6月8〜12日に開催されるWWDC 2026でAppleは、Google Geminiとの協業によって生まれ変わった新Siriアプリと、iOS 27/iPadOS 27/macOS 27における生成AI機能の全面強化を発表する見通しだ。2年越しの約束がようやく形になるか、業界の注目が集まっている。
「Gemini搭載Siri」——2年越しの大幅刷新
WWDC 2024で予告されながら遅延が続いたSiriの高度化が、今年こそ実現する可能性が高まっている。2026年1月に発表されたAppleとGoogleの提携を受け、GoogleのGeminiチームとの共同開発による新たなAIモデルをSiriのバックエンドに組み込む形が有力視されている。
具体的には、iOS 27・iPadOS 27・macOS 27向けに新しい専用Siriアプリが登場する見込みだ。テキストと音声の両方での入力に対応し、会話履歴を通じた文脈理解が可能になるという。さらに「Extensions」機能によって、端末にインストールされたClaudeやGeminiなど第三者のAIサービスへ質問をルーティングできるようになるとされる。
Dynamic Islandとの統合も噂されており、Siriを呼び出すと「Search or Ask」プロンプトと光るカーソルが表示されるUIが検討されているとのことだ。
第三者AIをデフォルト設定に——閉じたエコシステムへの風穴
Bloombergの報道によれば、iOS 27ではWriting ToolsやImage Playgroundといった「Apple Intelligence」機能のデフォルトエンジンを、サードパーティのAIサービスに変更できるようになる可能性がある。
長年にわたって閉じたエコシステムを維持してきたAppleにとって、これは異例の方向転換だ。自社プラットフォームでありながら他社AIを積極的に統合する姿勢は、ユーザー体験の向上をエコシステムの閉鎖性より優先するという判断として読める。
iOS 27は「Snow Leopard」的アップデート
新機能の追加にとどまらず、iOS 27はバグ修正・古いコードの刷新・パフォーマンス改善を主眼とした「Snow Leopard」的アップデートとして位置付けられているという(macOS 10.6 Snow Leopardは2009年にAppleが「新機能よりも品質」にフォーカスしたOSアップデートで、その後の躍進の礎となった)。
新機能面では、WalletやSafari・Shortcutsへの Apple Intelligence統合拡充、キーボードの自動修正改善、Apple Mapsの衛星通信連携などが予定される。対応機種はiPhone 12以降が有力で、iPhone 11シリーズはサポート対象外になる可能性が高い。
折り畳みiPhoneへの布石
ハードウェア発表こそWWDCでは行われないものの、今秋に投入予定とされる折り畳みiPhone(iPhone FoldまたはiPhone Ultra)に向けたソフトウェア基盤の整備も今回のWWDCの重要な役割だ。iPadのように2アプリ並列表示が可能になる大画面モードを持ちつつ、折り畳み時は通常のiPhoneとして使用できる設計で、価格は最大2,400ドルに達するとの情報もある。
実務への影響——日本のエンジニア・IT管理者に何が変わるか
デバイス管理担当者への影響: 第三者AIサービスをデフォルト化できる機能が実装された場合、MDM(Mobile Device Management)ポリシーの見直しが必要になる可能性がある。どのAIサービスを組織として許可・制限するかの方針を事前に策定しておくことが重要だ。
アプリ開発者への機会: Siriの「Extensions」機能は、自社アプリをSiri経由で呼び出せるAPIが開放されることを意味するかもしれない。WWDC開幕直後にSession動画を確認し、自社サービスへの組み込み可能性を素早く評価したい。
エンドユーザーへの実践アドバイス: 開発者ベータは6月8日から、パブリックベータは7月、正式リリースは9月の予定。本番業務に使うデバイスへの早期適用は避け、検証環境での動作確認を行ってから展開するのが安全策だ。
筆者の見解
AppleのAI戦略で今回最も注目したいのは、「自社だけで完結させない」という姿勢の変化だ。Google Geminiとの協業、さらに第三者AIのデフォルト設定を許容する方向性は、AIアシスタントの品質競争においてAppleが「エコシステムの閉鎖性を保つよりも、ユーザー体験を優先する」と判断したことを示唆する。
この変化は、AIという技術領域が従来のOS覇権争いとは異なるゲームであることをApple自身が認めたとも読める。ユーザーが「便利に使えるAI」を求め続ける以上、選択肢を閉じたままでは戦えない——その現実を素直に受け止めた結果ではないだろうか。
ただし、「Gemini搭載Siri」が実際にどこまで変わるかは、6月8日のキーノート後に実機で確かめるまでわからない。発表内容と実使用感のギャップはこの業界では珍しくない。「Snow Leopard的アップデート」という位置付けはAppleがOSの安定性にコミットするメッセージとして期待したいが、期待と現実は別物だ。
少なくとも「第三者AIをデフォルトに設定できる」という方向性は、組織のIT管理者にとっては新たな検討事項をもたらす。AI活用を推進する企業にとっては追い風となり得るが、セキュリティポリシーの整備が後手に回らないよう、今から準備を始めておくのが賢明だ。
出典: この記事は WWDC 2026: Everything Apple Is Expected to Announce on June 8 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。