COMPUTEX 2026に合わせてNVIDIAが台北で開催した「GTC Taipei」の基調講演で、同社CEO ジェンスン・フアン氏が登壇。AIデータセンター向け次世代プラットフォーム「Vera Rubin」のフル生産開始と、AIファクトリー設計をまるごとパッケージ化した「NVIDIA DSX AI Factory Platform」を発表した。PC Watchの笠原一輝氏が現地から詳細をレポートしている。
Vera——AI推論特化の自社設計CPU
Vera Rubinは今年1月のCESで発表されたNVIDIAのAIデータセンター向けプラットフォームで、CPU「Vera」とGPU「Rubin」で構成される。フアン氏は「従来のCPUはコア数を増やす設計に特化してきたが、Veraは低遅延に特化した設計」と説明。自社設計「Olympus Core」を採用し、AI推論ワークロードにおいて以下のパフォーマンスをアピールした。
- SQLデータ処理: x86比 3倍高速
- リアルタイムストリーミング処理: x86比 6倍高速
今回の発表によりVera Rubin NVL72のフル生産が予定通りに開始されたことが確認された形だ。
NVIDIA DSX——データセンター全体の設計をパッケージ化
今回の発表でもう一つの目玉となったのが「NVIDIA DSX AI Factory Platform」だ。NVIDIAが提供するレイヤーは、この数年で段階的に拡大されてきた。
フェーズ 提供範囲
DGX サーバー機器単体
GB200/300 NVL72 ラックレベルの設計
DSX(今回) AIファクトリー(データセンター全体)の設計
AIファクトリーはケースによってはギガワット級の電力を必要とし、800V DC給電・液冷設計・電力安定化のためのバッテリ・キャパシタなど、従来のデータセンターとは根本的に異なる設計思想が求められる。PC Watchの報道によれば、DSXはこうしたノウハウを丸ごとパッケージ化して顧客に提供するものだという。
採用を表明したOEMはDell Technologies、HPE、Lenovo、Supermicro、ASUS、Foxconn、GIGABYTE、Pegatron、Quanta Cloud Technology(QCT)、Wistron、Wiwynnと幅広い。
日本市場での注目点
Vera Rubinはコンシューマー向けGPUではなく、エンタープライズ・データセンター領域の製品だ。ただし、その影響は日本市場にも確実に及ぶ。
- 国内AIインフラ投資との連動: 政府・民間ともにAIデータセンター投資が急拡大している日本でも、DSXプラットフォーム経由のVera Rubin採用ファクトリー建設が進む見込みだ。採用OEMにはLenovoやSupermicroなど日本での実績が豊富な企業も含まれており、国内調達の選択肢が広がる。
- 富士通との協業に注目: 昨年のCOMPUTEXではNVLink Fusionに富士通が参画したことが話題になった。今後のDSXエコシステムに日本企業がどう関わるかは引き続き注目ポイントだ。
- 価格・入手性: Vera Rubin NVL72はコンシューマー向け製品ではないため、一般購入には相応しない。国内でのAIデータセンター需要という観点で注目する製品だ。
筆者の見解
今回の発表で興味深いのは、NVIDIAがハードウェアの売り手から「AIファクトリーの設計・建設を丸ごと支援するプラットフォーム企業」へと軸足を移していることがより鮮明になった点だ。
DSXはNVL72リファレンスデザインの延長線上にある。「NVIDIAの標準スタックに沿って組み立てれば最短経路でAIファクトリーが稼働する」というアプローチは、統合プラットフォームによる全体最適の典型例だろう。部分最適の積み重ねではなく、設計の起点そのものを標準化することでエコシステム全体の効率を底上げする狙いが見える。
フアン氏が今回強調した「使えるAI」というキーワードも示唆的だ。エージェント型AIが常時稼働・リアルタイム推論を前提とするなら、低遅延特化というVeraの設計思想はその流れをしっかり見据えている。自律的に動き続けるAIエージェントを支えるインフラが、今まさに量産ラインに乗ったということになる。
日本市場へのインパクトはエンドユーザーレベルで実感できるのはまだ先だが、AIを活用できる環境の基盤が整いつつあることは確かだ。AIインフラの構築容易化が進めば、大手クラウドプロバイダーでなくても高性能AI推論環境を持てる未来が近づく。その恩恵が日本のエンタープライズにどう届くか、引き続き注視したい。
出典: この記事は NVIDIA、Vera Rubinを量産開始。AIファクトリーの設計もまるっと提供 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。