー) も Edge 149 をもって提供終了となった。
Sidebar は、Outlook・Bing などのミニアプリをブラウザ右側のパネルで利用できる機能で、メインのタブを切り替えずに別のWebサービスを操作できる点が評価されていた。フルスクリーンとの切り替えも容易で、マルチタスク環境では重宝されてきた。
なお、Sidebar の廃止によって Copilot が影響を受けるかどうかを懸念する声もあるが、Microsoft は「Copilot は引き続き利用可能。Sidebar の廃止によってむしろ Copilot の改善に集中できる」と説明している。Edge 149 では Copilot ボタンが「Chat」テキスト付きで拡張され、テキストチャットと音声チャットをボタンから直接選択できるようになっている。
アップデート前に必ずデータをバックアップ
既存の Collections データは、Edge 149 へのアップデート後は取り出せなくなる。 実際に、記事の情報源である Windows Latest がバックアップなしで Edge 149 へアップデートしたところ、Collections のアイテムに一切アクセスできなくなったことが確認されている。
Microsoft は移行オプションとして以下を案内している:
- お気に入りへの移動: Collections のページをすべてお気に入りに手動で移動する
- エクスポート: データをエクスポートして外部に保存する
Edge 149 はすでに6月4日から段階的なロールアウトが始まっている。自動更新を有効にしているユーザーは 今すぐ バックアップ状況を確認することを強く推奨する。
実務への影響
IT管理者・エンジニアへのポイント
- 企業展開環境では影響範囲を確認: Edge をグループポリシーや Intune で管理している組織では、Collections を業務フローに組み込んでいるユーザーが存在する可能性がある
- 移行タイムラインの把握: ロールアウトは段階的に進む。Windows Update for Business で更新を管理しているなら、猶予期間中にユーザー周知と移行支援を行う
- 代替ツールの検討: Collections の代替として OneNote のクイックノートや SharePoint メモ、あるいはお気に入りフォルダの細分化が現実的な選択肢になる
エンドユーザーへのメッセージ
Collections を愛用していた方には残念な状況だが、現時点では「Favorites(お気に入り)でフォルダを細かく分類する」か「OneNote を使う」が現実的な移行先だ。特に OneNote との連携は、以前の Collections のエクスポート機能より柔軟に使えるケースもある。
筆者の見解
Microsoft AI チームが Edge を担当するようになってから、機能の削除や UI の刷新が加速している。Copilot への集約という方向性自体は理解できる。ブラウザに機能を詰め込みすぎた結果、UX が複雑になっていたのは事実であり、選択と集中は本来正しい判断だ。
ただ、Collections はもう少しやれることがあったと感じる。OneNote や SharePoint とのシームレスな連携という方向性は Microsoft 365 の統合エコシステムという強みを活かせるはずで、AI 機能との共存も十分に考えられた。「AI と統合できないから廃止」という論理なら、むしろ AI と統合する形で機能を発展させるのが筋だったのではないか。
より気になるのはユーザー体験の傷だ。「アップデートしたら何年も積み上げたデータが消えた」という体験は、ブラウザへの信頼を損ねる。Microsoft には、こうした移行を丁寧にやりきる力がある。Copilot でのリベンジに期待しているからこそ、こういう部分での雑さはもったいないと思う。
Edge の市場シェアは現在約9%と、Chrome の牙城を崩すには圧倒的な差別化が必要な状況だ。その勝負をCopilot に賭けるのは理解できる決断だが、その Copilot が本当にユーザーを引きつける力を持つか——それが Edge の未来を左右する。
出典: この記事は Microsoft just killed Edge’s Collections and Sidebar for more Copilot, after years of pushing both features の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。