ハイエンドオーディオの祭典「High End」が、例年のミュンヘンからウィーンに会場を移して2026年6月に初開幕した。Tom’s GuideのPeter Wolinski記者が現地から2日間にわたってレポートを届けており、380万ドルのスピーカーシステムも展示されていたという同イベントから、比較的手の届きやすい注目製品を紹介している。
なぜこのショーが注目か
High Endはハイファイオーディオ業界で世界最大級の見本市として知られ、各メーカーが新製品を初披露する場となっている。ウィーン初開催となった2026年は、一般向けからコレクター向けまで幅広い価格帯の製品が並び、今後1〜2年の市場トレンドを先取りできるイベントとなった。
海外レビューのポイント
1. Noble Fokus Artemis — $899(7月発売予定)
Tom’s GuideのWolinski記者が「今年のショーで最も気に入ったヘッドフォン」と断言したのが、Noble AudioのFokus Artemisだ。同社マーケティングディレクターのKai氏によると、同社のApolloオーバーイヤーをベースに「一般ユーザーにも向けた製品」として設計されたという。
ドライバー構成はかなり本格的で、各イヤーカップにプレーナーマグネティック・ダイナミック・バランスドアーマチュアの3種類を搭載し、広い周波数帯域を一台でカバーする。IP52防水、バッテリー交換対応、コンパニオンアプリ経由の5バンドパラメトリックEQ(EQデータは本体に保存されるためアプリ削除後も有効)と実用面でも充実している。
特筆すべきは自動聴力補正EQ機能だ。左右の聴力差に応じてEQを自動調整する仕組みで、加齢や騒音環境により生じやすい左右差にも対応できる。価格は$899 / £799でNoble Audio公式サイトから購入可能、7月より出荷開始予定。
2. Meze ARTA — $6,000
ルーマニアのMeze Audioが発表したARTAは、アールヌーボーデザインを採用したオープンバック型プレーナーマグネティックヘッドフォンだ。Wolinski記者は試聴した印象を「utterly exquisite(まさに絶品)」と表現し、「ウォームで細部の解像度も高く、必要なときには低音もある」と評価している。
ただし気になる点も2点指摘されている。まず価格が**$6,000という点。さらにインピーダンスが225Ω**と非常に高く、一般的なDACやアンプでは駆動が難しく、相応の機材投資が前提となる。出荷時期は現時点で未公表で、Meze公式チャンネルに注目を、とWolinski記者はコメントしている。
3. Kanto OBI3 — $199
打って変わってバジェット寄りの製品がKantoのOBI3だ。Wolinski記者によれば、低価格帯ターンテーブル市場は「ほぼ同一のOEMを塗り替えたもの」で溢れており、Kantoは自社設計にこだわって市場に参入したという。Audio Technica AT3600Lカートリッジを搭載し、同社のスピーカーKanto YU($349)と合わせても約$550で入門セットが揃う。
日本市場での注目点
Noble Fokus Artemisは国内正規販売は未発表だが、Noble Audioは日本市場にも製品を展開しており、国内代理店経由での取り扱いが期待される。$899は現在の為替水準で13〜14万円前後。同価格帯のワイヤレスヘッドフォンと比べると、3ドライバー構成+聴力補正機能というスペックは明確な差別化要因になりうる。
Meze ARTAはニッチなハイエンド向けで、実質的には専門店か並行輸入での入手が中心になるだろう。225Ωという高インピーダンスは既存機材によっては大幅な追加投資が必要となる点も念頭に置きたい。
Kanto OBI3はレコードブームが続く日本でも訴求力がありそうだが、国内正規販売の有無は現時点では不明だ。
筆者の見解
Fokus Artemisの聴力補正EQは、「高音質」と「アクセシビリティ」が両立し始めたことを示す好例だ。技術的には以前から実現可能だったが、それを$900以下のコンシューマー製品に落とし込んできたことに意義がある。人口の高齢化が進む日本市場では、特に需要を掘り起こす可能性がある機能ではないだろうか。
Meze ARTAの$6,000という価格帯は、オーディオ趣味の奥深さを改めて示している。ただし225Ωという仕様は、購入前に自分の環境をきちんと見直す必要がある。「スペックを道のど真ん中で揃える」という観点でいえば、まずドライブ環境ありきで製品を選ぶのが筋だろう。
KantoのOBI3については、OEM頼みではなく自社設計にこだわった姿勢が長期的なブランド信頼性につながると感じる。入門者がアナログ体験に手を伸ばすハードルを下げる意味でも、地道だが正しいアプローチだ。
関連製品リンク
Kanto OBI3 Wireless Table, Matte Black, Built-in Phono Preamp, Bluetooth Compatible, RCA Connection
上記はAmazon.co.jpへのリンクです。記事執筆時点の情報であり、価格・在庫は変動する場合があります。
出典: この記事は 5 best new products from the world’s biggest high-end audio show の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。
