COMPUTEX TAIPEI 2026(6月3〜6日開催)において、SSDコントローラメーカーのPhisonが次世代インターフェース「PCIe 6.0」対応のSSDコントローラ「X3」を展示した。PC Watch・宇都宮充氏のイベントレポートによると、シーケンシャル転送速度28,000 MB/s(28 GB/s)を達成しており、現行のPCIe 5.0対応製品と比べ各性能項目で約2倍の数値を実現しているという。
なぜX3が注目されるのか
PCIe 6.0は2021年に策定された規格で、PCIe 5.0の帯域幅をさらに倍増させるものだ。その実現にはPAM4(4値パルス振幅変調)という新しい信号方式が必要であり、ノイズ耐性や信号整合など技術的な難易度はPCIe 5.0を大きく上回る。Phisonは今回、その課題を乗り越えたコントローラと基板レベルのリファレンスデザインを公開した形であり、次世代SSD市場への確かな布石といえる。
PC WatchのレポートによるX3の主要スペック
項目 仕様
インターフェース PCIe 6.0 x4
プロトコル NVMe 2.3 / OCP v2.6
最大容量 2 PB
シーケンシャル読み書き 各 28,000 MB/s
ランダム読み書き 各 680万 IOPS
ワット当たり転送速度 4,000 MB/s/W
NVMe 2.3とOCP v2.6への対応は、データセンター・クラウド用途での採用を明確に見据えた仕様だ。最大2 PBという容量対応も、エンタープライズ向けの大規模ストレージを意識している。また「ワット当たり4,000 MB/s」という電力効率の数値は、大規模インフラでの運用コストに直結するため、クラウド事業者にとって重要な指標となる。
展示内容——リファレンスデザインも公開
PC Watchのレポートによると、今回の展示はコントローラチップ「X3」単体にとどまらず、SSD本体のリファレンスデザイン(PCBA)も披露された。製品化に向けた設計が具体化していることを示しており、採用メーカーへの提案活動がすでに進んでいるとみられる。
日本市場での注目点
X3はコントローラチップであるため、一般消費者が直接購入するものではない。Western Digital、Samsung、Kingston、CFDなどSSDメーカーが採用して初めて消費者向け製品として市場に出てくる。
現時点でPCIe 6.0対応SSDの消費者向け発売時期は未定だ。PCIe 5.0 SSDですら本格普及が2024〜2025年にかけてであったことを考えると、X3採用製品の国内流通は早くても2027年以降になると考えるのが現実的だろう。
一方、エンタープライズ・AI基盤向けは別の動きになる可能性がある。AI学習済みモデルのロードやベクトルDBへの高速アクセスなど、ストレージ帯域幅が直接スループットに効いてくるワークロードでは、28 GB/sと2 PBという組み合わせは明確な競争優位になり得る。
筆者の見解
X3が示す数字は、ベンチマーク競争の文脈だけで読むと見誤る。AIエージェントが自律的にデータを読み書きしながらループで動き続けるような構成では、ストレージのスループットはボトルネックの筆頭候補だ。28 GB/sという帯域幅は、そうしたワークロードへの明確な回答になっている。
ただし現時点はあくまで「コントローラとリファレンスデザインの展示」という段階だ。NAND側の性能、熱設計、ファームウェアの成熟度が揃わなければ、カタログ値の意味は薄い。加えて、PCIe 6.0スロットを持つマザーボードの普及はこれからであり、エコシステム全体の準備が整うまでには相応の時間がかかる。
今は「次はこう来る」という方向性を把握しておく段階として捉えておくのが適切だろう。Phisonがこの技術水準を実製品に落とし込んできたとき、改めて評価したい。
出典: この記事は 最大28GB/sの爆速PCIe 6.0対応SSDコントローラ、Phisonが展示 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。