供給チェーンアナリストの郭明錤(ミン=チー・クオ)氏が6月3日に公開したレポートで、Appleのスマートグラス戦略が大規模に刷新されたことが明らかになった。Tom’s Guide(Scott Younker記者)が伝えた内容によると、かつて7製品規模まで拡大していたAppleのAR/XRラインナップが、わずか2製品に絞り込まれるという。郭氏はこの方針転換が「次期Apple CEOに就任予定のジョン・テルヌス氏の承認のもとで行われた」と明言している。
7製品から2製品へ——何が残ったのか
郭氏によれば、約1年前に示したロードマップは「もはや有効な参照として使えない」として全面刷新されたという。今後Appleが注力するのは以下の2製品だ。
1. AIグラス(ディスプレイなし)— 2027年予定 Ray-Ban MetaのようなAIアシスタント特化型スマートグラス。ディスプレイは持たず、音声・カメラ・AI処理に特化した形状となる見込みだ。Bloombergのマーク・ガーマン氏も別途、Appleがスマートグラス市場を「Apple Watchが2015年にウェアラブル市場を変えたように」席巻しようとしていると報じており、ブランド・デザイン・iPhone連携を武器とした展開を狙っているとしている。
2. ARグラス(ディスプレイあり)— 2029年予定 Google I/OでXreal社が披露したAndroid XRスペクタクルに近い、ディスプレイ搭載型のARグラス。今年2月の報道では0.6インチのデュアルOLEDoSレンズ採用が示唆されていたが、郭氏の最新見立てでは発売時期が2028年から2029年にさらに後ろ倒しになったという。
Vision Proは事実上「凍結」
旧ロードマップに並んでいた製品群——M5 Vision Pro(昨年発売済み)、軽量廉価版のVision Air、第2世代Vision Proなど——は今回の刷新で姿を消した。郭氏の変更は、以前から流れていた「Vision Proシリーズの開発停止」という噂を裏付ける形になっている。
ただしガーマン氏は先週、「より薄く軽いVision Proの後継機を開発中」と報じており、2028〜2029年の投入を示唆している。同氏はあわせて「初代Vision Proを失敗に終わらせたデザインと価格の問題を解決しなければならず、それまでこのカテゴリは実質凍結状態だ」と厳しく評している。
海外アナリストの評価ポイント
Tom’s Guideのまとめによれば、今回の戦略転換のポイントは次の通りだ。
- 合理的な判断として評価される点: スマートグラスというより手の届きやすいフォームファクターに集中することで、Vision Proが抱えた「高価・重い・用途が限定的」という三重苦を回避できる
- 懸念として指摘される点: ARグラスの2029年投入は、MetaやGoogleといったライバルがAR/XR領域で経験と市場シェアを積み上げる時間を与えることになる。競合優位をどう築くかが問われる
日本市場での注目点
Appleからの公式発表は現時点でなく、仕様・価格・日本発売時期はすべて未定だ。今回の情報源はアナリストの予測レポートである点に留意したい。
比較対象として現在日本でも購入可能なのがRay-Ban Meta スマートグラス(実売6〜7万円前後)で、Appleが2027年に投入するAIグラスと方向性が重なる。一方でディスプレイ付きARグラスは2026年現在まだ一般普及には遠く、Appleが2029年に参入する頃には技術的ハードルと製造コストも相応に下がっている可能性がある。
Vision Pro現行モデルは日本では未発売のままだ。後継製品の開発が仮に続いているとしても、価格・デザイン・コンテンツエコシステムの三点が改善されなければ、日本市場での本格普及は難しいとみるのが現実的だろう。
筆者の見解
Vision Proは本来、Appleが最も得意とする「ハードウェア×ソフトウェア×エコシステムの統合」で圧倒的な差別化ができるはずの製品カテゴリだった。それが「失敗」と評されている原因はシンプルで、価格とフォームファクターの問題だ。
テルヌス氏がラインナップを大幅に絞り込み、スマートグラスという実用的なカテゴリに集中したのは、方向修正として理にかなった判断だと思う。Ray-Ban MetaのAIグラスが先行して市場を開拓しているタイミングで参入するのは遅くないし、2段階で市場を育てていくアプローチはAppleらしいプラットフォーム戦略の文法とも一致する。
気になるのはAI部分だ。スマートグラスにとって「使えるAIアシスタント」は製品価値の中核になる。Apple Intelligenceが2027年に本当に競合と渡り合えるレベルに仕上がっているかどうか——ここが、このロードマップが成功するかどうかを左右する最大の変数だと見ている。Appleには必要な力がある。あとはその力をAI領域でいつ、どれほど本気で発揮できるかだ。
関連製品リンク
Vision Pro VR MR ヘッドセット 1TB 空間コンピューティング
Ray-Ban Meta Smart Glasses Wayfarer, Matte Black/Clear to Graphite Green Transition, L
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出典: この記事は Apple’s John Ternus orders ‘major overhaul’ for Vision devices — we’ve gone from 6 products to these 2 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。

