Ars Technicaのスティーブン・クラーク記者が2026年6月5日に報じた内容によると、国際宇宙ステーション(ISS)のロシア区画で5年以上続く空気漏れ問題が新たな局面を迎え、5名の宇宙飛行士が緊急避難措置を取るという事態が発生した。

なぜこの事態が注目されるのか

ISSのロシア区画、特にズヴェズダ・サービスモジュール後部の移送トンネル「PrK」での空気漏れは、5年以上にわたって継続している問題だ。ロスコスモスとNASAのエンジニアが連携して漏れ率を追跡し、ロシア人宇宙飛行士が繰り返し亀裂の封止を試みてきたが、恒久的な解決には至っていない。

今年初頭に数カ月間の圧力安定が確認されたものの、5月にロスコスモスが漏れの再発を認めた。今回はより大規模な修理作業に踏み切ることが決定された結果、NASAが安全上の措置として乗組員の避難を指示するに至った。

緊急避難の経緯

Ars Technicaの報道によれば、6月5日午前9時(米東部時間)頃、ヒューストンのミッションコントロールが乗組員に「緊急手順3.4:Crew Dragon、セーフヘイブン確立」を無線で指示した。

避難したのは以下の5名:

  • ジェシカ・メイア(NASA・Crew-12ミッション指揮官)
  • ジャック・ハサウェイ(NASA)
  • ソフィー・アデノ(フランス/ESA)
  • アンドレイ・フェジャエフ(ロスコスモス)
  • クリス・ウィリアムズ(NASA・ソユーズで飛行)

避難先はSpaceXの「Crew Dragon Freedom」の船内。同宇宙船は2月のCrew-12ミッションで打ち上げられており、乗組員が9月に帰還するまで「救命艇」として機能する。一方、ロシア人宇宙飛行士のセルゲイ・クド=スベルチコフとセルゲイ・ミカエフは、Crew Dragonから約60メートル離れた漏れ箇所で作業を続けていた。

修理は「測定のみ」に切り替え

約90分後、ミッションコントロールはハッチ再開放を許可し、乗組員はステーションへ戻った。ただしArs Technicaによれば、当初予定の「構造修理」は実施されず、ロスコスモスは追加測定の実施に方針を切り替えた。

NASAスポークスパーソンのベサニー・スティーブンスはXへの投稿で「ロスコスモスは構造修理を一時停止し、追加測定と評価を行う判断をした。漏れへの対処に向けた協力的なアプローチをロスコスモスとともに検討することを期待している」とコメントした。

日本市場での注目点

ISS問題は日本にとっても他人事ではない。JAXAはISSに「きぼう」日本実験棟を保有しており、宇宙飛行士の安全は国内でも直接的な関心事だ。ISSは当初2024年までの運用予定だったが2030年まで延長されており、老朽化設備の維持管理は全参加機関の共通課題となっている。今回の緊急事態は、国際宇宙開発における技術的・外交的複雑さを改めて示すニュースとして注目したい。

筆者の見解

今回の避難措置は最悪の事態を防いだ意味では「成功した対応」だが、5年以上同じ問題が継続しているという事実は軽視できない。微細な亀裂への対処は、宇宙環境特有の熱サイクルや真空条件もあって地上試験とは異なる難しさがある。「測定のみに切り替えた」という判断はむしろ慎重さの表れであり、焦って不完全な修理を施すよりも正しい選択ともいえる。

ただ、根本解決の見通しが立たないまま運用が続く状況は、ISSという巨大インフラの「技術的負債」とも呼べる問題を抱えていることを示している。SpaceX Crew Dragonが「救命艇」として現実に機能した今回の事態は、民間宇宙技術が国際宇宙開発の安全基盤として不可欠な存在になっていることを改めて実感させてくれる。


出典: この記事は The saga of the International Space Station air leak took a worrying turn Friday の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。