NVIDIA主催イベントの6月1日基調講演でジェンスン・フアンCEOが公表し、PC Watchが詳細を報じた。AdobeとNVIDIAは、NVIDIA RTX Sparkのソフトウェアサポートを軸に協業関係をさらに拡大すると発表。Premiere Pro・Photoshopを中心にGPUアクセラレーションの適用範囲を広げるとともに、エージェント型AIの共同開発にも踏み込む。
Premiere Pro「シーン編集の検出」がTensorRTで2倍速に
Premiere Proには、動画をAIが自動解析してカット点を検出する「シーン編集の検出」機能がある。これまでAMD Ryzen AIシリーズ・Intel Core Ultraシリーズ・Qualcomm Snapdragon X/X2シリーズなどNPU搭載PCでの高速化が図られていたが、今回はNVIDIA GPU内蔵のAI処理エンジン「TensorRT」を使ったパスが新たに追加される。
PC Watchのレポートによれば、未公開ベータ版を使ったデモではTensorRT未対応バージョン比で処理速度が2倍になる様子が実演されたという。TensorRTはGeForce RTX 20シリーズ(Turing)以降のRTX GPUに搭載されているため、2019年以降に発売されたNVIDIA RTX搭載PCであれば広く恩恵を受けられる見込みだ。現在は未公開ベータでのテスト段階で、今後公開ベータ→製品版へと順次展開される予定とNVIDIAは説明している。
4:2:2 10bit動画も4ストリーム同時処理が可能に
あわせて、PremiereがNVIDIAのハードウェアエンコーダ「NVENC」・デコーダ「NVDEC」に正式対応することも発表された。PC Watchのデモ報告では、NVDEC対応版で4:2:2 10bitの高品質動画を4ストリーム同時にライブ表示しながら処理できることが確認されており、未対応版では「紙芝居」のような状態になるカットも難なく再生できたという。放送・映像制作現場での標準フォーマットである4:2:2 10bitへの対応は、プロユースの現場で実質的な意味を持つ。
Creative Agent×RTX Sparkでエージェント型AIも本格始動
Adobeは4月15日の「Adobe Summit」(米ラスベガス)にて、クリエイター向けエージェント型AI「Creative Agent」を発表済みだ。新AI「Firefly AI Assistant」を核として、動画編集・画像加工・音声処理などをプロンプトで一括操作する構想で、PC Watchによればその実現に向けてNVIDIAが協力していく。
今回のデモでは、PhotoshopのAPIと連携した「OpenClaw」がクリエイターのチームメイトとして処理を自動化する様子が実演された。将来的にはCreative AgentがRTX Spark上でオンデバイス動作することも計画されているという。
日本市場での注目点
TensorRTによる高速化はRTX 20シリーズ以降のGPU搭載PCが対象のため、日本国内でも比較的幅広いユーザーが対象となる。ただし現時点では未公開ベータ段階であり、一般向けの提供時期は未定。Adobe Creative Cloudのサブスクリプション加入者は定期アップデートの一環として自動的に恩恵を受けられる見込みだ。
競合としては、DaVinci ResolveがNVIDIA GPU活用で定評を持ち、無料版でも高機能を提供している。Premiere ProがGPUネイティブ活用を本格化させることで、プロ向け映像制作ソフトの競争はさらに激化しそうだ。
筆者の見解
TensorRTによる2倍高速化は実務的な数字として素直に評価できる。シーン編集の検出のような「待ち時間が長い処理」が半分になれば、編集工数の削減に直結する。
ただ今回の発表で筆者がより興味を持ったのは、Creative Agentの展開だ。「プロンプトで動画編集・画像加工・音声処理を一括操作する」という構想は、エージェント型AIの本質——人間が逐一確認を求められずに、目的を伝えれば自律的にタスクが完遂される——を創作領域で実現しようとしている点で方向性として正しい。
実際にどこまで機能するかは実装次第だが、「操作するソフトウェア」から「目的を伝えると動いてくれるAI」へという流れは、クリエイティブツールにも着実に来ている。RTX GPUによるオンデバイス処理がその基盤となるとすれば、今回の協業は単なるパフォーマンス改善以上の意味を持つ可能性がある。Creative Agentが実用レベルに到達した先を、引き続き注視したい。
出典: この記事は Adobe、PremiereのAI処理をRTXで2倍高速化。NVIDIAと協業拡大 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。