Microsoftは2026年6月から、Microsoft 365 Copilotアプリを対象商用WindowsデバイスへWindows Update経由で自動インストールする施策を再開すると発表した。2025年初頭に管理者の反発を受けて一時中断された経緯があり、今回は新たな管理コントロールが追加されての「再挑戦」となる。
2025年の教訓—なぜ一度中断されたのか
2025年の最初の試みでは、IT管理者が「気づいたらタスクバーにCopilotが固定されていた」という事態が多発した。事前テストや承認プロセスなしに1万台規模のエンドポイントへ突然現れるAIアシスタントは、特にコンプライアンス要件の厳しい金融・医療・官公庁系の組織において深刻な問題となった。ソフトウェア管理ワークフローへの影響も小さくなく、Microsoftは数週間で展開を停止することを余儀なくされた。
今回のアナウンスでは「フィードバックを受けて詳細な制御機能を追加した」とMicrosoftが説明しており、その言葉通り管理コントロールは前回より整備されている。
インストール対象デバイスの3条件
自動インストールが実行されるのは、以下の3条件をすべて満たすデバイスに限られる。
- OS: Windows 11、またはWindows 10 22H2(サポート対象バージョン)
- M365アプリのバージョン: Microsoft 365 Appsのバージョン2308以降がインストール済み
- 更新チャネル: Current ChannelまたはMonthly Enterprise Channel
逆に言えば、Semi-Annual Enterprise Channel(SAEC)やLTSCリリースのデバイスは対象外となる。日本の大企業では安定性を重視してSAECを採用しているケースが多いため、即座に影響を受けるのは現在のチャネルに沿った環境に限られる。
アプリ本体は約12MBと軽量だが、機能を実際に使用するにはMicrosoft 365 CopilotライセンスまたはCopilot for Microsoft 365アドオンが別途必要となる点も押さえておきたい。
IT管理者が使える制御手段
今回の展開で最も重要なのが管理コントロールの充実だ。主な手段を整理する。
Microsoft 365管理センター
管理センターに新設されたポリシー 「AutoInstall M365 Copilot App」 がデフォルトで有効(Enabled)になっている。テナント全体でオフにするには、このポリシーを手動で無効化する必要がある。
グループポリシー / Intune CSP
従来の管理ツールでも制御可能だ。
- グループポリシー: Administrative Templates > Microsoft 365 Copilot > 「Prevent automatic installation of the Microsoft 365 Copilot app」を有効化
- Intune CSP: 同等の設定をCSP経由で展開可能
- M365 Appsサービシングプロファイル: 管理センター内のサービシングプロファイルにオプトアウトチェックボックスが追加
Windows Update for Businessリングとの連動
インストールはWindows品質更新プログラムに同梱されて配信される。既存のWUfBリングによる更新延期が設定されていれば、Copilotアプリも同じ期間インストールが遅延する。ただし注意点がある。60日を超えて延期すると、後続の累積更新プログラムにアプリが同梱され、リング制御外でインストールされる可能性があるとMicrosoftは警告している。
実務への影響—日本のIT管理者が今週やること
今すぐ確認すべき事項:
- 自テナントの更新チャネル構成(SAECなら即座の影響は低い)
- Microsoft 365管理センターの「AutoInstall M365 Copilot App」ポリシー状態
- WUfBリングの延期設定と60日上限への抵触リスク
対応パターン別推奨アクション:
状況 推奨アクション
Copilot未導入・ライセンスなし 管理センターでポリシーを無効化しておく
Copilotライセンス保有・段階展開予定 リング制御を整備し、展開タイミングを計画する
SAEC / LTSC環境 今回は対象外。チャネル変更時に改めて確認
コンプライアンス規制あり 法務・コンプライアンス部門と事前に確認の上、ポリシーの取り扱いを決定
ライセンスがなければCopilotアプリが入っても機能は制限されるが、「知らないうちにアプリが増えていた」という状況自体がセキュリティ審査やソフトウェア台帳管理に影響する。特に規制業種では「インストールされているがライセンスはない」状態を事前に整理しておくことが重要だ。
筆者の見解
Microsoftが管理コントロールを整備してCopilotの展開体制を改善しようとしている姿勢は評価できる。2025年の混乱を経て、グループポリシー・Intune・管理センターの3系統で制御できるようになったのは前進だ。
ただ、一点だけ率直に言いたい。デフォルトが「有効」である点は、エンタープライズ向け製品としてもったいない設計だ。
大規模環境では、管理者が全ポリシーを常時監視することは現実的ではない。新しいポリシーがデフォルト有効で追加された場合、気づかないまま展開が進んでしまうリスクは消えない。エンタープライズ製品のガバナンス設計として本来あるべき姿は「明示的な許可(オプトイン)」のはずで、Microsoftはその力を十分持っている。
Copilotをエンタープライズ環境で信頼されるツールに育てるには、技術的な機能の充実と同等に、IT部門が「コントロールできている」と感じられる展開体制が欠かせない。今回の再展開がそのための本気の第一歩になることを、応援する立場から期待している。
出典: この記事は Microsoft 365 Copilot Auto-Install Returns in June 2026: Admin Controls Tested の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。