Appleのスマートグラス戦略の全容が、The VergeがBloombergのマーク・グールマン氏の報告をもとに伝えた記事で明らかになった。それによると、Appleはスマートグラス市場でMetaに対抗するだけでなく、Ray-BanやWarby Parker、Oakleyといった眼鏡業界の主要プレイヤー全体を競合として見据えているという。

Apple Watchと同じ戦略で眼鏡市場に切り込む

グールマン氏によれば、Apple WatchがPebbleやモトローラのスマートウォッチだけでなく、SwatchやFossil、セイコーといった伝統的な腕時計メーカーまでを競合に位置づけて参入したように、Appleのスマートグラスも「スマートガジェット」の枠を超えた戦略を展開するという。ターゲット価格帯は200〜500ドル(約3万〜7万5000円)。MetaのRay-Banスマートグラスや一般的なデザイナーズフレームと競合する、まさにマスマーケットの核心を狙った設定だ。

眼鏡市場はApple Watchより大きなビジネスチャンス

The Vergeが引用するMordor Intelligenceのデータによれば、腕時計市場の年間規模は約1320億ドルとされる一方、眼鏡市場は1800〜2000億ドルと試算されている。Apple Watchが年間約170億ドルを売り上げていることを踏まえると、Appleにとって眼鏡市場への参入はそれ以上のビジネスチャンスとなりうる。

Appleが打ち出す3つの武器

グールマン氏の報告によれば、Appleは以下の強みで参入を図る計画だという。

  • ブランドカと工業デザイン力: iPhone・Apple Watchで実証済みのデザイン訴求力
  • 20億台超のエコシステム: 既存Appleデバイスとのシームレスな統合
  • AI機能: 現実世界との対話を支援する人工知能機能の実装

ラグジュアリー市場は狙わない

注目すべき点として、Appleは超高級市場への参入を見送る方針だという。かつて1万ドルの金製Apple Watchを発売したものの市場への影響は限定的だった教訓を活かし、今回はCartierやMatsudaのような高級ブランドには直接対抗せず、一般消費者に注力する戦略を採るとされている。

日本市場での注目点

現時点でAppleスマートグラスの日本発売時期・価格は未発表だが、いくつかの点で日本市場は特に注目に値する。

選択肢の空白: MetaのRay-Banスマートグラスは日本で正式販売されておらず、信頼できるスマートグラスの選択肢は国内でほぼ皆無に等しい状況だ。この空白地帯にAppleが参入すれば、日本では競合不在のまま市場を形成できる可能性がある。

リテール基盤の強み: Apple StoreをはじめとしたAppleの国内販売網は非常に強力で、新製品の普及スピードは他国と比較しても速い。

価格の現実: 200〜500ドルという想定価格帯は日本円で3〜7万円超となる。度付きレンズを加算した場合、一般的な眼鏡と比べかなり高額になる可能性があり、購入ハードルは決して低くない。

筆者の見解

Appleがスマートグラスを「スマートガジェット」ではなく「眼鏡の代替」として位置づける戦略は、消費行動の実態に即した非常に筋のいいアプローチだと感じる。スマートウォッチ市場でAppleが証明したように、「既存の物を技術で置き換える」という切り口は、既存ユーザーの購買動機と直接つながる。

ただし、スマートグラスには腕時計にはない根本的なハードルがある。度付きレンズへの対応という医療的側面だ。視力矯正という個人差の大きなニーズと、ファッション性・テクノロジーの統合を同時に解決できるかどうかが普及のカギを握る。Apple Watchが「時計」というシンプルな機能をベースにしたのと比べ、難易度は一段高い。

それでも、スマートフォンをポケットから取り出さずに情報へアクセスするという体験の変革は、多くの日常シーンで実用的な価値をもたらす可能性がある。AI機能との統合がどこまで洗練されるか、続報を注視したい。


出典: この記事は Apple’s strategy for smart glasses is the same as smart watches の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。