Microsoft が、Microsoft 365 テナントにおける退職者のユーザー所有 Loop ワークスペースを引き継ぐワークフローを全テナントに展開完了した。2024年11月の予告から約1年半を経て、IT 管理者はいよいよ対応手順を整備する必要がある。

Loop ワークスペースの「3種類」を理解する

まず前提として、Microsoft Loop には3種類のワークスペースが存在する。

  • ユーザー所有ワークスペース: 各ユーザーが持つ SharePoint Embedded コンテナ。Copilot Pages・Copilot Notebooks・「マイワークスペース」で作成したコンテンツが格納される
  • テナント所有ワークスペース: ユーザーが作成した共有ワークスペース
  • グループ所有ワークスペース: Teams チャンネルなど Microsoft 365 グループに紐づくワークスペース

テナント所有・グループ所有の場合は SharePoint 管理者がメンバーシップを制御できるため、退職者対応も比較的容易に行える。問題となるのはユーザー所有ワークスペースだ。これまでは退職者が去ったあとに適切な引き継ぎ手段がなく、コンテンツが宙に浮いた状態になっていた。

退職者対応フローに追加された新しい手順

従来の退職者処理フローは概ね以下の流れで実施されてきた。

  • アカウントの無効化・パスワード変更・デバイス切断
  • メールボックスの非アクティブ化(または共有メールボックスへの変換)
  • OneDrive for Business コンテンツの引き継ぎ
  • アカウント削除・ライセンス再割り当て

今回の展開により、このリストに「ユーザー所有 Loop ワークスペースの引き継ぎ」が正式に加わった形だ。

手順は完全に手作業——PowerShell・Graph API は未対応

管理者が実施すべき手順は以下の通りだ。

  • SharePoint Online 管理センターの「SharePoint Embedded」セクションで退職者のワークスペースを特定する
  • 新しいオーナー(Microsoft は「カストディアン」と呼ぶ)を追加する。退職者の直属マネージャーが適任
  • コンテナのリダイレクト URL をコピーし、カストディアンにメールまたは Teams チャットで送付する
  • カストディアンがその URL でワークスペースを開き、「ワークスペースにコピー」オプションを使って別のワークスペースへコンテンツを移行する

Copilot Notebook が含まれる場合は手順がさらに複雑になる点も要注意だ。ノートブックには多様な情報が含まれることがあり、個別の対応が必要となる。

ここで強調しておきたいのは、この一連の作業を自動化する手段が現時点では存在しないことだ。PowerShell コマンドレットも Graph API エンドポイントも未提供であり、すべてが管理者の手作業になる。

実務への影響——IT 管理者が今すぐやるべきこと

退職者対応チェックリストを更新する

既存の退職者対応手順書に Loop ワークスペースの引き継ぎ項目を追加しよう。手順が標準化されていないまま退職者が出ると、対応漏れが発生するリスクがある。

カストディアンの役割を明文化する

「誰がカストディアンになるか」を社内で決めておくことが重要だ。直属マネージャーを原則とする場合は HR プロセスとの連携も検討したい。カストディアン自身も手作業でのコンテンツ移行が求められるため、事前に役割を周知しておく必要がある。

Loop の利用状況を把握する

Loop を日常的に使い込んでいるチームでは、ユーザー所有ワークスペースに意思決定メモや作業記録が蓄積していることが多い。特にナレッジワーカーが多い部署は優先度を上げて対応を検討したい。

Message Center の展開完了を確認する

対象は Message Center 通知 MC929014(ロードマップ ID: 421612)。2026年5月中旬までに全テナントへの展開完了が予定されており、自テナントの状況を確認しておこう。

筆者の見解

Loop はリリース時に大きな期待を集めたが、正直なところ最近は存在感が薄れている印象がある。Copilot Pages との統合により利用シーンは着実に広がっているものの、製品としての進化のペースが全体的に緩やかだ。今回の退職者対応ワークフローが予告から約1年半かけてようやく展開完了したというタイムラインは、その印象を補強してしまう面もある。

とはいえ、Loop を本格的に活用している組織にとって今回の機能追加は確実に前進だ。退職後もビジネス価値を持ち続けるコンテンツへの正式な引き継ぎ手段が用意されたことの意義は大きい。

惜しいのは、PowerShell・Graph API による自動化が今もできない点だ。エンタープライズ管理に強みを持つ Microsoft だからこそ、こうした運用自動化の穴はもったいないと感じる。退職者が多い時期(年度末など)には管理者の負担が集中することになり、スケールしない手作業フローは早期に改善してほしい。Loop にはまだまだやれることがある。自動化対応を含む継続的な機能強化に期待したい。


出典: この記事は The Great Loop Departed User Process の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。