2026年5月29日、MicrosoftはAzure Resource Manager MCP ServerのPublic Previewを発表した。AIエージェントがAzure Resource Graph(ARG)クエリを通じてAzureインフラを直接操作・参照できる仕組みが、一般開発者向けに開放される。同週には Azure Files のマネージドID専用認証GA、Azure NetApp Files 64TiBファイルサイズ対応GA、Microsoft Foundry の Vercel AI SDK 対応など複数の重要アップデートが重なった。

Azure Resource Manager MCPサーバーとは

MCPとはModel Context Protocol(モデルコンテキストプロトコル)のことで、AIエージェントが外部システムと標準化された方法でやり取りするための仕組みだ。今回公開されたAzure Resource Manager MCP Serverを使うと、Azure AI Foundryで動くAIエージェントが、ARGクエリを通じてAzureリソースの状態を問い合わせたり、リソース管理操作を実行したりできるようになる。

従来であれば「エンジニアがPortalを開き、PowerShellを実行する」という手順が、AIエージェントへの指示一つで完了する可能性が出てきた。「今どのリソースが起動していて、コストはいくらか」「セキュリティルールに違反しているリソースはないか」——そうした問いをエージェントに自然言語で投げられる環境が整ってきている。

今週の主要アップデート

Microsoft Foundry + Vercel AI SDK 対応

Microsoft FoundryがTypeScriptのVercel AI SDKに対応した。TypeScriptで書かれたAIアプリケーションからFoundry経由でモデルを呼び出す際の実装コストが下がる。

AKS Application Insights 自動インスツルメンテーション

Azure Kubernetes Service(AKS)でApplication Insightsの自動インスツルメンテーションがサポートされた。コンテナワークロードのトレーシングやメトリクス収集の手動設定が不要になり、セットアップ工数が大幅に削減される。

Azure Files Entra ID専用認証のGA

Azure FilesのSMBアクセスをEntra IDのマネージドIDのみに制限するモードが一般提供(GA)となった。ストレージアカウントキーへの依存を排除し、ゼロトラスト型のアクセス制御を徹底できる。

ネットワーク強化

NSGとUDRの制限値が引き上げられた。Azure Front Door のWebSocket対応、Network Watcher のルール影響アナライザー追加、VPNのS2S証明書認証とP2Sユーザーグループ別IPプールなども利用可能になった。

Azure NetApp Files 64TiB対応GA

1ファイルあたり最大64TiBのサイズをサポート。大規模データベースやHPCワークロードへの適用範囲が拡大した。

Event Grid・Cosmos DB のAI統合強化

Event GridにサブスクリプションIDほかの信頼性向上機能が追加された。Cosmos DBはLangChainおよびLangGraphのサポートを拡張し、ベクターストアやLLMアプリの構築が簡略化される。

移行対応が必要な廃止スケジュール

即時確認が必要な2件:

  • Azure Application Gateway v1:2026年4月28日にすでに廃止済み。v2への移行が完了していない環境は今すぐ確認を
  • Azure Functions in-process モデル:2026年11月10日にサポート終了。isolated worker modelへの移行計画を今から立てる必要がある

実務への影響

Azure Resource Manager MCP Serverは、Azureを扱うインフラエンジニアにとって注目すべき変化だ。ARGクエリをエージェントが実行できるということは、コスト可視化・セキュリティ状態確認・リソースのインベントリ把握といった作業が、チャット経由で完結するシナリオが現実的になってきたことを意味する。まずはPublic Preview環境で自社ユースケースへの適合性を評価しておきたい。

Azure Functionsのin-process→isolated移行は、.NETを使っているチームにとって最も緊急度の高い課題だ。2026年11月まで半年もない。Microsoft Learnに移行ガイドが整備されているので、まずはインベントリ確認から着手してほしい。

筆者の見解

今回のアップデートで興味深いのは、Azure Resource Manager MCP ServerとMicrosoft Foundryの方向性が一致している点だ。Microsoftが構築しようとしているのは「AIエージェントが安全に動作する管制塔としてのプラットフォーム」であり、Entra IDの認証基盤の上でエージェントが実際の業務を処理する絵が、少しずつ形になってきている。

Azure FilesのマネージドID専用モードGA、NSG/UDRの制限引き上げといった地味なアップデートも、「人間が手で操作するインフラ」から「AIと自動化が動かすインフラ」への土台固めとして読める。Non-Human Identity(NHI)が安全に動作できる環境の整備は、自動化推進を考えるチームにとって直接的な恩恵につながる。

一方で、この進化の恩恵を受けるには、まず足元の廃止対応を終わらせることが先決だ。「今動いているから大丈夫」という判断は危険で、Application Gateway v1はすでに動いていない。Azure Functionsの移行を先延ばしにしているチームは、今すぐ動き出す必要がある。プラットフォームの進化についていける組織とそうでない組織の差が、こういう定期的な廃止スケジュールのたびに広がっていく。


出典: この記事は Azure Update 29th May 2026 の内容をもとに、筆者の見解を加えて独自に執筆したものです。